アニメやコミックと人文書

前のダイアリーでは高知市街にある金高堂本店で開催中の人文書フェアから、お店の方が飾ってくれたポップをご紹介しました。

今回は、市街から少し離れたところに位置する、金高堂朝倉ブックセンターでの人文書フェアの模様をご紹介します。

最初の写真は、今回のフェアの目玉企画の一つです。何をやっているのかと言いますと、コミックやアニメとそれに関連する人文書を一緒に展開しているのです。

アニメやコミック発で専門書が売れるというのは、今に始まったことではなく、もう20年以上の歴史があると思います。ただ、アニメ放映に合わせてとか、コミックの新刊発売に合わせてといった一つの作品に特化したフェアは多くの書店でやっていますが、今回のようにいくつかのアニメ、コミック作品を取り上げてフェアをやるところは、まだそれほど多くはなかったと思います。

そしてこのフェア、しっかりお客様の反応が出ているそうです。手応えが感じられると嬉しいものですし、こちらとしても「こんなコミックが出ているんだ!」と気づかされることが多いです。非常に勉強になります。

そして二枚目の写真は、そんな朝倉ブックセンターで開催されている人文書フェアの別の一角です。人文会会員社の紹介ポップと共に、それぞれの社の主立った作品が並んでいます。

仕事もしていたのです!

先週の中四国研修旅行は、どうも食べ物の話ばかりになってしまい、「本当に仕事だったの?」と言う疑念を持たれた方も多いのではないでしょうか? そこで、ちょっと仕事っぽい話を……

今回訪れた高知の金高堂では、ここ数年恒例となっている人文会のフェアが開催中でした。それを見に行くというのが中四国班の大事なミッションでもありました。

高知市街にある金高堂と、郊外に位置する金高堂の朝倉ブックセンター、この両店でフェアは11月まで開催中です。そこでまずは金高堂のフェアの様子を撮った写真から二枚、ご紹介します。どちらも、あたしの勤務先の書籍のポップです。お店の方の手作りです。ありがたいことです。

最初の一枚は『日本でわたしも考えた』に付けられたものです。カバーの色をポップの文字にも活かした、素敵な出来映えです。

同書は、インド人ジャーナリストによる日本人論、日本論といった作品で、さすがジャーナリスト、文章も非常に読みやすいものになっています。

次の一枚は『ヴェルサイユ宮殿に暮らす』に付けられたポップです。「優雅で悲惨な宮廷生活」というサブタイトルが気になって仕方なかったようですね。

確かに、ヴェルサイユ宮殿と聞けば「ベルばら」の華麗な宮廷生活を思い浮かべる人が多いでしょう。その一方、ベルサイユ宮殿にはトイレがなかった、なんて話も聞いたことがあります。いずれにせよ、権謀術数渦巻く宮廷ですから、気苦労の絶えない場だったのではないでしょうか。

なんかワクワクしてきます!

先日刊行された『エバ・ルーナ』は引き込まれるのではなく、引きずられるような力を持った本でした。

話をするのが得意な主人公エバ・ルーナの生き様、確かにこれ以上落ちようがないほどの底辺を見た、という人生ではなかったと思います。むしろよい人と巡り会って、波瀾万丈ではあるものの、実り多い人生を送ってきたのではないかと思います。にもかかわらず、この力強さはどこから来るのでしょう? 不思議な魅力を持った一冊です。

そんな主人公エバが語る物語、実は本書にはほぼ出て来ないのです。物語を語ったというシーンは何度も出て来ますが、肝心な物語は想像するしかないのです。そこで、エバの語った物語だけを集めて一冊の本にまとめたというのが、まもなく配本になる『エバ・ルーナのお話』です。エバ・ルーナがどんな話を周囲の人たちに語って聞かせていたのか、これでようやくわかるというわけです。こちらも読むのが楽しみな一冊です。

さて、次にご紹介するのは新しいシリーズ《サイノフォン》の第一巻、『華語文学の新しい風』です。

華語文学って何よ? 中国文学とは違うの? という声が聞こえてきそうです。ヒントは「華語」という単語です。「中国語」ではなく「華語」、内容紹介によれば

広く諸方言も含めた中国語を指し、世界各地の華人コミュニティや中国国内において、多元的、流動的、混成的に用いられる

ものだそうです。確かに「中国語」と言ってしまうと、この寛さ、深さを表わすことはできませんね。中国文学を専攻している人であれば、「馬華文学」など東南アジアの中国語文学も立派な研究分野として成立していることをご存じでしょうが、一般の日本人にはほとんど知られていない分野ではないでしょうか。

