米露諜報秘録1945-2020
冷戦からプーチンの謀略まで
ティム・ワイナー 著/村上和久 訳
諜報の分野では帝政時代以来の歴史を持つソ連・ロシアと、第二次大戦後にCIAを設立した諜報の素人の米国。ソ連は冷戦時代、東欧を支配し、その勢力を全世界に広げようとしていた。一方、米国はソ連を封じ込めるために、さまざまな諜報戦(政治戦)をくりひろげた。冷戦に勝利した米国は、その後の戦略をあやまり、NATOをいたずらに拡大させたことで、ロシアは危機感を抱く。それをもっとも切実に感じていたのが、冷戦崩壊を現場で見ていたKGBのプーチンだった。彼は権力を握るや、ただちに反撃に出る。インターネットとソーシャルメディアを駆使した彼の政治戦は、前例のないものだった。米国はいつの間にか世論の分断で民主主義の危機にさらされ、民主主義のプロセスを無視するトランプに率いられることになった。しかも、トランプはロシアの影響下にあるという……。ウクライナ戦争の前史、戦後75年間の諜報活動と外交の深層からサイバー攻撃の脅威まで、『CIA秘録』のピュリツァー賞受賞作家が機密解除文書を徹底検証。
ドナルド・キーンと俳句
毬矢まりえ 著
キーン邸の玄関には、立像と座像の2体の芭蕉像が置かれているという。日本文学の研究と伝播に生涯を捧げたキーンは、昭和28年、31歳で念願の日本留学を果たした2年後、芭蕉の「奥の細道」を追体験、「紅毛奥の細道」を発表した。俳句はキーンが日本を知るうえでの重要な原点の1つだったともいえよう。キーンが日本文学への関心を抱いたのは、ニューヨークの書店で売られていた、アーサー・ウェイリー英訳『源氏物語』を読んだことに始まる。そのウェイリー版からの逆翻訳を試み、ドナルド・キーン賞特別賞を受賞した著者が、キーンの原点を新たな視点で解き明かした渾身の力作が本書である。
鶴屋南北未刊作品集 第三巻
鶴屋南北・直江重兵衛篇
古井戸秀夫 編
過去の全集未収録四作品を軸に、随筆や書翰、俳諧の摺り物などを加え、南北工房ともいうべき文政年間の劇壇を席巻した親子の文業を俯瞰。