併売どころかセット販売でしょ?

新潮社のクレスト・ブックスから『あなたの迷宮のなかへ カフカへの失われた愛の手紙』という新刊が刊行されました。今年はカフカの没後100年にあたりますので、それを意識しての出版でしょう。本書の内容を公式サイトから拾ってみますと

没後百年を迎えるカフカの恋人として知られるチェコ人女性ミレナ。カフカから彼女への手紙は後に出版されたが、失われてしまったミレナからの手紙には何が書かれていたのか。作家への愛と情熱、父や夫との葛藤、そして自身の孤独と叫び。別離後もカフカを慕い続け、強制収容所で絶命した女性の魂を、現代の作家が甦らせる。

とあります。ここに書いてある「カフカから彼女への手紙は後に出版された」とあるのが、あたしの勤務先から刊行されている『ミレナへの手紙』です。こちらは

カフカは手紙に日付を入れる習慣がなかった。ゆえに手紙の配列を間違えて読むと、二人の関係、手紙の持つ意味がまったく変わってくる。カフカが恋人宛てに書いた、新編集による書簡集。

という内容になります。つまり『ミレナへの手紙』はカフカ自身が書いたものを編集したものであるのに対し、『あなたの迷宮のなかへ』は恐らく『ミレナへの手紙』をベースに作家が想像によって復元したミレナからカフカへの手紙なわけです。

一方はノンフィクション、一方はフィクションではありますが、この二冊は両方揃えて一つのまとまりになる、そういうペアではないでしょうか。書店員の皆さまには、ぜひ両方並べて展開していただければと思います。

2024年2月のご案内

2024年2月に送信した注文書をご案内いたします。

   

まずはいつもの通り、「今月のおすすめ本」です。そしてノーベル文学賞受賞作家グルナの『楽園』が順当に売上を伸ばしています。SNSで盛り上がり、いきなり注文が殺到した『歌詞のサウンドテクスチャー』、そして同じくSNSで話題の『穴持たずども』もそれぞれ重版が決まりました。

 

続いては文庫クセジュ。新刊の『ビザンツ帝国の歴史』が早々と重版が決まり、朝日新聞読書欄の記事がきっかけで注文が伸びた『ポピュリズムに揺れる欧州政党政治』の二点が重版になりました。

  

最後に月の後半に来て語学書のご案内。まずは「今月のおすすめ本[語学書]」です。そしてNHKテキストの広告は、年度初めの4月号なので全言語に掲載予定で、それだけで別にご案内をしました。ラストは『ニューエクスプレスプラス ウズベク語』が刊行早々に重版となりましたので、そのご案内です。

今日の配本(24/03/01)

手はポケットのなか
コーダとして生きること

ヴェロニク・プーラン 著/志村響 訳

きこえない親のもとに生まれた、きこえる子どもChildren Of Deaf Adults、略してCODA(コーダ)。時として、手話と音声言語のバイリンガルとなること、幼くして親の通訳者の役割を担わされることが運命づけられもする。きこえる世界ときこえない世界、音声言語と手話を行き来する著者が、家族への葛藤と愛を強烈なユーモアとともに描く自伝的エッセイ。

今日の配本(24/02/29)

房思琪の初恋の楽園

林奕含 著/泉京鹿 訳

高級マンションに住む13歳の文学好きな美少女・房思琪は、憧れの国語教師から性的虐待を受ける関係に陥り…。台湾の実話に基づく衝撃作。解説:小川たまか。

スターリングラード(上)

ワシーリー・グロスマン 著/園部哲 訳

『人生と運命』(みすず書房)の読者が待ち望んだその前編となる全三巻。人情味あふれる物語が居間のランプに照らされ、戦場の火炎に炙られる。市民と兵士に、さらにはドイツ兵にも同情の視線が注がれたポリフォニックな群像小説。

すばらしい孤独
ルネサンス期における読書の技法

リナ・ボルツォーニ 著/宮坂真紀 訳

本書はおもにルネサンスの人文主義者たちを読者という観点から捉え、彼らの読書行為と著作との関係を読み解こうとする試みである。読書と創作をめぐる著者の考察は、論述の対象を特定の著者や作品に絞り込むのではなく、読書と創作を切り口にルネサンスの人文主義者たち(そして、プルーストまで)を有機的に結び付けているところに既存の研究とは異なる特徴があり、ルネサンスと古典との関わりに新たな視点を与えてくれる。

