やはり買ってしまうのです……

刊行後それほど時間をおかずに買って読んだ『八九六四 「天安門事件」は再び起きるか』ですが、このほど角川新書から『八九六四[完全版] 「天安門事件」から香港デモへ』として刊行されました。

角川新書版は「2019年香港デモと八九六四の連関を描く新章を収録」ということなので、単なる単行本の文庫化とは異なります。となれば、やはり新書版の方も買わざるを得ません。そういうものです。

それにしても、六四もまもなくですね。当時、あたしはまだ学生でした。86年入学なので、大学四年生になって数ヶ月というところでした。大学二年から三年になる春休みに、一か月の短期語学研修で北京へ行っていたので、その北京であんなことが起きるなんて、衝撃以上に驚きでした。

あたしが訪中したころは、まだまだ古きよき北京の面影が街中に残っていて、日本に比べて数十年は遅れているという印象を受けました。ただ、改革開放の世になり、人々のエネルギーは日本をはるかに上回り、誰もが未来は明るいという希望を持っていたように感じられました。

それからわずか一年ほどであんなことになってしまったわけですから、まさに中国の現代史はものすごいスピードで流れていたのだと思います。

2021年5月16日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

確かに戦いは続いていた

後期日中戦争 太平洋戦争下の中国戦線』読了。

刊行前にネット情報などで「後期日中戦争」というタイトルだけを見た時は、日中戦争に前期も後期もあったっけ、と感じたのが正直なところです。いわゆる満洲事変や盧溝橋事件を経て泥沼の日中戦争にはまり込んだということまでは多くの日本人も知っている歴史でしょう。

ただ、著者も書いているように、太平洋戦争が始まるとフォーカスはそちらへ移ってしまい、太平洋や東南アジアでの戦いが語られることばかりで、その間、中国ではどんな戦いになっていたのか、きちんと説明できる人は少ないでしょう。かくいうあたしも、その後も日中戦争は続いていて、武器弾薬や糧食の補給もままならず、中国軍の術中にハマって奥地へ奥地へと引きずり込まれていた、という漠然としたことしか知りませんでした。

まあ、その知識に誤りはないのですが、こうして改めて戦いの模様をたどってもらうと、やはり日本軍のバカさ加減が痛感されます。兵たちには申し訳ないけれど、どうしてこんな事に命を捧げたのか、無駄に命を捨てることになったのか、そんな気持ちにさせられますし、そのとばっちりを受けた中国の民衆は本当に気の毒です。やはり戦争は悲劇でしかありませんね。

2021年4月16日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

革命尚未成功

昨日のうちにダイアリーを更新できなくて、ちょっと忸怩たるものがあるのですが……

はい、昨日、3月12日は中国革命の父、孫文の命日です。96年前のことです。つまり、あと4年すると、孫文没後100年になるわけですか。日本でもいろいろと関連書籍が出版されるのでしょうか?

孫文は、大陸でも台湾でもどちらも尊敬されている革命の父ですから、どちらも4年後は盛り上がるのではないでしょうか? ちなみに5年後は生誕160年ですから二年続けてのアニバーサリーですね。

そんな孫文、わが家で孫文関連の書籍を探してみましたら、まずは岩波文庫が見つかりました。『三民主義』と『孫文革命文集』です。この二点はまだ新刊で入手可能なのでしょうか? ちなみに写真では上巻のみですが『三民主義』は上下本です。

続きましては、同じく岩波書店の『孫文伝』です。

この本は、あたしが学生のころ既に入手不可で、古本屋で買いました。なぜか二冊持っています。古本屋を丹念に探せば、今でも手に入れることはできるのではないでしょうか? 岩波書店ではオンデマンドで販売しているようですが……

そして最後に、またまた岩波新書、『孫文』です。これが一番入手が容易な一冊ではないでしょうか?

そして清水新書の『孫文と中国の革命運動』、陳舜臣の『孫文』です。これはどっちも古本屋に行かないと手に入らないのではないでしょうかね?

清水書院の新書は、現在は判型が大きくなった「人と歴史」シリーズとしてリニューアルしたのですが、この孫文の巻は出ていないようです。残念です。同じく「人と思想」シリーズには『孫文』という一冊があります。

陳舜臣さんも中国史をテーマにした小説やノンフィクションをたくさん書かれていますが、果たして現在手に入る文庫はどれくらい残っているのでしょうか?

