ガイブン手帳2022

 毎年この時季になると本屋の店頭で見かける商品に『歴史手帳 2022年版』があります。これは吉川弘文館の商品ですが、似たようなものに『2022年版 山川歴史手帳』があります。どちらを選ぶかは個人の好みなのでしょう。

そして周囲を見回してみますと、『鉄道手帳』なんていうのもあります。

いわゆる、ただ単なる普通の手帳ではなく、こういうあるジャンルをフィーチャーした手帳もそれなりの需要があるようですね。カレンダー部分のレイアウトの好き嫌いはおくとして、やはりこういう手帳を買う人は、その付録の部分に興味津々なのでしょう。

で、あたしが思ったのは、《ガイブン手帳》《海外文学手帳》といった手帳はないものか、ということです。カレンダーの部分には、有名な文学者、作家などの誕生、死亡が載っていて、手帳を眺めながら「今日は某々の誕生日なのか」と思ったりできるわけです。

付録には、国内外の文学賞の簡単な一覧と紹介、ノーベル文学賞やピュリッツアー賞の受賞者リストなどが載っているようなイメージです。まあ、需要があるのかわかりませんが、本当に発売するのであれば、もっと付録を充実させないといけませんね。

スタートダッシュ!

実は刊行前から話題になっていました『とってもナチュラル ふだんのひとことフランス語』がようやく発売になりました。

で、アマゾンのフランス語学習書の「売れ筋ランキング」を見ましたら、ご覧のように堂々の第一位に輝いていました。この調子で、リアル書店でも売れてくれることを期待しています。

なお第二位も『フランスの小さくて温かな暮らし 365日』で、著者は同じトリコロル・パリさんです。しかし、この本はフランス語の学参でジャンルは合っているのでしょうか?

その下を見ますと、第四位、第六位、第七位、第八位にもあたしの勤務先の書籍がランクインしております。フランス語を売りにしている出版社なので、この結果は当たり前とは言いませんが、これからも維持していけるようにしたいものです。

一日遅れですが……

昨日、11月24日は哲学者、スピノザの誕生日だったそうです。

岩波文庫のツイッターにそうありました。『エチカ』と『知性改善論』の画像と共につぶやかれていました。

というわけで、一日遅れですが、あたしも!

自宅の書架を漁ってみたら、もちろん岩波文庫の『エチカ』は所蔵していましたが、その他に『神学・政治論』、そして光文社古典新訳文庫版の『神学・政治論』なんかもありまして、入門書的なものとしては講談社現代新書『はじめてのスピノザ』も所蔵しておりました。

さらにダメ押し(?)として、文庫クセジュの『スピノザ入門』です。

これらは類書と呼べるのでしょうか?

このところ、書店の店頭でちょいちょい見かける本に『ケアの倫理とエンパワメント』があります。

自己と他者の関係性としての〈ケア〉とは何か。強さと弱さ、理性と共感、自立する自己と依存する自己……、二項対立ではなく、そのあいだに見出しうるもの。ヴァージニア・ウルフ、ジョン・キーツ、トーマス・マン、オスカー・ワイルド、三島由紀夫、多和田葉子、温又柔、平野啓一郎などの作品をふまえ、〈ケアすること〉の意味を新たな文脈で探る画期的な論考。

というのが梗概ですが、「ケアの倫理」と聞くと真っ先に頭に思い浮かべるのは文庫クセジュの『ケアの倫理』です。

本書の内容紹介は以下のとおりです。

現代のネオリベラリズムの社会とは、自律した個人が競争しあう社会である。しかしそれだけで、社会は成り立つのだろうか。人間は、実は傷つきやすく、ひとりでは生きていくことができないため人との関係、他人への依存を必要としているのだ。「ケア」とは、人の傷つきやすさに関わることであるが、その活動はこれまで私的なこととされ隠されてきた。自律した個人が競争できるのは「ケア」する人が存在するからであり、「世話をすること」の概念を見つめ直す。その倫理は社会関係の中枢に位置づけられるものであり、配慮しあう世界をめざす。本書はアメリカで始まった議論をフランスの哲学的背景からいっそう深めた解説書となっている。

