抜かないでください!

営業回りの途次、書店の店頭でフェアをやっていまして、その棚に置いてあった小冊子です。フェアのタイトルは「書店員の心に刺さって抜けない棘本」です。

あたしの勤務先からは『キャッチャー・イン・ザ・ライ』と『ライ麦畑でつかまえて』がエントリーしていました。まあ、「完全なる問題作」ですから、選ばれるのも当然と言えば当然ですよね。

それにしてもこのフェアのタイトル、是非とも棘は抜かないで、このまま刺さったままにしておいてもらいたいものです。もし抜いてしまったら、後輩書店員の心に差していただけるとありがたいところです(笑)。

棘で思い出したのですが、東京には「とげぬき地蔵」というところがあります。そう言われてもわからずとも、「お婆ちゃんの原宿」と言えば伝わるでしょうか。巣鴨にある高岩寺にあるお地蔵様です。毎月4の付く日に縁日が行なわれ、あちらこちらからお婆ちゃんがやって来るのです。

そのとげぬき地蔵通りに、あたしは小学校に上がる前まで住んでいました。巣鴨駅から高岩寺の前を通り、都電荒川線の庚申塚駅を過ぎ、もう少しで明治通りに出るという路地を入ったところの小さな、小さなアパートでした。お風呂もないので近所の風呂屋へ通った記憶がかすかに残っています。