そんな「華語文学」のエッセンスが今回の一冊『華語文学の新しい風』で味わえるようになったのです。中国と聞くと中国共産党、一党独裁で強権的な体制、いわゆる権威主義といったネガティブなイメージが先行しがちですが、華語という視点で眺めるとその射程は一気に広がり、さまざまなものが見えてくるはずです。

あたしが個人的に学生時代に中国学を専攻していたというのもありますが、今回のシリーズは非常に楽しみです。目次を見ただけでワクワクしてきます。どれから読もうか、タイトルを見ているだけでも楽しいです。

さて、この《サイノフォン》ですが、全4巻予定です。カバーに印刷されているラインナップは三枚目の写真のとおりです。各巻のタイトルは刊行時に変更になるかもしれませんが、今後の続刊に乞うご期待ください。

高い本だから? 高い本でも? 高い本だからこそ?

タイトルに書きました「高い本」とは、新刊の『ラヴェンナ』のことです。

A5判で、552頁、本体価格が8700円、税込では9570円という大著です。

この本がどうしたかと言いますと、まだ刊行からそれほど時間が経っていないのですが好調なのです。もちろん、どの書店でもバカバカ売れている、というわけにはいきませんが、売れるべき書店ではしっかりと売れていまして、追加注文も入り始めています。

先週、関西ツアーに出かけましたが、三日で京阪神三都という駆け足でしたので、大型店中心の訪問になりましたが、それが必然的に本書が売れるべき書店と重なりました。そして、確かに回った書店のいくつかでは既に結果が出ていまして、あたしのセールストークで追加注文も上がりました。

ボリュームのある本ですから、一冊でも売れれば大きいです。ただし、この価格なので、書店の注文はやや抑え気味、少なめな書店も見受けられました。しかし、やはり実際に足を運んで書店の方と顔を合わせて話をすると、「うん、もう少し売れそうだね、追加します!」という声をいただけました。

コロナ禍で直接顔を合わせる機会が減っていますが、顔を合わせないままでも、それなりの追加注文が上がったのでしょうか? もちろんメールやファクス、電話などの営業も可能ですが、お互いに面識がないと、ファクスやメールはスルーされそうです。

こんな考えはやはり古いのかしら、と思いつつ、やはりこういう本こそしっかり顔を見て話をしたいものだと、今回改めて思った次第です。ただ、公休日などの関係でお目にかかれなかった方には申し訳ないところですが。

要人来日

国論を二分している国葬ですが、それに合わせて海外から要人が続々と来日しているようです。この際、エリザベス女王の国葬に集った顔ぶれと比較するなんて野暮なことはやめて、要人に関連する本を二点ほどご紹介します。

まずはインドのモディ首相関連の本です。あたしの勤務先からは『モディが変えるインド』という本を刊行しております。

モディ首相は、なんとなく日本では比較的好感度が高いように感じますが、現代インドに関する本を読んでいると、なかなかどうして一筋縄ではいかない人物ですね。多民族・多言語だけでなく、多宗教なインドを束ねるのは大変だと思いますが、ヒンズー教を押し立てて国を動かしているようなので、反発も強いそうです。中国に続いて世界の大国と呼ばれるようになってきたインドですが、中国のように順調に先進国の仲間入りを果たすことができるのでしょうか?

もう一点は、アメリカから来日するハリス副大統領に関連して、そのものズバリ『アメリカ副大統領』です。ハリスさん自身を扱った書籍は、この数年で何冊も(他社から)刊行されましたが、アメリカの副大統領という職務にフォーカスした本は他にはないのではないでしょうか?