この両書、タイトルは似ていますが類書と呼べるのでしょうか? ただ、書店店頭を見ていますと、「ケアの倫理」をタイトルに含む書籍というのは決して少なくはないようです。

一番新しいところでは、『ケアの倫理と共感』というものがあります。

感情主義的な徳倫理学の提唱によって現代倫理学に新たな道を拓いたスロートが、本書では「成熟した共感」という観点を掘り下げることでケアの倫理を義務論や功利主義と並び立つ規範倫理学として展開。発達心理学に依拠しつつ共感概念を洗練させ、人間の情緒や関係性に根ざした道徳理解から行為や制度の正/不正、自律と尊重を論じる。

この本の梗概は上記の通りです。このあたりの分野にはからっきし疎いので、これら三冊を一緒に並べて売ってもらうべきなのか、何の関連も脈絡もない、似て非なる三冊なのか、あたしには判断できません。

やはり営業部員としてはもっと勉強しなければなりませんね。

Cコードは気にするものなのでしょうか?

ヒュパティア 後期ローマ帝国の女性知識人』が配本になりました。既に書店店頭に並び始めていることと思います。

ところで、この本は書店ではどこに並んでいるでしょう? 哲学思想の棚でしょうか? それとも歴史の棚でしょうか? 一つの鍵となるのが書籍に付いているCコードです。

本書の場合は「0022」、つまり「外国歴史」、書店の棚で言うなら「歴史(世界史)」の棚になります。

ところで、以前にこのダイアリーで取り上げtら『哲学の女王たち もうひとつの思想史入門』のCコードは「0010」なので「哲学」になります。書店でも「哲学」あるいは「哲学・思想」の棚になるでしょう。

以前のダイアリーでは、この『哲学の女王たち』の中に取り上げられている女性の一人がヒュパティアであると書いたわけです。そうなると、この両書は書店では隣同士で並んでいてくれると嬉しいのですが、Cコードに従うと別の棚に置かれてしまいます。

難しいところですね。『哲学の女王たち』に登場する女性に関する本が残念ながら日本ではそれほど出版されているとは思えません。すぐに見つかりそうなのは、エリオット、アーレント、ボーヴォワールくらいでしょうか。これらを一堂に会してフェアなんて企画しても面白そうですが如何でしょう?

そう言えば、ヒュパティアについて調べていましたら、こんな映画に行き当たりました。10年ほど前のスペイン映画です。この映画の主人公がヒュパティアです。残念ながらあたしは未見の作品です。スカパー!などで放送されたら是非見たいと思います。

似て非なるもの

あたしの勤務先の、売れ行き良好な語学参考書の一つに『今日からはじめる台湾華語』というのがあります。中国語の語学書はカラフルで安いものがたくさんある中、本書は決して安いものではありません。しかし、売れているのです。

ところが、最近書店の店頭でこんな本を見かけました。

今日から話せる台湾華語』です。正式には『小飛さんの今日から話せる台湾華語』というらしいのですが、パッと見には「小飛さんの」が目立たないので、非常によく似たタイトルの語学書です。

どちらも台湾華語の本ですから、書店ではすぐそばに置いてあります。装丁も異なると言えば異なりますが、赤系の色合いですから、うろ覚えで買いに来たら迷ってしまいそうですね。

文庫化されました

西加奈子さんも『』の中で引用していた『テヘランでロリータを読む』が「河出文庫」の一冊となって刊行されました。

自社の単行本が他社の文庫に生まれ変わるというのは、その作品が愛されているという証拠でもありますが、どうして自社で文庫化できなかったのかと忸怩たるものがあります。

それにしても、この河出文庫の装丁は如何でしょう? あたしは最初、どうしてマトリョーシカ人形なのだろう思ってしまいました。見えませんか?

もちろん単行本の装丁への敬意が感じられる装丁ですが、かなり印象が異なりますね。より身近な作品に感じられるのではないでしょうか?

