没後80年です

今日、8月17日はイレーヌ・ネミロフスキーの没後80年にあたります。

あたしの勤務先からは『フランス組曲』を出しているだけですが、ネミロフスキーの邦訳は未知谷から数多く刊行されています。

このネミロフスキーって、ロシア革命によってフランスへ移り住んだユダヤ人作家なのですが、ユダヤ人ということから想像がつくようにアウシュヴィッツで亡くなっています。それだけではなく、上に「ロシア」と書きましたが、彼女の出身はキエフ(現在はキーウ)、つまりウクライナ出身の作家なのです。

もしネミロフスキーが生きていて、現在のロシアとウクライナの現状を見たら、何を思い、どういう作品を書いたでしょうか?

この二つの作品を併売するのはダメでしょうか?

少し前だったか、だいぶ前だったか、いつごろ知ったのか記憶にありませんが、それでもたぶん、せいぜい知ってから一年くらいだと思うのですが、『ダーウィン事変』というコミックがあります。

「知った」という書き方が表わしているように、あたしはこのコミックを読んでいません。別に毛嫌いしているわけでもなければ、絵のタッチが好みではない、というのでもありません。ただ単に機会がなかったというだけです。

同コミックの公式サイトによると

私の友達は、半分ヒトで、半分チンパンジー。テロ組織「動物解放同盟(ALA)」が生物科学研究所を襲撃した際、妊娠しているメスのチンパンジーが保護された。彼女から生まれたのは、半分ヒトで半分チンパンジーの「ヒューマンジー」チャーリーだった。チャーリーは人間の両親のもとで15年育てられ、高校に入学することに。そこでチャーリーは、頭脳明晰だが「陰キャ」と揶揄されるルーシーと出会う。

と書いてあります。舞台がアメリカと聞くと、「こんな実験、本当にやってそう」という気もしてきますが、それはともかく半分サルで半分ヒトのチャーリーが人間世界で暮らし、ルーシーと交流して、というストーリーなんですね。

単に動物が登場して人間世界で騒動を起こすという小説やコミックであれば過去にいくつもあったと思いますが、半獣半人という存在がこの作品のキーですね。

そんな設定で思い出したのが、あたしの勤務先から出ている『私たちが姉妹だったころ』です。2017年に刊行されたものですので、2020年刊行の『ダーウィン事変』第一巻よりも前になります。この本が『ダーウィン事変』都道関係するのかと言いますと、まずは内容紹介を。

「あたしファーンがこわいの」幼い日の自分のひと言が、家族をばらばらにしたのだろうか――。
ローズマリーはカリフォルニア大学で学ぶ22歳。無口で他人とうまく付き合うことができない。かつては心理学者の父と主婦の母、兄と、双子にあたる姉ファーンのいる、おしゃべりな子だった。だが5歳の時に突然祖父母の家へ預けられ、帰ってみると姉の姿が消えていた。母親は部屋へ閉じこもり、父は酒に溺れる。大好きだった兄も問題児になり、高校生の時に失踪してしまう。ローズマリーがこの大学を選んだのは兄の手がかりを捜すためだった。

これだけですとわけがわからないと思いますので補足します。まず主人公であるローズマリーが無口で人付き合いが苦手という性格です。ちょっと違うかもしれませんが、「陰キャ」という『ダーウィン事変』のルーシーに似ているところがありませんか?

そして、これがネタばらしなんですが、いなくなってしまったというローズマリーの双子の姉ファーンが実はチンパンジーなのです。幼いローズマリーは姉がチンパンジーだなんて思いもせず、に暮らしていたわけなのです。そう聞くと、『ダーウィン事変』を読んでいる方であれば興味を持たれるのではないでしょうか?

逆に『私たちが姉妹だったころ』を読んでいた方が、数年後にコミックの『ダーウィン事変』に出会った、なんてことも起きているのではないでしょうか? どちらも未読のあたしには偉そうなことは言えませんが、ぜひ両方読まれた方の感想が聞きたいものです。

さとうきび畑の話ではないと思いますが

海外文学シリーズ《エクス・リブリス》の新刊です。

タイトルは『アイダホ』です。「アイダホ」と聞くと「アイダホ・ポテト」という単語が頭に浮かんできます。幼き日の記憶です。たぶんCMか何かだと思うのですが(笑)。

そして、本書の帯の惹句を見ると、さらに別の連想が働きます。名曲「さとうきび畑」です。歌詞の中にこんな一節があります。

ざわわ、ざわわ、ざわわ、風に涙はかわいても
ざわわ、ざわわ、ざわわ、この悲しみは消えない

この長い名曲の、最後の最後ですね。まだ読んでいないので、「さとうきび畑」と何かしら関係がある作品なのか、単なる偶然なのかわかりませんが、ちょっとどころかかなり気になってしまう惹句です。

没後60年と生誕130年、生誕150年

ちょうど一週間前の7月8日はバタイユの没後60年でした。あたしの勤務先からはバタイユの著作ではありませんが、『バタイユ 魅惑する思想』という一冊を刊行しております。

バタイユの著作は他社からたくさん出ていますが、没後100年などキリのよいアニバーサリーでないと店頭も盛り上がらないですかね?

