2024年4月のご案内

2024年4月に送信した注文書をご案内いたします。

   

まずは春先の恒例、語学辞典のご案内。そして5月のNHK「100分de名著」が『魔の山』なので対訳本です。そしてこちらも毎月恒例の「今月のおすすめ本」です。また今年はベートーヴェンの第九初演から200年ということなので、『日本の「第九」』をご案内。

   

そして刊行当初から絶好調の海外文学、『恐るべき緑』が二回目の重版に入ったご案内です。さらに海外文学の好調は続いて、『別れを告げない』も重版が決定しました。また今月も語学書の重版が多くなりましたので、それだけでご案内しました。語学書と言えば新刊の『パンダに会いに行くための中国語』が最初から動きがよく、発売前重版となりました。

 

そしてそんな語学書のおすすめ本のご案内。最後に西洋美術館で中世写本の展覧会が始まるので、関連書のご案内です。

今日の配本(24/04/30)

小さくも重要ないくつもの場面

シルヴィー・ジェルマン 著/岩坂悦子 訳

父の再婚で新たに兄姉ができたリリ。一人が命を落とし家族を次々と悲劇が襲う。関係を模索する再構成家族の姿と秘密を詩的に描く。

スターリングラード(中)

ワシーリー・グロスマン 著/ロバート・チャンドラー、エリザベスチャンドラー 校訂/園部哲 訳

『人生と運命』の前編となる全3巻。チェーホフを思わせる詩情、人物と心理、情景の描写、戦争の現実が胸を打つ。文学史上の金字塔。

ほら話とほんとうの話、ほんの十ほど[新装版]

アラスター・グレイ 著/高橋和久 訳

静かな怒りと哀しみ、リアリズムとファンタジーが混淆した作風で現代スコットランド文学を代表する鬼才の短篇集。

いよいよGWという感じ?

世間では今日からゴールデンウィークに突入なわけですね。どこもたくさんの人出で賑わったことでしょう。そんなあたしも午後から横浜のみなとみらいへ行って来ました。

午後からと言っても、多摩地区のわが家からですと二時間近くはかかりますから、ちょっとした小旅行のような気分です。

そして、どうしてみなとみらいへ行ったかと言いますと、FM横浜のトークイベントのためです。「みなとみらいKINGDOM SPRING 2024」というイベントが開かれていまして、そこに『はなと学ぶ パンダに会いに行くための中国語』の著者はなさんが出演されるからです。

ちょうどワニブックスから著書を刊行された近藤さや香さん共々、イベント後にサイン会も行なわれたのです。お二人の著書は会場の上の下位にある丸善で販売されていたのですが、サイン会用の整理券配布もイベント前には満員御礼となってしまい、サイン会にも長い列が出来ていました。

サイン会の列に並んでいる人を見ますと、やはり日常的にFM横浜のお二人の番組を聴いているとおぼしき方々が多数並んでいるようでした。あたしはもっと近藤さん、はなさんの熱狂的なファンが集まるのかなと思いきや、もっと和やかな雰囲気の方が列を作っていたのが印象的でした。

ちなみに、整理券の関係もあり、サイン本を手にできなかった方への朗報です。イベント後でお疲れのところ、お二人には丸善の店頭販売用にサイン本も少しだけ作っていただけました

そんなGWの初日でしたが、帰路、例によって中央線が人身事故でダイヤが大幅に乱れておりました。

まさしくこういう方のための本です!

まずは、少し前にもご紹介した東京の郊外、小田急線とJR横浜線の町田駅前にある地元の書店、久美堂本店一階で行なわれているフェアです。

今回は中公文庫のフェアを開催中でした。前回、今年の一月のダイアリーで紹介した時は、岩波文庫のフェアをやっていたわけですが、今回は中公文庫です。

なかなか手堅いフェアです。そして、既に棚が傾いていますので、今回のフェアも好調なのでしょう。確かに中公文庫のラインナップは惹かれるものがありますから。

さて、話は変わって今朝の朝日新聞の声欄です。二枚目の画像のような投書が載っていました。

パンダ好きから中国語の学習を始めたなんて、嬉しいことを言ってくれるじゃないですか! そんな投稿主へお勧めしたいのが、新刊ながら既に二回の重版に取りかかっている『はなと学ぶ パンダに会いに行くための中国語』です。著者のはなさんは

