先日落手した岩波文庫の『厳復 天演論』ですが、その時にも書きましたが、本書は本邦初の全訳だということです。つまり抄訳は既に刊行されているということになります。
そうなると既訳を探してみたくなるものです。雑誌などに発表されたものであれば、見つけるのはちょっと難しいと思いますが、たぶんこのあたりに載っているのではないかと予想は付けられます。
まずは、これも先日紹介した家蔵の叢書『新編 原典中国近代思想史』です。この第二巻「万国公法の時代」に『天演論』の序の邦訳が載っていました。序文だけなら、そこまでの分量にはならないでしょうし、序を読めばその本の要旨とか、著者の狙いが理解できるというものです。
序だけが訳されているというのは、『天演論』のエッセンスがそこに詰まっているということなのでしょう。
そしてもう一つ、平凡社の『中国古典文学大系』の第58巻「清末民国初政治評論集」にも載っているのではないかと思いました。載っているとすれば、これくらいしか考えられません。
同書を開いてみましたら、案の定、『天演論』が収録されていました。ただし、こちらも序のみでした。岩波版とは訳者は異なっていますが、『天演論』の序がこちらにも載っていたのです。そして岩波文庫は待望の全訳ということなのでしょう。
あと抄訳がありそうなのは明徳出版社の『中国古典新書』ですが、同社のサイトで検索した限りでは『天演論』は刊行されていないようです。