そして、本日7月15日はベンヤミンの生誕130年にあたります。ベンヤミンも本人の著作は出しておりませんが、『ヒトラーと哲学者』や『フランクフルト学派と批判理論』がベンヤミンがかかわる刊行物になります。

ベンヤミンの方が盛り上がるのか、バタイユの方が世間的な関心は高いのか、あたしにはよくわかりませんし、いわゆる世間一般で言えば「どっちもどっち」なのかもしれません(爆)。

そして、明日7月16日はアムンゼン生誕150年にあたります。アムンゼンと聞くと、南極探検、スコットとの競争が有名ですが、子供向けの偉人伝にアムンゼンは入っているのでしょうか? あたしは子供のころにアムンゼンとスコットの物語を読んだ記憶があるんですよね。アムンゼンは成功し、スコットは遭難死してしまう物語に、子供心にスコットへの同情心が芽生えたのを今でも憶えています。

さて、子供向けではありませんが、あたしの勤務先からは『アムンゼン 極地探検家の栄光と悲劇』という評伝を刊行しておりました。「ました」という過去形を使ったのは現在品切れだからです。残念ですが致し方ありません。

310年と260年

本日6月28日は、あたしの勤務先絡みでは二つのアニバーサリーです。

まず一つは、ジャン=ジャック・ルソーの生誕310年になります。刊行物で言いますと、主著の『社会契約論』がUブックスで出ています。また代表的な著作のコレクションが、白水iクラシックスから四冊、『ルソー・コレクション 孤独』『ルソー・コレクション 政治』『ルソー・コレクション 文明』『ルソー・コレクション 起源』として刊行されています。

ルソーは教科書にも載っている有名人ですから、他者からも翻訳や関連書籍がたくさん出ているはずです。この機会に店頭でちょっとしたフェアなどは如何でしょうか?

二つめのアニバーサリーは、ロシア帝国の女帝・エカチェリーナ二世の即位260年です。

ロシアのウクライナ侵攻で、ロシアそしてプーチンは、かつてのソビエト連邦ではなく、さらにその前のロシア帝国の再現、復興を目指しているのではないかと言われています。その復興すべきロシア帝国の象徴なのが、このエカチェリーナ大帝です。

現在も尾を引く、クリミア半島領有など、歴史を遡って考えるのであれば必ずエカチェリーナ女帝に行き着きます。いま現在のクリミアとロシアの戦争を理解するのであれば、この数ヶ月で陸続と刊行された書籍で十分なのかもしれませんが、もう少し歴史の流れを知りたい、どうしてこういう事態になっているかの根源を知りたいというのであれば、本書は外せない一冊、否、二冊になるでしょう。

役者が揃った?

先日刊行した『シャルル・ドゴール伝(上)』に引き続き、『シャルル・ドゴール伝(下)』が見本出しになります。配本予定は16日ですので、来週末くらいから書店店頭に並ぶことでしょう。

あたしはフランス史に詳しいわけではありませんので、ドゴールのフランスにおける評価についてはよくわかりませんが、対独、対ナチスに対して最後まで抵抗を続け、国外からもレジスタンスを呼びかけた救国の英雄といった印象を持っています。それで正しいのでしょうか?

まあ、史上の人物の評価は難しいですし、どんな人物にも毀誉褒貶が付きものですから、褒めちぎる人もいれば、ケチョンケチョンに貶す人もいることでしょう。

ところで、『シャルル・ドゴール伝』は写真のような装丁なのですが、白水社の大ファンであれば、この装丁に見覚えがあるのではないでしょうか? 正解は二枚目の写真です。

そうです、『ヒトラー(上)』『ヒトラー(下)』とほぼ同じ装丁になっています。ヒトラーと闘ったドゴールですから、同じような装丁の本になっていることをどう思うのでしょう?

ちなみに『ヒトラー』は上巻が臙脂、下巻が青でしたが、『ドゴール伝』は逆になっていて、上巻が青、下巻が臙脂です。また『ヒトラー』は上下巻で装丁に使った肖像写真が異なるのですが、『ドゴール伝』は同じものです。うまい具合に若いときと晩年の写真が見つからなかったからでしょうか?

