海外文学はブームなのか?

あたしの勤務先の海外文学シリーズ《エクス・リブリス》は今年刊行15年を迎えました。目標であり、モデルでもある新潮社の《新潮クレスト・ブックス》は1998年スタートなので、既に四半世紀を超える歴史があります。両シリーズの切磋琢磨で、書店の海外文学の棚の活性化にそれなりの貢献ができているのではないかと手前味噌ではありますが、そう自負しております。

ただ、ここ数年、新しい海外文学のシリーズが各社から続々と登場しております。台湾文学では、書誌侃侃房から《現代台湾文学選》、作品社から《台湾文学ブックカフェ》が刊行されました。

人気の韓国文学では、晶文社《韓国文学のオクリモノ》、亜紀書房《となりの国のものがたり》、クオン《新しい韓国の文学》があります。

そしてつい最近刊行がスタートしたのが、まずは春秋社の《アジア文芸ライブラリー》で、現在のところ3冊刊行されています。そして晶文社からは《I am I am I am》がスタートしたところで、現在二冊刊行されていて、11月に三冊目が刊行されるそうです。

実際のところ、海外文学には根強いファンがいますが、市場として大きいかと言われると微妙です。もちろん『82年生まれ、キム・ジヨン』(筑摩書房)のように社会現象を巻き起こす大ヒット作品も生まれていますが、そういう作品は稀です。しかし、こうして多くの出版社が参入してくることで、いろいろな国の、まだ知られていない作家が紹介され、それによって海外文学ファンの裾野が広がることが期待できます。それは回り回って、既刊の海外文学によい影響を及ぼすでしょうし、書店や出版界が元気になる一助になるだろうと期待しています。