ちょっと違うけど対にして読んでみたら面白い

春秋社のアジア文芸ライブラリーの一冊、『高雄港の娘』を読了しました。

訳者あとがきによれば、事実をベースにしたフィクションのようです。こんな立志伝中のような女傑が戦後の台湾、そして日本に存在したのですね。不勉強にして知りませんでした。

ところで、本書は日本統治時代の台湾からスタートして、戦後に国民党が台湾に渡ってきた時代、そして弾圧を逃れて日本に拠点を移した時代、民主化され女性大統領が生まれる現代までを描いています。それだけを聞くと波瀾万丈に感じられますが、そういう歴史の表舞台煮立つことのなかった女性が主人公であるために、叙述は非常に淡々としています。男たちの苦労は垣間見えますが、女性の世界はもっとおおらかなものを感じます。

読み終わって、岩波書店から刊行されている『台湾の少年』を思い出しました。「高雄港の娘」というタイトルですが、『台湾の少女』と読み替えて、対になる作品として捉えてみると面白いのではないかと思います。