没後80年

6月4日。いつもなら天安門事件について書くところですが、今年は別の話題について書こうと思います。

今日、6月4日は、ナチの中でも比較的有名な、ラインハルト・ハイドリヒが殺されてちょうど80年です。あたしの勤務先では彼の評伝『ヒトラーの絞首人ハイドリヒ』を刊行していますが、刊行当時、非常によく売れたのを覚えています。

そこそこ有名な人物とはいえ、ナチや第三帝国に詳しくなければ知らない名前だと思うので、どうしてこんなに売れるのはちょっと不思議に思った記憶があります。調べてみましたら、二つほど理由が見つかりました。

まず一つめが、『ヒトラーの絞首人 ハイドリヒ』刊行の数年前に発売され非常によく売れていた『HHhH』がハイドリヒ暗殺を扱った作品だったのです。この小説からハイドリヒを知って興味を持った方が本書に流れたのではないかと思われます。

そしてもう一つの理由が、ゲーム、そしてそこから派生したアニメ『Dies irae -Also sprach Zarathustra-』の主要登場人物の一人がハイドリヒだったのです。あたしはそっち方面にはまるで疎いので、たまたま書店の方と話していて、こういうゲームがあることを教えていただきました。どこに売れるきっかけが潜んでいるかわからないものですね。

また日本でも公開されましたが、映画「ハイドリヒを撃て」も本書販売の追い風になったと思います。

今無性にルヴェルを推したい。

写真は、紀伊國屋書店新宿本店の2階、文芸書売り場です。

その一角で、刊行早々に重版が決まったUブックスの『地獄の門』が山積みになっております。そのすぐ隣には創元推理文庫の『夜鳥』も同じように積まれています。

お陰様で、ルヴェル、大人気です。あたしも読みましたが、なんとも言えない読後感です。ハマる人が続出するのも頷けます。抜群に面白いです。

いや、面白いという表現は、この作品世界からするとちょっと誤解を招くかもしれません。でも、面白いものは面白いです。

あたしなりの感想を言えば、人間の醜い部分がこれでもか、これでもかという感じで描かれている短篇集です。落ち込んでいるときに読んだらつらくなるだろうという心配は無用です。むしろ本書を読めば「ここに出ている連中に比べたら自分はまだマシだ」と思え、明日への希望と生きる勇気がきっと湧いてくるはずです。

そして、左の写真は、その新宿紀伊國屋の店頭に掲示してあった、ポップというかパネルというか、とにかくお店の方の熱い熱い思いが伝わってくる推薦文です。むしろ檄文と呼んだ方がよいかも知れません。

これからの鬱陶しい季節に、気持ちまでどんよりさせてくれるルヴェル作品は如何でしょうか?

ハシビロコウが学習のお手伝いを致します?

来週には配本になる新刊『みんなの疑問に答える つぶやきのフランス語文法』は、既に刊行されている『1日5題文法ドリル つぶやきのフランス語』の姉妹篇です。

そもそも毎日少しずつフランス語の問題にチャレンジしよう、という趣旨で勤務先のTwitterでスタートしたのが『1日5題文法ドリル つぶやきのフランス語』でした。1日に5問なら続けられるでしょう、というのが狙いでした。

そして問題を解いたら、どうしてそういう解答になるのか、その理屈が知りたくなるのが人情というものです。そこで次に企画されたのが、新刊『みんなの疑問に答える つぶやきのフランス語文法』です。

ですので、両書に共通する「つぶやき」とは学習の過程で学習者がブツブツと独り言をつぶやくのでもなければ、先生が生徒そっちのけでボソボソと聞こえない声でつぶやいているのでもありません。Twitterのことです。

そしてさらに両書に共通するのは表紙カバーにも登場している鳥、ハシビロコウです。本文中にもポイント、ポイントでハシビロコウのイラストが登場しますので是非お楽しみに!

いろいろな日があるものですね

今日はオーケストラの日なのだそうです。

ネットで調べますと、「耳にいい日」という語呂合わせから来ているようです。あたしはてっきり、日本で初めてのオーケストラが創設されたとか、海外のオーケストラが初来日して演奏した日だとか、そんないわれがあるのかと思っていましたが、そうではないんですね(汗)。

というわけで、あたしの勤務先ですとまずは『指揮者は何を考えているか』になるでしょうか?

ただ、もっとストレートなタイトルの本もありまして、それが『オーケストラの音楽史』です。しばらく品切れだったのですが、4月に新装版として復活します。いましばらくお待ちください。