さくちゃんとお揃い!

今月からスタートする、テレビ朝日系のドラマ「もしも、イケメンだけの高校があったら」のTwitterです。

さすがにこのドラマを見ようとは、いまのところ思っていませんが、ヒロイン役として乃木坂46の次世代エース、遠藤さくらが出演します。上掲のTwitterは、そんなさくちゃんの撮影のひとこまのようです。

さくちゃんの役どころは「美南学園1年。誰もが振り返るような美少女。美南学園に進学するがイケメンには一切興味がない様子。逆に周囲のイケメンたちとは価値観の違う龍馬のことに興味を持つ。」だそうです。そういうキャラクターだからなのか、手にしているのは岩波文庫の『論語』です。あたしも同じカバーの『論語』を架蔵しております。同じものを手にしているなんて、年甲斐もなくちょっと嬉しくなります。

ところで、最近でこそ岩波文庫のカバーもカラフルに、バラエティー豊かになりましたが、もともとはもっと地味なものでしたよね。それが二枚目の写真の『論語』です。

一枚目の『論語』は「1999年11月16日第一刷発行」と奥付にあるもので、二枚目の『論語』の奥付は「1989年9月14日第40刷発行」とあります。1999年の現行版は、カバーなどに表記はありませんが「改訂新版」になるようです。いずれも金谷治訳注のものです。

こういう場合、改訂新版と銘打って、ISBNも新しくするのが一般的だと思いますが、この両者はISBNも同じです。中味もところどころ変わっているはずで、とても誤植の訂正レベルではないと思いますが……

そして、岩波文庫の『論語』と言えばこの金谷治訳だと思っている方がほとんどだと思いますが、実は金谷治訳が出たのは1963年で、それ以前の岩波文庫に『論語』の訳注がなかったはずはありません。

それがこの三枚目の写真、武内義雄訳注のものです。こちらも紛うことなき岩波文庫ですが、現在の岩波文庫とは若干寸法が異なります。天地が数ミリ長いです。そして時代を感じさせるのがタイトル文字。なんと書名も訳注者名、出版社名すべて右から書かれています。

こちらは「昭和8年4月30日発行 昭和11年6月20日第5刷発行」のものです。戦前ですね。あたしの亡父が昭和10年6月25日生まれなので、満一歳の誕生日を迎える五日前に出来上がったものということです。どこの古書肆で落手したものか忘れましたが、奥付には「定価40銭」とありました。

2022年1月9日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

モスクワからイスタンブールへ

少し前に中公新書の『物語 イスタンブールの歴史 「世界帝都」の1600年』を読みました。

行って見たいなあと思う都市の一つですし、その歴史を考えると興味津々なので手に取った一冊です。個人的には地図がそれなりに入っているのですが、もう少し親切なものであればよかったのにという憾みが残ったのと、イスタンブールだけでなく、黒海なども含めたもう少し広域の地図も載っていれば内容が頭には行って来やすかったのではないかと思いました。

それはともかく、同書の230頁にこんな記述がありました。

またロシア人たちは与えられるばかりではなく、イスタンブールのナイトライフを一変させたことでも知られる。彼らは、それまではどちらかというと観劇、飲酒(そして売春)が分散的に行われていたイスタンブールの夜に、それらの愉しみがひとところに集う新たな施設としてのナイトクラブを持ち込んだのである。一九一一年開業のイスタンブール最古のバーとされるガーデンバーことガーデン・プティ・シャンを受け継いだ同名ナイトクラブ(一九一四年開業)を皮切りに、黒いロシア人と称えられたフレデリック・ブルース・トーマス--ロシア国籍を持つブラック・アメリカンだった--の開いたマクスィム(一九二一年開業)など、ガラタの下町からタクスィム近辺の至るところに、ロシア美人たちがショーガール、接客係を務めるナイトクラブが続々と開店する。ヘミングウェイが驚嘆したカラキョイの酒場街の狂乱も、大戦を背景として誕生したのである。

ここに出てくる「黒いロシア人」フレデリックですが、ロシアから来たのに「ブラック・アメリカン?」と不思議に思われた方も多いのではないでしょうか? こんな時代にアメリカからロシアへ、しかも黒人が移り住んでいたなんて、と驚かれたのではないでしょうか?

彼に関して興味を持たれた方、もっと詳しく知りたいと思った方には、是非とも『かくしてモスクワの夜はつくられ、ジャズはトルコにもたらされた 二つの帝国を渡り歩いた黒人興行師フレデリックの生涯』の一読をお薦めいたします。

公式サイトには

厳酷な黒人差別社会に見切りをつけたミシシッピ生まれのフレデリックは、海を越えて旧大陸へ渡り、帝政時代のモスクワでアメリカン・ドリームを摑むのだが……ロシア文学の碩学による、まるで物語(フィクション)のような歴史ノンフィクション。アメリカ南部の社会、爛熟する帝政末期のモスクワの夜、そして、第一次世界大戦とロシア革命の勃発――激動の時代を背景に描かれる、不屈な男の、凄まじくも痛快で爽快な魂の遍歴。

とあります。黒人差別を嫌ってアメリカからロシアに移り、第一次世界大戦とロシア革命の勃発でロシアからイスタンブール(オスマン帝国)へ渡ったなんて、彼の人生は波瀾万丈以外の何ものでもないでしょう。