今日の配本(24/02/27)

グローバリスト
帝国の終焉とネオリベラリズムの誕生

クィン・スロボディアン 著/原田太津男、尹春志 訳

本書は、1920年代から現在に至るまで百年にわたる国際政治経済史を背景に据えながら、この40年、散々語り尽くされてきたように思われるネオリベラリズムの起源と発展に関して、理論的にも歴史的にも新たな光を当てる試みである。

新版 〈賄賂〉のある暮らし
市場経済化後のカザフスタン

岡奈津子 著

ソ連崩壊後、独立して計画経済から市場経済に移行したカザフスタン。国のありかたや人びとの生活はどのような変化を遂げたのだろうか。

今日の配本(24/02/26)

フランス教育システムの歴史

ヴァンサン・トゥロジェ、ジャン=クロード・リュアノ=ボルバラン 著/越水雄二 訳

フランスでは平均して15年間、学校教育を受ける。子どもから青年期までの人間形成に重要な時期を、家庭や教会や労働の場から、学校という専門機関に委ねるようになるには、いかなる過程を経てきたのだろうか。本書は、古代ギリシアから現代まで、教育システムが形づくられた過程を、七つのテーマに沿って多面的に浮き彫りにする。

今日の配本(24/02/22)

中国語文法〈補語〉集中講義

洪潔清 著

中国語学習者にとって最大の難関ともいえる〈補語〉。その難関を乗り越えるために、1冊まるごと補語に特化した参考書を作りました。全12章のうち前半は初級レベル(HSK3級・中検4級程度)、後半は中上級レベル(HSK4~5級・中検3~2級程度)とし、【結果補語】【様態補語】【数量補語】【方向補語】【可能補語】【程度補語】それぞれの要点をすっきり整理。空欄補充、語順整序、日文中訳、中文日訳など、豊富な練習問題でみっちり鍛えられます。音声無料ダウンロード付。

ゲルマン諸語のしくみ

清水誠 著

国際語として広く使われている言語から、ユネスコ指定の危機言語に及ぶ、驚くほど多様な古今東西のゲルマン諸語の特徴を、発音や文法など、さまざまな観点から詳しく解説。アイスランド語/アフリカーンス語/イディッシュ語/英語/オランダ語/フリジア語/スウェーデン語/デンマーク語/ドイツ語/ノルウェー語/フェーロー語/ルクセンブルク語ほか、ペンシルヴェニアドイツ語、スイスドイツ語など各地域方言、また古英語や中英語、ゴート語など、時代による変遷も扱う。

ワイルドランド(上)
アメリカを分断する「怒り」の源流

エヴァン・オズノス 著/笠井亮平 訳

2013年、米主要紙誌の特派員として十年に及ぶ海外生活から帰国した著者は、熟知していたはずの祖国アメリカが大きく変貌してしまったことに驚愕した。自分が浦島太郎になったかのような感覚を覚えるほどに、そこかしこで変化が起きていたのだ。その変化をもたらしたものは何なのか。トランプを大統領にまで押し上げたうねりの源はどこにあるのか。混沌の中から何か新しいものが生み出されようとしているのか。それを突き止めようと取材を開始する。

雨だ……

関西ツアー最終日。

生憎の雨のようです。なおかつ、昨日までの二日間が春のようなも通り越し、初夏のような陽気になったのとは対照的に、協からはまた冬が戻ってくるそうです。

まだホテルの部屋の中にいるので、外へ出たらどんな感じなのか、寒さもまだ実感できていませんが、一応は覚悟しておいた方がよいでしょう。

とはいえ、重たい書類をもって歩き回るわけですから、多少寒いくらいの方が営業にとっては快適と言えます。雨はイヤですが、駅直結、出来るだけ外へ出なくてもよい書店を中心に回れば、なんとかしのげそうです。

でも、京都は駅直結の書店、濡れずに行ける書店が少ないどころか、ほとんどないので困りものです。掘ったらいろいろ出て来る土地柄なので、地下街も発展しないのでしょうか。

何はともあれ、今日で終わりですから精一杯頑張りますか……