書店営業に出ていると、書店店頭で「こんな本が出ていたのか!」「予告されていたあの本、遂に発売されたのね!」と思うことがしばしばあります。翻訳書の場合、版権を取得できなかった企画が他の出版社から刊行された、ということもあります。そんな時は「この値段、こういう装丁で来たか」と思ったりすることも多いです。
そんな中、こんな本を見かけました。『中国ファクター アジア・ドミノの政治経済分析』です。どんな内容の本かと言いますと、
台頭した中国はどのように影響力(パワー)を行使しているのか、インド太平洋の国や地域はどのように認識し、対応しているのか――。現地調査の結果なども踏まえて、影響力拡大をめぐる地域内の葛藤を分析。
と書いてあります。東南アジア諸国を中心に、その国における中国の影響力を分析した本です。しかし、このタイトル、見覚えがあります。
それがこちら、あたしの勤務先から数年前に刊行された『中国ファクターの政治社会学 台湾への影響力の浸透』です。同書はサブタイトルからもわかるとおり、台湾における中国の影響力を分析したものです。内容紹介にも
政治から経済、観光から宗教まで、日常生活のいたるところに浸透しながら、実態をとらえがたい〈チャイナ・ファクター〉とは何か?
とあります。どちらも正題に注目すると「中国ファクター」というタイトルがキーワードになっていますが、扱っている地理的範囲が異なるようです。もちろん一番影響を受けているのは大陸中国が自国の領土だと主張してやまない台湾なのでしょう。そういう切実さを背景に台湾で刊行されたものを翻訳したのが後者です。
ただ、両書の刊行の順番などを踏まえると、その影響力が台湾のみならず、じわじわとアジアに広く浸透しているのだろうと思います。もちろん、日本も例外ではないはずです。前者では最終章で日本も取り上げられています。両者は併せ読むこと必要がありそうです。