NHK「中国語会話」に出演したことから、日本パンダ保護協会のパンダ大使を務める著者は熱烈なパンダファン。特にシャンシャンへの思いは強く、「中国に会いに行きたい!」との願いを実現すべく、中国語のレッスンを始めた。

ということで、この投稿主とまるで同じような学習動機です。そして

だが一般的なレッスンでは中国にパンダに会いに行く時に使えるフレーズがまったく出てこない。それなら、自分が旅に出ることを想定して必要な会話、単語やフレーズを集中して勉強した方がいいと思い立った。

と思い、本書を作られたわけです。パンダ好きから中国語を始めた方って多いのでしょうね。そういう方には、本書を是非手に取っていただきたいものです。

夕刊に二つ出ていましたよ

営業回りを済ませ帰宅。自宅で夕刊を開いたら、見覚えのある書影が目に留まりました。

右側の真ん中あたり、目にも鮮やかな黄色い本、これはガイブン好きの話題をさらった、ロシア文学の邦訳『穴持たず』です。これは、まさに怪作と呼ぶに相応しい一冊でしょう。

そしてもう一点、左側の記事。カフカの恋人ミレナがカフカに送った手紙を想像で小説に仕立てた新潮クレスト・ブックスの紹介です。その記事の中に、ミレナへ送ったカフカの手紙である『ミレナへの手紙』が紹介されていました。こちらは、あたしの勤務先の刊行物です。

この二冊はペアで販売すべき書籍ではないかと、少し前にこのダイアリーで書きました。この記事が出たことで、改めて『ミレナへの手紙』の注文が伸びてくれたら嬉しいです。

選択のパラドックス

少し前に光文社新書の『恋愛結婚の終焉』を読んでいました。曰く、恋愛と結婚は分けて考えるべき、恋愛・結婚・出産という三位一体の呪縛から解放されるべき、とのこと。

あたしのように生まれてこの方、既に半世紀以上、恋愛にすら行き着いていない人間には、三位一体の一つすら手に入れていないわけですから、恋愛と結婚を分ける、分けないなんて議論することすらできません。同書の議論からすると「アウト・オブ・眼中」な存在なのでしょう。

そんな同書を読んでいて、ふと目に留まったのが「選択のパラドックス」です。もちろん同書の論点は恋人や結婚相手を見つけるという文脈の中で語られているわけです、

現代社会では、選択肢が多くなると「自分はこんなことも決められない人間なんだ」と無力感を感じて選ぶのが難しくなり、選んだあとも「ほかにもっとよい選択肢があったのでは」と後悔が残りやすい、(P.195)

そして例に挙がっている実験が「ジャムの法則」として知られるものです。24種類のジャムと6種類のジャムを被験者に試食させ、どれくらい購買に繋がるかと調べたものです。結果は6種類のジャムを試食した方が高い購入率を示したそうです。

そして著者は次のように書いています。

世の中の商品やサービスの選択肢の幅は、むしろ一定程度に抑えられたほうが、消費者の心理的負担は少なく、かつ幸福度が高いことになります。(P.196)

この部分を読んだ時に、あたしは1000坪クラスの大型書店と最近ブームのセレクト型書店を思い出しました。あたしのような業界人、そして普段から本に親しんでいる人にとっては、大型書店の蔵書量は魅力的で、何時間いても飽きない宝の山に感じられるわけですが、そういう人間はごくごく少数なのでしょう。大多数の人にとっては、あまりの物量に圧倒されてしまい、自分の読みたいものが捜し出せない状態に陥っているのではないかと思うのです。

人は認知エラーを起こすので、選択肢が多いとますますエラーが頻繁に起きてしまうようです。となると選択肢を最初から絞っておくのが手っ取り早い解決方法です。ただ選択肢を絞ると言っても、自分ではどう絞ってよいのかわからない人も多いことでしょう。そこで書店員があらかじめ絞っておいてくれるセレクト型書店が昨今は盛り上がっているのではないか、と思います。