春号が出来ました

あたしの勤務先が年に四回発行している無料のPR誌『白水社の本棚』、その2024年春号が完成しました。

ちなみに、年四回とは1月、4月、7月、10月の刊行です。この刊行はよいとして、号数の名付け方に違和感を覚えるということは、以前にこのダイアリーで書きましたので、ここでまた語るのはやめておきます。

さて、今号の巻頭は「カフカ」です。今年が没後100年にあたるのでタイムリーな記事だと思います。後は人気連載記事と近刊・新刊のご案内です。

「えーっ、そんな冊子を出していたの?」と初めて知った方もいらっしゃると思います。そのような方はこちらをご覧あれ!

2024年3月のご案内

2024年3月に送信した注文書をご案内いたします。

   

まずは毎月恒例「今月のおすすめ本」、そして重版になった「ゴート語入門」「恐るべき緑」、そしてNHK「100分de名著for ユース」で取り上げられていた「シュリーマン」です。

   

更に「100分de名著」は5月が「魔の山」ですので、「対訳ドイツ語で読む「魔の山」」、同じくNHK絡みでは「みんなの手話」に新刊「手はポケットのなか」の広告を出しますので手話関連本のご案内。またNHKで「完全なる問題作」というドキュメンタリーが放送されることになり、そのテーマが「キャッチャー・インザ・ライ」ですので、同書の案内です。そしてSNSで話題になり重版をした「歌詞のサウンドテクスチャー」が再重版となりました。

  

3月も後半になりまして、こちらも毎月恒例「今月のおすすめ本[語学書]」です。今回は広告掲載が多いのと重版出来もが多いので「重版できました」は別のご案内となりました。また上述「完全なる問題作」の反響がとても大きかったので、改めて同報ファクスでご案内をしました。

出来ました!

赤いバインダーの上に置いて撮ったので、却って見えにくくなってしまったきらいがありますが、2024年版の辞典・語学書カタログが出来上がりました。

この数年、多くの出版社が紙のカタログ、目録を廃止していますが、あたしの勤務先は、いまだ紙のカタログを作っています。この後、5月末から6月初めころには、文庫クセジュとUブックスを収録した新書カタログ、夏にはそれ以外の単行本を掲載しているブックカタログも出来上がってきます。

パラパラとページをめくると、改めていろいろな言葉、言語の参考書を出しているのだなあと思ってしまいます。それが売りであり、柱であるのは重々承知していますし、社内の棚にズラリと並んだ刊行物を見て、ふだんから実感はしているはずですが、カタログで見るのは、またちょっと違う感慨があるものです。

今日の配本(24/03/29)

別れを告げない

ハン・ガン 著/斎藤真理子 訳

済州島4.3事件を背景に、いま生きる力を取り戻そうとする女性の友人同士の再生の物語。待望の最新長篇。韓国で発売後1か月で10万部突破!

名前が語るお菓子の歴史 [新装版]

ニナ・バルビエ、エマニュエル・ペレ 著/北代美和子 訳

伝統と革新が織りなすフランス菓子に「名前の由来」からアプローチ。美しい名に隠された意味を知れば、お菓子がいっそう味わい豊かに。

今日の配本(24/03/28)

フランス知と戦後日本
対比思想史の試み

宇野重規、伊達聖伸、髙山裕二 編

なぜ読まれたのか?フランス文学に革命史研究、戦後知識人の輝き、そして68年の記憶。戦後をフランス知というレンズで捉え直す。

「喜劇」の誕生
評伝・曾我廼家五郎

日比野啓 著

松竹新喜劇の「伝統」を創った元祖・日本の喜劇王! 曾我廼家五郎の人生と作品を跡づける、初の本格評伝。「泣き笑い」の日本近代史。

ジャック・デリダ講義録 時を与えるⅡ

ジャック・デリダ 著/藤本一勇 訳

ハイデガーに帰ることで、時間と存在よりも根源的な、贈与そのものが追究される──。1978〜79年に行なわれた9つの講義を収録。

今日の配本(24/03/27)

義とされた罪人の手記と告白

ジェイムズ・ホッグ 著/高橋和久 訳

17世紀末のスコットランド、地方領主コルウァンの二人の息子は、両親の不和により別々に育てられた。明朗快活で誰にでも愛される兄ジョージと、厳格な信仰をもつ母親のもとで陰鬱な宗教的狂熱の虜となった弟ロバート。自分が神に義認されあらゆる罪を免れていると信じるロバートは、17歳の誕生日に出会った不思議な力を持つ人物に唆されるまま、恐ろしい行為を重ねていく。変幻自在にその姿を変える〝謎の友人〟の正体は? そして政治的対立に揺れる議会開催中のエディンバラで、兄弟の宿命的な確執はついに衝撃の結末へ……。奇怪な事件の顚末が異なる視点から語られ、重層するテクストが読者を解釈の迷宮へと誘う。小説の可能性を極限まで追求し、アラスター・グレイらの現代作家にも多大な影響を与える、ゴシック小説隆盛の掉尾を飾る傑作にして早過ぎたポストモダン小説。(『悪の誘惑』改題)

運び屋として生きる
モロッコ・スペイン領セウタの国家管理下の「密輸」

石灘早紀 著

モロッコ北部には、セウタととメリリャという二つのスペイン領(飛び地)がある。このうちセウタの国境地帯では、1990年代から2020年ごろまで、周辺に住むモロッコ人による「密輸」が行われていた。密輸というと違法薬物の取引や密漁、はたまた国境をまたいだ人身売買といったおどろおどろしいイメージを抱きがちだが、本書のテーマである「密輸」は、モロッコへの商業輸入に対して通常課される関税を逃れているものの、スペイン・モロッコ当局から容認・管理されている越境貿易の一種である。この「密輸」はセウタからモロッコに食料品や衣料品を運ぶものであり、最盛期にはおよそ40万人がかかわっていたとされる。

奴隷制廃止の世紀1793-1888

マルセル・ドリニー 著/山田芙美、山木周重 訳

欧州主要列強がアメリカ地域の植民地で展開した奴隷制はどのようなプロセスを経て廃止されたのか。論争や闘争をまとめた入門書。

こんなところに登場しているとは!

どれくらいの方が見たのかわかりませんが、先週木曜日の晩にNHKで放送された「完全なる問題作」に『キャッチャー・イン・ザ・ライ』が取り上げられまして、大木に反響を呼んでいます。注文がかなり殺到しています。

とても嬉しい悲鳴ですが、この番組は今回から始まったもので、次回が軼放送されるのか、取り上げられる問題作は何なのか、いまのところ全く明らかになっておりません。

それはさておき、『キャッチャー・イン・ザ・ライ』、年配の方には『ライ麦畑でつかまえて』の方が馴染みのある名称だと思いますが、ありがたいことに、この本はずーっと売れていますね。

そんなことを思っていたら、土曜の深夜に放送されているドラマ「セレブ男子は手に負えません」(テレビ朝日系)が先週最終回を迎えました。どんなドラマ化ということはおいておきまして、最終回に主要登場人物の一人、井手上漠が演じるモデルのルカがソファーに座って本を読んでいるシーンがありました。

上に引用したのは、同ドラマの監督さんのX(旧Twitter)ですが、そこに種明かしが書いてあります。「題名がわかるところをカットせざる負えなかった」とありますが、背の部分も表紙も映っていましたから、よく見れば『ライ麦畑でつかまえて』だとわかったはずです。

手にしていたのは、Uブックス版ですが、表紙カバーにイラストがある、ずいぶん前の版になります。ちょっと懐かしかったです。

ちなみに、このシーンは、ちょっと切ないシーンでもあります。