同作は、他の閻連科作品とはちょっと作風が異なり、痩せた大地で懸命に生きる農民の力強さが描かれています。いや、力強いのでしょうか。むしろ、為す術もなく自然に翻弄されるだけの存在にも感じられます。
それでも懸命に生きている、生きようとしていることは感じられます。そして、そんな主人公の農民以上に心を打つのは、主人公に寄り添う盲目の犬です。動物、特にイヌが好きな人にとって本作は、涙がちょちょ切れる感動作です、間違いありません。
そんな閻連科の作品、日本では比較的よく紹介されていると思います。わが家の書架にも閻連科コーナーと呼べるような一角があります。
たぶん閻連科作品の邦訳はすべて揃っているのではないかと思います。いつの間にか買い揃えていて、そして全部読んでいます。
日本で閻連科と言えば『愉楽』が代表作になるのでしょうか。確かにこういった奇想天外なストーリーの長篇が一つの特徴ではあると思います。しかし、あたしは『年月日』のような枯れた味わいの作品も大好きで、『黒い豚の毛、白い豚の毛』も捨てがたい魅力を備えた短篇集ではないでしょうか。