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第六話
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 最後に、引用文献調べについての最近の動向です。

 私が学生時代は、これまで書いてきたようなやり方が主流だったと思います。少なくとも私はそうしてきました。ただ、時には「左伝の注に曰く…」なんていう注があると、『左伝』の最初から目を通す羽目になったりと、大変なこともありました。せめて篇の名前でもわかれば、何度もそうつぶやきながら本をめくった経験があります。それでも三年生、四年生の頃には、「逐字索引」が中国で刊行されるようになり、引用文調べも楽になりました。それがこの数年変わりました。インターネットの普及です。

 インターネットの普及、それ自体は別に上述の苦労を軽減してくれるわけではありません。肝心なのは、中国の古典作品がインターネットのウェブサイト上で多数公開され、その本文を検索できるようになったことです。これは今まで丸一日かけて文献のページをめくっていた作業が、ほんの数秒で出来てしまうという画期的なものです。また、図書館に行かなくても済みます。

 インターネットでの文献検索は、(1)まだまだ公開されている文献に限りがある、(2)公開されている文献の本文がきちんと校勘されていない、(3)中国のウェブサイトの場合、中国語環境を閲覧できるように自分のパソコンの環境を整える必要がある、(4)紙媒体を使っていると知らず知らず引用箇所の前後にも目がいくが、インターネットを使うと引用箇所しか見なくなる、など様々な問題点も指摘されています。でも、どれも便利な工具が登場した時には言われるようなことだと思います。それに、多くの人はインターネットでの検索をあくまで「あたりをつける」ために利用して、紙媒体の利用も併用しているのが現状です。バランスをとって利用していく、それぞれの特性をよく理解して使い分けるというのが賢いやり方なのでしょう。

 なお、上述の電脳利用については漢字文献情報処理研究会が刊行している『漢字文献情報処理研究』(創刊号〜第三号)や同会編『電脳中国学』(どれも好文出版から刊行されています)が、やや上級者向けではありますが、ためになるでしょう。

 引用文献だけでなく、論文調べもこれまでは京都大学の『東洋学文献類目』が使われることが多かったと思いますが、現在ではこれもインターネットで検索できるようになっています。こういった情報(中国学に役立つウェブサイト情報など)について網羅したサーチエンジンが、上記・漢字文献情報処理研究会のウェブサイトにある「漢風!」です。信用の置けるサイトばかりを厳選して集めてありますので、利用してみてください。

 また、私の母校・東洋大学の東洋大学中国学会で出している『東洋大学中国学会会報』の第九号(2002年10月)には、現役院生による中国学とコンピュータ利用の報告が掲載されています。上記の研究会は、いわばその道のスペシャリスト・先駆者たちの集まりで、雑誌の内容もやや高度ですが、こちらは現在の電脳の波の中を試行錯誤しながら進んでいる学生の視点ですので、より親しみやすいものになっています。
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