今回のダイアリーのタイトルは岩波文庫のフェアのタイトルから採りました。正確に書くならば「名著・名作再発見! 小さな一冊を楽しもう!」だそうです。文庫だから「小さな一冊」なんですね。
それはさておき、その岩波文庫の4月の新刊に『孝経・曾子』があるのを見つけました。この数年、否、十数年、店頭で見かけることはないですが、岩波文庫には既に『孝経・曾子』があるはずです。
一枚目の写真がそれで、わが家に架蔵している一冊です。あたしが学生のころも新刊では手に入らず古書肆で購入したような記憶があります。となると市場から消えて十数年どころか、数十年は消えていたということになりますよね。
で、今回刊行される『孝経・曾子』ですが、訳者が異なります。でも岩波文庫としての番号は同じ「211-1」らしいです。ということはISBNも変わらないのでしょうか。訳者が異なるので別な本だと思いますが、同じ本の重版という扱いなのでしょうか。
とはいえ、岩波文庫ではかつても同じような現象がありました。
二枚目の写真は、今回の岩波文庫フェアにもラインナップされている中国の古典『老子』です。これは文庫の番号が「205-1」です。
『老子』ほど知られた古典ですから、岩波文庫に収録されていないわけがなく、こちらの刊行よりはるか昔、岩波文庫には『老子』が存在していました。
それが三枚目の写真です。『老子』です。こちらも番号は同じ「205-1」ですが、訳者が異なるのです。つまり今月の『孝経・曾子』と同じことが以前にもあったわけです。
いわゆる古典の旧訳と新訳ということで、時代に合わせて言葉遣いも変わるわけですから、翻訳も変化して当然です。訳者を代えて、新しく出し直すのはよいことだと思います。
もちろん言葉遣いだけでなく、古典研究も進んでいるので、それらを踏まえた訳文になるのも当然のことでしょう。旧訳と新訳でどう変わったのかを比べるのも楽しい作業です。とはいえ(この『老子』や『孝経・曾子』がそうだというわけではなく)、旧訳の方が好きだという人もいますね。あたしは旧訳と新訳を読み比べて、それぞれのよいところを味わえばよいと思うだけですが。