文画双絶
畸人水島爾保布の生涯
前田恭二 著
明治・大正・昭和にわたり、文学・美術の分野に大きな足跡を残しながら忘却の彼方に消し去られた畸人の魅力を、十年の歳月をかけて調べ上げ、執念と使命感を深くして掘り起こしたのが本書である。
内なる亡命日記
ナチ政権下の日々1933-45
ヘルマン・シュトレザウ 著/ペーター・グラーフ、ウルリッヒ・ファウレ 編著/高田ゆみ子 訳
本書は、「マルクス主義的活動」を理由にベルリン市立図書館司書の職を解雇された後、作家、英米文学翻訳家として活躍した文人が残した、貴重な一次史料だ。著者は「戦争に向かっていく、いやな予感がする」と1933年11月に記し、大半の国民は政権に対して首を横に振り、政治家の言動に憤っているというのに、なぜ暴走を止められないのかと、もどかしさを感じている。そして、市民の密告者的性質、出世志向、打算的従順を指摘し、同調圧力や戦時統制の厳しさに多くが屈していく姿を描く。