トップの特集は、やはりウクライナ情勢関連です。核についての記事の中に『チェルノブイリ 「平和の原子力」の闇』が取り上げられていました。
本書は、ちょうどロシアのウクライナ侵略が始まったタイミングで刊行されたのですが、それは全くの偶然で、1986年ですから今から36年も前の原発事故を検証したノンフィクションがどれくらい日本で受け入れられるのか、正直なところ多少の不安を抱いていました。
ところが、この一か月、二か月でこそウクライナやクリミア半島の歴史、プーチンに関する書籍が奔流のように刊行されましたが、当初はこれといった関連書籍も少なく、本書が〈ウクライナ情勢を読み解く〉的な書店のフェア台で存在感を示していました。
それでもあたしなどは「今回のロシアによる侵略とチェルノブイリ事故は関係ないんだけど……」と思っていたのですが、ロシア軍によるチェルノブイリも含めた原発への攻撃が行なわれ、俄然注目の一冊となってしまったわけです。皮肉なものです。しかし、欧米というのは、数十年経っても、丹念に資料を博捜し、こうした骨太な検証本を刊行する姿勢が羨ましいです。日本人って、やはり熱しやすく冷めやすい国民性だと感じます。
さて、ここまで読書欄は全国の朝日新聞で同じ紙面だと思いますが、次の記事はどうでしょう、「多摩版」とあるので、たぶん「東京23区」の紙面にも載っていると思いますが、神奈川や埼玉、千葉の版だと載っていないのではないかと思います。
何かと言いますと、東京外国語大学がウクライナ語の講座をオンラインで開いたという記事です。日本にも多くの避難民がやって来ていますから、日本側でも少しはウクライナ語ができるようになると、来日した人も安心するのではないかと思います。
記事の中でコメントを述べている中澤英彦さんは、あたしの勤務先から出ている『ニューエクスプレスプラス ウクライナ語』の著者です。ウクライナ語の学習書は、それほど多くはないので、本書もこの数ヶ月注文が殺到しているところです。
こういう事態で本が売れるというのは、なんとも言えない気持ちになります。本が売れることは出版社の人間として嬉しいことですし、ウクライナ語に興味を持ってくれる人が増えることも、語学の出版社としては喜ばしいことではあります。しかしその一方、毎日毎日たくさんの人が亡くなっている現実を思うと心が重くなります。