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電脳篇
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 昨今のインターネットの普及によって学問スタイルが劇的に変わる、などとよく言われますが、本当にそうでしょうか。そんな風に言われたら、私などはちょっと疑問に思います。ただ、いろいろな面で便利になることだけは確かであり、現に便利になっていますので、ここではそのことについて第六話の補足のつもりで触れてみたいと思います。

 中国学の場合に限らないかもしれませんが、勉強と聞いてやることは、私の学生時代について言えば、中国古典を前にして、わからない語句の意味調べ、その古典の現代語訳探し、引用文献の確認、関連する論文集めといったところでした。これらの作業は図書館で辞書や目録などを丹念に当たる作業とイコールと言えるものでした。

 まず、わからない語句の意味調べですが、これは『大漢和辞典』を使うのが一般的ですが、私が学生時代に中国で『漢語大字典』と『漢語大詞典』という大規模な辞典が発行され、『大漢和』に載っていない場合はそれらも引いてみるというのが一般的になりました。こららの辞典は今のところインターネットで検索することはできませんので、ここで扱うには不適ですね。ただ『漢語大詞典』は中国の書同文のサイトで検索・閲覧が可能になっています。

 次の現代語訳探しですが、本サイトにある中国古典叢書内容簡介や大阪大学の阪大中哲の中国哲学関係古典訳注リストを調べてみてください。

 三番目の引用文献調べは、つまり引用されている部分が本当に存在するのか、その前後の文脈はどうなっているかを確認するためにするわけですが、これまでは索引のある本なら比較的簡単でした。引用文に間違いがあるかもしれませんが、いくつかの単語で検索すれば引っかかるものです。問題は索引などない文献の場合でした。章名・篇名などがわかればまだしも、そんなものがないと、該当の本を1頁また1頁とめくらなくてはなりませんでした。古典の場合、数冊の線装本で一函、それが数函で完結というものがままありますので、虫が喰って破れているような本を何冊もめくらなければなりませんでした。しかし、インターネット上にいろいろな電子テキストが公開されるようになり、きわめて簡単にそれらを検索することが可能になりました。その中で本命はやはり台湾の中央研究院でしょう。ここの「漢籍電子文献」で検索するというのがまずは第一歩です。実際の検索の仕方については、山田崇仁氏の睡人亭内にある「漢籍電子文献マニュアル」や千田大介氏の電脳瓦崗寨内にある「中文電脳FAQ−解説文書インデックス」に詳しく解説されていますので、そちらをご覧ください。

 最後の論文集めですが、これまでは「東洋学文献類目」を調べる、「日本中国学会報」の彙報を調べるというのが定番でした。「東洋学文献類目」は既にインターネットで検索できるようになっていますが、これについても上記山田氏のサイトに「『東洋学文献類目』マニュアル」として、詳しい解説があります。また台湾の漢学研究センターにも各種「論著目録」の検索コーナーがあります。

 ここではごく簡単に電脳時代の勉強法(?)としてインターネットに存在する資料の扱い方を取り上げましたが、詳しくは第六話に挙げた書籍・雑誌などをご覧ください。また最近読んだ本ですが、『インターネット完全活用編 大学生のためのレポート・論文術』(小笠原喜康、講談社現代新書、2003年)も文献調べのノウハウとして役に立つ記述があります。

 最後に、これは初学者にはあまりお勧めできない方法ですが、検索サイトの「Google」や「雅虎中国」の検索窓に調べたい単語や書名を入力して検索するというやり方があります。これは意味調べでも、引用文献調べでもありませんが、なんとなく手がかりがほしい、何か情報はないかなという時に使えます。
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