時代背景はあの名作コミックと同じころです

あのベストセラー『おだまり、ローズ』が白水Uブックスになりました。ちょっとページ数はありますが、新書判なのでより親しみやすくなったのではないでしょうか。

ところで本書の著者、ローズ(ロジーナ・ハリソン)が仕えのはアスター子爵夫人、ナンシー・アスターです。彼女は1879年生まれで、1964年に亡くなっています。ローズは1899年生まれなので、子爵夫人よりも20最年少ということになります。

このアスター子爵夫妻はカズオ・イシグロの『日の名残り』のモデルとも言われていますが、子爵夫人は二度の大戦をくぐり抜け、その間1919年にはイギリスで初の女性下院議員となる、英国史上ではそれなりに知られた人物です。

ローズは子爵夫人が亡くなるまで35年間仕えたということなので、アスター家に来たのは1929年ということになります。戦間期で、世界大恐慌が起きた年ですね。ほんの少し時期がずれますが、あたしが子供のころにテレビでアニメが放送されていた「キャンディ♡キャンディ」は似たような時代を扱っています。

主要登場人物の一人であるステアが戦死したのは第一次世界大戦で、そのころまでに学生生活から看護婦を目指した主人公のキャンディは、子爵夫人よりは年下で、著者のローズより少し年上なくらいだと思われます。アスター家でメイドとして働き出したころは、既に「キャンディ♡キャンディ」の描く時代よりは後になりますが、同じような時代を生きていた女性として、個人的にも親近感を覚えます。