アメリカ副大統領という職も大統領選挙の時には多少は関心を引きますが、ほとんどの日本人は副大統領が誰かなんて知らないことでしょう。いや、アメリカ人だとどれくらいの人が知っているのでしょうかね? ハリスさんは「初もの」尽くしだったので話題になり、副大統領としては抜群の知名度でしょうけど、歴代の副大統領ってどれくらいご存じでしょうか。

実はもう一つの上下本もご一緒に

キューバ・ミサイル危機(下)』の見本出しです。『キューバ・ミサイル危機(上)』は先月、既に配本になっていますので、これでようやく上下揃えて並べることができます。

上下二冊を並べると右の写真のような感じになります。特に写真がつながるわけではありませんが……

見ておわかりのように、ケネディとフルシチョフです。米ソ両大国の、当時のリーダーですね。

そしてこの二人のカバーを見ると思い出すのが『ベルリン危機1961(上)』です。もちろんタイトルからわかるとおり、こちらも上下本でして、『ベルリン危機1961(下)』と二冊セットで並べてほしいものです。

キューバ危機が1962年、その前年である1961年にベルリン危機、すなわちベルリンの壁建設が起こっていたわけです。そこの丹念に取材したノンフィクションが『ベルリン危機1961』です。

ケネディとフルシチョフを代表とする東西冷戦について、今一度振り返って考察するのに、恐らくこの二点四冊は外せない文献ではないでしょうか?今回の新刊『キューバ・ミサイル危機』と一緒に、是非とも『ベルリン危機1961』も並べていただければ幸いです。

久しぶりになってしまいました

今日からまた新しい一週間のスタートです。

このダイアリーでも書きましたとおり、先週は木曜日に在宅と半休を取って、コロナワクチンの四回目接種を受けました。副反応の用心のため、翌金曜日も在宅ワークにしておきまして、体調がよければ外回りに行こう、あまりにも体調が悪ければ休みにしようと思っていたところ、その中間くらいの副反応で、外回りには出ず、一日在宅ワークに徹しておりました。

そんなわけで出社したのは先週の水曜日以来となります。なんか本当に久しぶりに会社に出て来た気分です。確かに久しぶりなんですけどね。通勤電車も久しぶりに感じます。

ふだんは在宅ワークといっても昼前には外回りへ出かけていたので、昔で言うところの「直行直帰」というやつです。それが今回はまるっきり在宅ワークだったので、なんとなく変な気分です。

期待している二冊

Uブックスの新刊『アーモンドの木』は明日が配本日なので、書店に並ぶのは、早いところで土曜日、地方の書店だと週明けになってしまうのではないかと思います。もうすぐですので、ぜひ楽しみにお待ちください。

デ・ラ・メアって児童文学作家として知られているのでしょうけど、この作品は大人向け、なかなかモヤモヤする読後感がたまりません。いわゆる幻想怪奇小説と言うのでしょうか。

別にお化けや悪魔が出て来るとか、人間の醜悪な部分が露悪的に描かれているとか、そういう感じではなく、どこにでもあるような、だけど、嫌悪感まではいかないくらいの違和感というか、そんなものを感じるストーリーたちでした。

ちなみに、アマゾンで検索窓に「アーモンドの木」と入れても全然ヒットしませんね。カテゴリーが「すべて」になっているからでしょう。植物・食物のアーモンドばかりがヒットします。カテゴリーを「本」にすれば最初にヒットするのですけど……(笑)

続いては、週明けが配本日なので、来週半ばには店頭に並ぶと思いますが、『信仰の現代中国』をご紹介します。著者はカナダ生まれのジャーナリストですが、よく中国庶民の中に分け入って文章をまとめているなあと感じました。

手前味噌ですが、あたしの勤務先ってこれまでも『ネオ・チャイナ』『辺境中国』など、欧米のジャーナリストによる中国ノンフィクションを出してきましたが、読み応えのある、よい作品が多いですね。別に日本人の書いたものを悪く言うつもりはありませんが、本当によく調べていると感心します。

これも偏見なのかも知れませんが、日本人が書く中国ノンフィクションって、新書が多かったりして、やはり分量が少なめです、簡単に読み終わってしまうものが多いです。単行本でもその傾向はあります。

それに比べると欧米のノンフィクションは、頁数もあって本も分厚くなり、そのぶん価格も高くなってしまいますが、読み応えや満足度も十二分にあります。日本人の書き手にも、それなりの紙幅を与えれば同じレベルでかける方は大勢いると思うのですけどね……

パリ入城!

8月26日はドゴールのパリ入城の日なのだそうです。

第二次世界大戦で、フランスって意外とあっさりとドイツに降伏してしまったんですよね。だからこそレジスタンス側も必死になったのかもしれません。

そんなフランス側が、自国からドイツを駆逐するために奮闘し、史上最大の作戦を経てようやくパリを取り戻し、この8月26日にパリでドゴールによるパレードが行なわれたわけです。

パリ解放を主導した救国の英雄ドゴールについて知りたい方には、『シャルル・ドゴール伝(上)』『シャルル・ドゴール伝(下)』をお薦めいたします。A5判の巨冊ですが、ドゴールについて知るには、外せない一冊、いや上下本なので二冊です。

上で「救国の英雄」と書きましたが、ドゴールのフランスにおける評価ってどんなものなのか、個人的には非常に興味があります。毀誉褒貶、かなり振れ幅が大きな人物ですよね。だからこそ本書は、膨大なの資料に基づいて執筆された、中立で客観的なドゴール伝になっているようです。

ところで、パリ解放は1944年の8月19日から25日にかけて行なわれた戦闘ですが、そんなパリ解放をメインに扱っているのが『パリ解放1944-49』です。

タイトルからもわかるとおり、解放戦争だけでなく、その後のパリの復興、戦後の歩みも網羅した一冊です。

その解放に沸くパリで重要な舞台となったのがノートルダムです。2019年に焼け落ちてしまいましたが、パリの歴史を見つめてきた大事な建築であり、場所です。

そのノートルダムについて詳しく知りたい方には、『ノートルダム フランスの魂』が最適でしょう。なぜ「フランスの魂」と呼ばれるのか、きっとわかると思います。

11月1日ではなくて?

Googleのトップページ知ったのですが、本日8月26日は犬の日なんですね。正確に言うと「世界犬の日 National Dog Day」と言って、アメリカで制定されたようです。

日本ですと「ワン、ワン、ワン」の語呂合わせで11月1日が犬の日ですけど、世界に目を向けるといろいろと違うものが見えてきます。ということで、あたしの勤務先の刊行物から犬に関するものをいくつかご紹介します。

まずは中国の作家、閻連科の『年月日』です。飢饉に苦しむ農村を舞台に、村人も去ってしまった村でおじいさんと目の見えない痩せ犬が必死のサバイバルを繰り広げる物語、犬好きなら涙がちょちょ切れること必死の作品です。

続いてはガラッと変わって『フラッシュ 或る伝記』、ヴァージニア・ウルフの作品です。こちらは犬種がわかっていまして、コッカー・スパニエルです。このコッカー・スパニエルのラッシュの目を通して見た世界が描かれます。

公式サイトの紹介文にもあるように、「犬好きによって書かれた本というより、むしろ犬になりたいと思う人によって書かれた本」というのがまさしくピッタリな小品です。

以上の二点は新書サイズの白水Uブックスの海外文学でしたが、次に紹介する『神は死んだ』は単行本、《エクス・リブリス》の一冊です。短篇集なので、すべてが犬にかかわる作品ではありませんが、犬にかかわる作品はかなり異色です。

神(砂漠で野垂れ死んだキリスト)の肉を食べたために知能が発達した犬が登場します。そんな犬への取材を試みたのが「神を食べた犬へのインタビュー」という一篇です。キリスト教世界では「神が死んだ」というインパクト、そしてその肉を犬に食われてしまったという衝撃がかなり話題になったのではないでしょうか? この邦訳もよく売れました。

最後に、ノンフィクションを二点ご紹介します。

まずは『愛犬たちが見たリヒャルト・ワーグナー』です。あのワーグナーが犬好きだったというのは、ワーグナーのファンであれば周知のことなのでしょうか? あたしは不勉強で知りませんでした。

本書はワーグナーの評伝ではありますが、そのワーグナーの愛犬の目を通して見たという設定が秀逸です。上掲の『フラッシュ』と読み比べてみるのも面白かもしれません。

最後は、現在品切れではありますが、『戦禍のアフガニスタンを犬と歩く』です。タリバン政権崩壊直後の冬のアフガニスタンを犬と共に踏破したノンフィクションです。アフガニスタンの現状、人々の暮らし、戦火の爪痕など、アフガンの混乱状態が見て取れます。

こうしてみますと、犬というのは楽しいときも辛いときも、人間のそばに寄り添ってくれているのだなあと実感します。それが犬の宿命なのでしょうか?

なお「犬」ではありませんが、あたしの勤務先からは「オオカミ」に関する本も数多く出しております。ご興味のある方はそちらも是非手に取ってみてください。