2021年3月13日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

孔子はそんなこと思ってもいないことでしょう

今朝の朝日新聞です。

日本にある孔子廟に土地を無償で提供しているのは政教分離違反なのか否かを争う裁判が行なわれているようです。

この数年、日本国内の反中、嫌中感情が高まっていて、国内の孔子学院は中国共産党のスパイ養成機関だ、といった声を受け各地で反対運動も起きているようです。なんとなく孔子廟問題にもそんなバックボーンが影響しているのではないかという気もします。

裁判のゆくえはともかく、儒教が宗教なのかと問われると難しいですね。まず思い出されるのは、刊行当時も賛否両論渦巻きましたが、『儒教とは何か』です。あたしはちょうど中国思想を学ぶ大学生でしたが、研究室でも大いに話題になったのを覚えています。

同書で著者は儒教は宗教だと主張していたはずですが、その他にも「儒仏道三教」という言葉あるように、この三つを宗教と捉えている見方はあるみたいです。ただ、その場合の宗教の定義ってなんなのでしょう?

裁判で争われるのは、恐らく宗教法人としての宗教の定義に当てはまるか否かだと思うのですが、そうなると孔子廟ってどうなのでしょう? 各地の孔子廟では漢文講座などが開かれていますけど、そこに学びに来ている人が信徒だとも思えませんし、宗教行為を行なっているような感じもしないんですけどね。

そもそも孔子自身は、自分の教えを思想だとも宗教だとも考えていなかったでしょうね。なにせ、その当時にあっては宗教なんて言葉は存在しなかったはずですから。

2021年2月21日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

聊斎志異です

光文社の古典新訳文庫から久々に中国モノが刊行されました。『聊斎志異』です。

これまでは「岩波文庫版」でしたが、もう一つあることで読み比べができそうです。ただしどちらも『聊斎志異』の全訳ではないようです。

全訳となると、懐かしい平凡社の「中国古典文学大系」しかないのでしょうか?

2021年2月16日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

原書が見つかりません!

先日、講談社学術文庫から『貞観政要』が刊行されました。

『貞観政要』と言えば、中国唐代の名君・太宗が家臣たちと交わした問答をまとめた書物で、後世、為政者のバイブルとして中国のみならず日本でも時の権力者によって愛読された古典です。

ただし、これまではちくま学芸文庫の『貞観政要』や角川ソフィア文庫の『貞観政要』が出ている程度で、どちらも抄訳でした。全訳となりますと、明治書院の『新釈漢文大系』に上下巻で収録されていますが、これは中国古典などの専門家が利用するもので、一般の方が手軽に読むものではありません。

そんな中、中味はもちろん本格派ですが、少なくとも形状と価格は一般向けの文庫というスタイルでとうとう全訳が刊行されたわけです。ちなみに、写真に写っている函入りの『貞観政要』はちくま学芸文庫のオリジナル、徳間書店から刊行されていた『貞観政要』です。

ところで、わが家の書架には中国で刊行された『貞観政要』の原書も所蔵していたはずなのですが、探してみましたが見当たりません。書架は一応ジャンルごとに分類して配架しているのですが、それっぽい棚を探しても見つからないんですよね。どうしたのでしょう?

2021年1月18日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

中国との縁

今日9月9日は重陽の節句?

はい、確かにそうですが、このダイアリーで何度か書いていますように、あたしの父の命日です。もう二十数年前のことです。ちなみに父の母、あたしの祖母も同じ9月9日が命日です。祖母は父が幼少のころに亡くなっていますので、あたしが全く知らないのは当たり前ですが、父ですらほとんど記憶がなかったそうです。

しかし、今日は毛沢東の命日でもあります。

なんか縁を感じます。あたしが中国学を学ぶようになったために、毛沢東の命日に父が亡くなったのではないか、と夢想したりしますが、ただ単に自分の母親があの世から息子を呼んだだけなのかもしれません。

毛沢東や近現代中国に関する書籍は山のようにありますが、とりあえず『毛沢東 ある人生(上)』『毛沢東 ある人生(下)』をお薦めいたします。

2020年9月9日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

明日を前に

明日は六四天安門事件です。

今年はコロナウイルスを理由に香港でも集会が禁止されるとのことですが、果たしてどうなりますことやら。中国大陸では若い人を中心にこの字件を知らない世代が増えていますし、歴史というのは変えられるのだということ中国自身が身をもって証明してくれています。

というわけで、あたしの勤務先の刊行物からこんな本をご紹介します。

『六四と一九八九 習近平帝国とどう向き合うのか』『銃弾とアヘン 「六四天安門」生と死の記憶』『新全体主義の思想史 コロンビア大学現代中国講義』の三冊です。

書店店頭でも、六四を前にコーナーを作っているところもあるでしょう。手頃なものから重厚なものまで、専門家の著作からジャーナリストのルポまで多種多様です。そんな中の一冊ならぬ三冊として加えていただけると嬉しいです。

今年に関しては、単に天安門事件を扱ったものだけではなく、現在の香港情勢やコロナウイルス対策に見られる中国政府の態度など、どうしてもそう言った要素も含まざるを得ないかも知れませんね。

2020年6月3日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー