ダブって買ったわけではありません

ちくま学芸文庫の『中国の城郭都市』を購入しました。こういうタイトルのものは、まずは買っておかないと、といつもの癖でポチッとしたわけですが、届いた書籍を見て、なんとなく見覚えがあるなあと感じました。

そこで同書をパラパラめくってみますと、かつて中公新書から刊行されたいたものだと書いてありました。というわけで、わが家の中公新書が並んでいる書架を見てみますと、案の定、中公新書版の『中国の城郭都市』がしっかり架蔵されておりました。

まあ、これくらいのことはしばしばあるので、「ミスった」とか、「買わなければよかった」といった後悔はまるでありません。文庫化にあたり一部の図版を変えたり、角道亮介氏の解説が付されたりと、まるまる同じではありませんので、これくらいはよしとしなければならないでしょう。

2023年9月9日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

阿片中毒になるには、阿片を買えるだけのお金を持っていないとならないそうです

どういう経緯があったのか、あたしなどにはわかりませんが、今日の朝日新聞朝刊の一面に満洲帝国のアヘンに関する記事が大きく紙面を割いて掲載されていました。

その記事のベースになっていると言ったら大袈裟でしょうし正確ではないと思いますが、いま満洲のアヘンに注目が集まっていることの一因に、記事の中にも取り上げられていたコミック『満洲アヘンスクワッド』があるのでしょう。「満洲」「アヘン」と聞いたら反応せずにはいられません。あたしもコミックの連載当初から気になっていて、単行本が出るたびに購入し愛読しておりました。

コミック単行本も既に10巻以上を数え、来月には14巻が刊行される予定です。もちろん購入します。そして、満洲のアヘン関連の本、それほど多くはないですが、何冊か架蔵しておりまして、その一冊が『大観園の解剖』です。

最初にタイトルだけを見たときは、「大観園だから『紅楼夢』に関係する本かな?」と思っていました。『紅楼夢』も興味があるので、いずれにせよ購入必至の本ではありましたが、よくよく見てみると満洲のアヘンに関する書籍でした。

そして満洲の阿片と言えば里見甫です。たぶん、里見甫の名前を知っている人は、現在の日本ではそれほど多くはないでしょうが、評伝がかつて刊行されていました。それが『其の逝く処を知らず』です。集英社から刊行され、その後集英社文庫でも刊行されました。右の写真は単行本ですが、集英社文庫版ももちろん架蔵しております。

この里見甫ですが、晩年にあたしの恩師がいろいろ話を聞いていたそうです。酒の席で、そんな思い出話をしてくれましたが、数回話を聞いたところで、里見甫が亡くなってしまい、最後まで話を聞けなかったそうです。

そんな恩師の著作が左の写真なのですが、表紙のカバー写真、左から二人目と数えてよいのでしょうか、白い中国服姿の男性が里見甫だそうです。写真を見る限り、とても満洲の阿片売買を牛耳っていた男とは思えないです。人は見かけによりませんね。

そう言えば、満洲ではないのですが、やはり阿片王と呼ばれた人に二反長音蔵がいますね。息子の二反長半が著した『戦争と日本阿片史 阿片王二反長音蔵の生涯』という本を古本屋で見つけて購入したのですが、これは学生時代の友人が中国近代史を専門としていたのであげてしまいました。

2023年8月17日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

正史を確認

つい数日前に読了した『親王殿下のパティシエール』の主人公はフランス人と清国人のハーフ、菓子職人のマリーですが、そのマリーを庇護する、もう一人の主人公が清朝・乾隆帝の皇子、永璘です。彼は実在する人物ですので、清朝の記録である『清史稿』を繙いてみました。

中国は王朝が代わると、次の王朝が自身の正統性を示すために先代王朝の歴史をまとめるのが伝統です。そのために歴代王朝は自身の歴史をしっかりと記録して残しておき、それを利用して次の王朝が正史にまとめるのです。

清朝が滅びた後も中華民国がその事業を継承し、あたしが学生のころに『清史稿』が完成、刊行されました。手元にあるのは中華書局の点校本で全48冊になります。いずれこれをベースとして『清史』が刊行されるのでしょうが、そんなニュースは聞こえてきませんね。そもそも作業は続いているのでしょうか。

それはさておき、その永璘の伝記は「列伝八」に載っています。該当部分が二枚目の写真です。たったこれだけです。第十七皇子というのはそのとおりで、乾隆54年、つまり1789年、フランス革命の年に貝勒に封じられたとあります。その後、嘉慶帝が即位、乾隆帝が崩御して親政が始まった嘉慶4年に郡王に報じられたというのも『親王殿下のパティシエール』最終巻に載っていました。

そして和珅の誅殺を受けて、その屋敷を賜ったことも書かれています。そして嘉慶25年に急な病となり、皇帝が見舞い、郡王から親王へ位が上がったのですが、その甲斐もなく亡くなってしまいました。1820年のことで、兄の嘉慶帝も同じ年に亡くなっています。

『清史稿』には生年が書かれていませんし、マリーと出会うことになる洋行についても何も書かれていません。乾隆帝の本紀も見てみましたが、王子をフランスへ派遣したという記事を見つけることはできませんでした。あたしの探し方は粗かったのかも知れませんので、これは引き続き調査してみたいと思います。

2023年8月11日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

中高生は本を読まない?

「若者の読書離れ」というウソ 中高生はどのくらい、どんな本を読んでいるのか』読了。あたしも世間の言説に惑わされて、今の子供は本を読まなくなっていると思い混んでいました。

でも著者によると、小中学生は別として、昔から高校生以上は大人も含めて二人に一人はほとんど本を読まないのですね。電車の中を見ると、この十年、雑誌や新聞、そして本を読んでいる人がめっきり減って、みんなスマホをみるようになっています。そういうところだけを見ると、本離れ、活字離れは信憑性が高いような気もしますけど。まあ、この本で著者は「活字離れ」については論評していませんので、活字離れと本離れ、雑誌離れを一緒くたにしてはいけませんね。

さて、本書で分析されている中高生の読書傾向、いろいろと考えさせられました。振り返ってあたしの中高生時代を振り返ってみますと、たぶん考えていたことはいまどきの中高生と大差ないと思います。悩んでいたことや抱えていた葛藤なども、たぶん似たり寄ったりだと思います。ただ、あたしはいまどきの中高生が読んでいるような本には向かわなかっただけです。

2023年7月18日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

近所で探すのが一番よいのでしょうか?

わが家の書架、このダイアリーでも何度かご紹介していますね。最近は主に文庫や新書の棚を中心にとって載せていたような気もしますが、わが家の書架で半分近いスペースを占めているのが中国からの輸入書、いわゆる中文書です。「中文書」と書いて「ちゅうぶんしょ」と読みます。

右の写真は、中国史をやる人にとっては基本中の基本、中華書局の点校本二十四史(評点本二十四史)です。『史記』から『清史稿』まで、いくつかは『人名索引』や『地名索引』も架蔵しています。中国史のみならず、中国学を学ぶ人なら必ずお世話になる叢書ですね。

歴史関係では、この他に『資治通鑑』もありますし、『武英殿本二十四史』の影印本も架蔵しています。『国語』や『戦国策』なども注釈本も含めいくつか持っていますし、あたしの専攻が秦漢時代だったので、『史記』については何種類もの現代中国語訳や注釈本を架蔵しています。

そして思想史を専門としていたので、諸子百家に関するものも数多く架蔵していまして、そこからの流れで漢代思想、魏晋玄学などもある程度はフォローしています。

思想と言えば外せないのは『十三経注疏』で、これも古典の影印本から「清人十三経注疏」なども一通り揃えています。『皇清経解』や『通志堂経解』も架蔵しているので、儒学関係のたいていの文献は自宅にいながらにして原典に当たることができます。

もちろん工具書類も諸橋『大漢和辞典』や『中国学芸大事典』もありますし、学習用の漢和辞典も10種類くらいは所持しているはずです。

と、こんな風に本をたくさん持っていることを自慢したいわけではなく、そろそろこれらの本をどうしたらよいのかを本気で考えないといけない年齢にさしかかったのではないかと最近思っているのです。

そもそもこんなに本を自宅に持つようになったのには理由がありまして、学生時代、特に一年生、二年生の時は大学まで片道一時間半かかっていたので、図書館で遅くまで調べものをするには不便でしたし、その当時の一、二年生キャンパスには研究室もなく、図書館の蔵書も調べものをするには貧弱すぎました。となると必然的に自宅である程度の調べものはできるようにしないと話にならない、というわけで本が徐々に増えていってしまったのです。まあ、大学院まで進む学生であれば、これくらいは普通のボリュームだと思うのですが……

で、話は戻ってこれらの中文書、『大漢和辞典』などは日本の書籍ですが、これらを引っくるめて中国関係の書籍をどうしたらよいものでしょう? 近所に中国史を学んでいる大学生、あるいはこれから学ぼうと考えている高校生は住んでいないものでしょうか? いたら全部差し上げたいと思っているのです。メルカリに売っても、どうせ二束三文にしかならないでしょうし、だったら有効活用してくれる人に譲った方が本も喜ぶのではないかと思うのですよね。

2023年7月10日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

もっともっと紹介されますように!

