ちくま新書の『中国共産党vsフェミニズム』を読んでいましたら、驚いたことがありました。
その前に、フェミニズムの観点から習近平と中国共産党による独裁体制の一面を暴いた本書はなかなか面白い一冊でした。習近平体制の中国を描いた本は星の数ほど刊行されていますが、この視点はちょっと珍しいのではないでしょうか。
同書には、フェミニズムや女性の権利拡大の事例がいくつも取り上げられていますが、その中の一つ、弦子さんという大学生が実習で中国のテレビ局へ行ったときに、著名な男性アナウンサーにセクハラを受け、それを後に裁判に訴えたという事案が取り上げられています。
弦子さんの裁判を受け、何人もの女性が性被害を訴えるようになり、多くの著名人が加害者とされたそうです。そして同書の135頁に、いきなり『房思琪の初恋の楽園』が登場するのです。その経緯は、台湾の小説『房思琪の初恋の楽園』の大陸版が刊行されたときに、性被害を訴えられた著名人の一人、著名な脚本家である史航氏が推薦文を寄せていた、というのです。中国でも非常によく売れたそうですが、「増刷分の同書や電子版から史氏の推薦文を削除する対応を迫られた」と書いてあります。
フェミニズムや女性の性被害と言えば、『房思琪の初恋の楽園』は外せない一冊でしょう。マンションの手すりに鍵が置かれたカバー写真。本書を読んだ人であれば、この写真の意味するところが痛いほどわかるはずです。