そしてもうひと作品。

このところ新刊の刊行も相継いでいる台湾の作家、呉明益の『歩道橋の魔術師』が、同じく「河出文庫」となって刊行されました。

こちらも、あたしの勤務先のベスト&ロングセラー商品ですので、文庫になり更に売り上げを伸ばすことは間違いないでしょう。

装丁は、どちらも小説の舞台となった、かつて台北駅前にあった中華商場です。単行本では当時の写真を使っていますが、文庫の方はイラストに代わっています。このイラストは著者、呉明益さんの手になるものです。

このように他社から文庫が出るのは、なんとも言えない気分です。娘を嫁に出す父親の気持ちに近いのでしょうか? あたし結婚していませんし娘もいませんから、全く想像の域を出ませんが……

町中華ならぬ町本屋

先日お知らせしたミルハウザーと並んで、こちらも待ち望んでいた方が多かったと思いますが、イーヴリン・ウォーの『誉れの剣』第二巻『士官たちと紳士たち』がまもなく刊行になります。

第一巻『つわものども』が刊行されてから少し時間がたってしまいましたが、これだけの分量の翻訳ですから時間がかかるのはご容赦ください。そのぶん自信を持ってお届けいたします。第一巻の内容、覚えていらっしゃいますか? 読んでからしばらくたってしまったという方は、この機会に第一巻を今一度繙いてもよいのではないでしょうか?

さて、信販会社UCクレジットの会員誌『てんとう虫』の11月号が届きました。

今号の特集は「町本屋へ出かけよう」です。表紙は「リーディン ライティン ブックストア」です。本文の筆者は、目黒孝二、永江朗、和氣正幸の三氏。取り上げられている書店は、Title(東京都杉並区)、ブックスキューブリックけやき通り店(福岡県福岡市)、定有堂書店(鳥取県鳥取市)、往来堂書店(東京都文京区)、Readin’ Writin’ BOOK STORE(東京都台東区)、誠光社(京都府京都市)が写真入りで取り上げられています。

また「行ってみたい独立系書店」として、フリッツ・アートセンター(群馬県前橋市)、双子のライオン堂(東京都港区)、マルジナリア書店(東京都府中市)、今野書店(東京都杉並区)、隆祥館書店(大阪府大阪市)も出て来ます。

「大型書店の新しい試み」では、函館蔦屋書店World Antiquarian Book Plaza文喫HIBIYA CENTRAL MARKETが紹介されています。さらに「本屋のいろいろな形」として取り上げられているのは、八戸ブックセンターBOOK TRUCKBOOKSHOP TRAVELLERです。最後には山陽堂書店三月書房に関するエッセイも載っています。

ところで、この数年、「町中華」という言葉が知られてきました。チェーン店や流行りのラーメン屋ではなく、昔からあって家族で食べに行ったり、サラリーマンが一人で立ち寄ったりする、中華屋さんのことです。今回の「町本屋」も、そんな町中華という言葉からの連想で生まれた言葉でしょうか?

ATOKのAI変換で「みる」と入力すると「ミルク」とか「ミルフィーユ」が候補に出るけれど「ミルハウザー」はすぐに出て来ない問題について

今月末に刊行になる、スティーヴン・ミルハウザーの『夜の声』はこんな装丁です。

訳者あとがきで柴田元幸さんが書いていらっしゃいますが、原書は邦訳既刊の『ホーム・ラン』と合わせて一冊の短篇集でした。しかし、そのままのボリュームで日本語版を刊行するのは難しいということで半分に分け、『ホーム・ラン』『夜の声』として刊行することになったわけです。

『ホーム・ラン』を読まれた方は、この『夜の声』をまだかまだかと一日千秋の思いでお待ちいただいていたことでしょう。ですが、もうすぐです。来週末には書店店頭に並ぶはずです。

夜の声だらけ?

今月末に、スティーヴン・ミルハウザーの新刊『夜の声』が刊行されます。楽しみに待っているファンの方も多いと思います。

ところで「夜の声」でネット書店を検索すると同じタイトルの書籍がいくつもヒットするのに驚かされました。

未知谷の『夜の声』はナタリーア・ギンツブルグ(ナタリア・ギンズブルグ)の作品。創元推理文庫の『夜の声』はW・H・ホジスンの作品です。

日本人作家のものもあります。新潮文庫の『夜の声』は井上靖の作品。『夜の声』というタイトルの詩集も刊行されています。

その他にも現在は品切れになっている作品まで含めると、かなり多くの「夜の声」が出版されているようです。書店に注文される時は、くれぐれもお間違いのないようにお願いいたします。