中国の作家・閻連科の新刊が刊行されました。『四書』です。

邦訳が刊行されるのは何作目になるのでしょう。現代の中国作家の中では多い方だとは思います。たくさん邦訳が出るのは嬉しいですね。もちろん他の作家の作品も読みたいですが……

ただ、今回の新刊にはちょっと違和感を感じました、「あれっ、河出書房から出るんじゃないの?」と。これまで閻連科の作品は、ほぼすべて河出書房新社から刊行されていますので、当然新刊も河出から出たものだと思ったのですが、よくよく見てみると今回は岩波書店から刊行されたのです。

こういうところが気になってしまうのは、やはりこの業界の人間だからでしょうか。そう言えば、訳者もこれまでは谷川毅さんから泉京鹿さんだったのが、今回は桑島道夫さんです。このあたりも気になる点の一つです。でも、そんなことはどうでもよいのです。閻連科の作品がまた邦訳されたということが肝心なのです。

この調子で、いろいろな出版社から中国作品が紹介されることを期待しています。じゃあ、誰を邦訳してほしいのかと問われると、具体的な名前はありませんが、女性作家や少数民族出身の作家、若手の作家など邦訳を読みたい作家はたくさんいますね。

2023年2月5日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

最近の文庫は……

角川ソフィア文庫から『漢文の語法』が刊行されました。

漢文と聞いたら職業柄(?)放ってはおけません。買ってしまいました。ただ、このタイトル、聞いたことがありますし見覚えがあります。

というわけで、自宅の書架を探してみたら見つかりました、親本が。もちろん角川書店の刊行物です。あたしが架蔵していたのは初版ではなく、昭和63年の再版でしたが、紛れもなく親本です。写真の右側の本がそれです。

ところで、現在も受験参考としての漢文の学参は刊行されていると思いますが、あたしが学生のころは、このように一見すると受験参考書ではなく、漢文を愛好する人、学ぶ人のための漢文語法、漢文訓読を扱った書籍が少なからず発売されていました。まだまだ古典に力があった時代だったのでしょうか?

2023年1月21日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

本紀のみなのかしら?

写真は、最近落手した文庫です。早稲田文庫というレーベルです。

えっ、そんな文庫なんて知らないよ、という方も多いかと思いますが、ご想像どおり、早稲田大学出版部が刊行している文庫です。

ひとまず『論語集解(上)』『論語集解(下)』『後漢書本紀(一)』の三冊しか刊行されていないようです。なかなかラインナップが渋いですね。通好みと言いますか、はっきり言って専門家しか買わないだろうというタイトルです。

『後漢書』はこの後すべて刊行されるのでしょうか。あるいは「本紀」だけが刊行されて「志」や「伝」は刊行されなかったりして、そんな気もします。

2022年12月11日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

あたしの学生時代に使えていたら……

明治書院の『新釈漢文大系』は、学生時代に漢文を読むときにまずは参照する現代語訳のシリーズでした。全120巻なのですが、あたしが学生のころはまだ全巻完結しておらず、早く出ないかなあと待っている巻もたくさんありました。

そんな『新釈漢文大系』ですが、函入りの高価なもので、個人で持つなんてなかなかできるものではなく、あたしも専門にやっていた『史記』だけは買い揃えていましたが、それ以外は図書館で閲覧するのが一般的でした。これだけの巻数があると、主立った古典はだいだい収録されていましたので、中国学専攻の学生には重宝がられていたと思います。

数年前に全巻完結したという話は聞いていましたが、それがこのほど有料のデータベースサイト「ジャパンナレッジ」のコンテンツに加わったのです。全巻引き放題、自宅に買い揃える必要もなく、図書館へわざわざ調べに行く必要もありません。自宅にいながらにして全巻を見ることができるのです。大学図書館などであれば、「ジャパンナレッジ」が利用できると思いますので、いまの学生はいくらでも使えるわけですよね。羨ましいかぎりです。

しかし、もちろん紙で引くことの長所もありますので、最初から「ジャパンナレッジ」で利用するのではなく、大学一年生、二年生のうちは図書館で紙の『新釈漢文大系』の頁を丹念に繰ってもらいたいと思います。それが財産となるはずです。

ちなみに、当時は集英社の『全釈漢文大系』とか平凡社の『中国古典文学大系』といった中国古典の大型シリーズがいくつかあり、角川書店や徳間書店からも現代語訳のシリーズが出ていました。またちょっと古いですが、『国訳漢文大成』や冨山房の『漢文大系』なども併用していました。懐かしい時代です。

2022年12月4日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

十一家注

中公新書の『孫子』を読み始めました。

『孫子』は現代日本語訳も何種類かありますし、解説書や入門書もたくさん出ていますが、やはり最新の研究成果を取り入れたものに触れたくなるものです。そう言えば、あたしが学生のころは、「ビジネスに役立つ孫子」といった類いの本が山のように出版されていた時期でもありました。

さて、この『孫子』は三国志の英雄、魏の曹操が定めた魏武注孫子をメインに取り上げていますが、時々「十一家注孫子」という名称も出て来ます。「そう言えば、十一家注孫子は持っていたはず」と思って、自宅の書架を探してみたところ、案の定、出て来ました。学生時代に購入していた『十一家注孫子』です。当時の中国としては珍しく、比較的きれいな造本です。改革開放で景気がよくなっていたのでしょうか?

2022年11月22日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー