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第三話
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 さて、では具体的に大学に入って授業が始まり、先生からテキストを指定されたり、プリントを配られたりして、漢文(中国古典)を読まなければならなくなったとします。まず何をしたらよいでしょうか?

 目の前にある文章は、ほぼ間違いなく気の遠くなるほど漢字だけが並んでいると思います。日本語のように<ひらがな><カタカナ>などは混ざっていないはずです。時には小さな読みにくい文字の場合もあるでしょう。

 私は学生時代、教材が決まったら、まず「新釈漢文大系」などの叢書に収録されていないかを確認しました。『論語』や『老子』『史記』のような、聞いてすぐわかるような教材なら、確認するまでもなく、どの叢書に収録されているか知っていますが、ちょっとマイナーな作品の場合はやはり確認作業が必要でした。

 収録されていれば、その部分をコピーします。このコピーは予習・復習の時に参考にしたりしますが、基本的に私の場合、一回日本語訳をざっと読んでしまうという利用の仕方がほとんどでした。つまり、まず日本語で大体の内容を頭に入れ、それから自分で原文を細かく調べ確認しながら読むというのが私のやり方でした。

 このような日本語訳が手に入らない教材の場合は仕方がありませんから、自分で読んで解釈していくしかありません。そこでまず、教材に句読点があるかを確認します。最近は中国から標点本(ひょうてんぼん)と言って、句読点をつけた古典がたくさん出ています。もし授業で使う教材に句読点が付いていない場合は、つまり白文の場合は、この標点本がないかを探します。句読点が付いている本が見つかれば、解釈もかなり楽になります。

 ただし、句読点が必ずしも正しいとは限りません。間違っているとは言いませんが、前にも書いたように訓読は一通りとは限りませんから、標点本の句読点とは異なる読み方がある場合もあります。なお、この標点本ですが、句読点だけではなく、人名・地名などの固有名詞には傍線、書名・作品名には波線が施されていますし、「?」や「!」なども付いていれば、会話の部分には<カギカッコ>まで付いている親切なものもあります。

 ここでやや上級者向け(?)の手段として、和刻本を使うという手もあります。和刻本(わこくぼん)とは日本で出版された本ですが、基本的には江戸時代以前のものを指します。まあ、大学の図書館にあって、気軽に利用できるのは江戸時代のものになるでしょう、古いものは重要文化財とか国宝になっていたりしますから。

 上に述べた中国の標点本は、あくまで句読点が付いているだけです。我々日本人には、やはり返り点や送り仮名が添えてあるものの方が読みやすいものです。そうなると、日本で刊行されたもの、でも『新釈漢文大系』などには未収録、となるともっと時代をさかのぼって戦前の叢書や江戸時代の版本に当たるしかありません。

 このような和刻本は、必ずしも句読点や返り点が付いているとは限りません。付いていないものも多いです。付いていても、こちらもやはり必ずしも正しいとは限りません。それでも、当たってみる(探してみる)だけの価値はあると思います。
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