アニバーサリーな……

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「ああはなるまい」と思っていた、よくない営業になりつつあるような気が……

あたしが営業部に配属になったのは入社して10年、いや112年目だったでしょうか? ですので、その時点で既に「初々しい新人」という風ではなかったのですが、それでもまだまだうぶな素人営業マンでした。

そもそも人づきあいが苦手で、出来るだけ人と接しない仕事に就けたらとずっと思っていた人生だったので、絶対に向いていない職業(職種)は「接客業や営業職」だと思っていました。そんなあたしが営業部に飛ばされるなんて……

それでも業務命令ですし、編集部の仕事に行き詰まりを感じていたので(これについては、また機会がありましたら吐露します)、営業部に配属になったのはよい気分転換、心機一転だったと思います。

で、書店を回り始めた頃、当然、向かう先の書店には別の出版社の営業さんがいたりして、書店の人と親しげに話しているのを見て、「いずれあんな風に仲良くなれるのかなあ」なんて幼心に思ったものでした。あたしみたいに、なかなか人と打ち解けられず、人見知りがちな性格だとやはり営業という仕事は難しいかなあ、などと思いながらの営業回りでした。

ただ、その当時、他の社の営業の人を見ていた感じたこと、心に決めたことが一つありました。よく見ていると、ベテランの営業マンが店長など書店の中でも偉い人と親しげに話をしながら注文を取ったりフェアの話をまとめていたりしていることが時々ありました。お互いに若い頃から知っていて、互いに経験を積んでそれぞれ現在の立場があるのはわかります。

しかし、実際に書店で棚を担当している人と話すと、「現場の事情を無視して店長が勝手にフェアを決めちゃった」「バカみたいにたくさんの数を注文された」といった愚痴もよく耳にしたのです。そこであたしは、このあと何年営業をやることになるかわからないけど、自分のよく知っている人が店長になったからといって、その人とだけ話をして現場を無視した営業マンにはなるまい、ということを密かに心に誓ったのです。たとえ歳の差がかなり開いた若い書店員さんであっても、しっかり話をしてフェアを打診してみたり、本の展開を提案してみたりしよう、という気持ちでずっとやって来ました。

そんな誓いが最近崩れているような気がするのです。なんとなく、店長とだけ話をして、注文をもらって、フェアの案内をして、といったケースが増えているということに自分でも気がつきました。

そりゃ、気の合う店長とだけ話をして注文が取れれば営業としては楽です。でも、これについては、ちょっと言い訳をさせてください。

書店のせいにするつもりはないのですが、昨今の書店って、店長以外と話をしても仕事にならないことが多いのです。つまり店長以外はアルバイトで発注する権限も何も持っていないのです。一応は人文担当とか、文芸担当といった担当分けはあるようですが、あくまで日常的な棚詰めとか棚の整理を担当しているだけで、その棚を々作っていこうか、こんど面白そうな新刊を仕掛けてみようか、といった仕事はしていない場合が多いのです。

これではこちらとしても話になりませんので、しかたなく店長と話をすることになるわけです。社員を減らしてバイトで回す、というのが書店では常態化しているのですよね。これでは個性的な棚作りや創意工夫などなかなか出来ないでしょう。ただ、それを言ったら出版社だって人手不足で、十全に書店に顔を出せているかというと極めて疑わしいところですが……

ちょっと作ってみました

ちょっと前に、ちくま文庫の『ハーメルンの笛ふき男』と一緒に『ハーメルンの笛吹きを追え!』を売れないかなあと書きました。

実は『ハーメルンの笛吹きを追え!』は在庫がそれほど残っていないので、大々的に宣伝、アピールするわけにもいかないので、とりあえずこういうことを面白がってくれそうな書店員さん向けに注文書を作ってみました。いかがでしょうか?

そもそも文庫と単行本、人文と文芸という具合に何から何まで異なる二つの書籍です。文庫と単行本が整然と分けられている大型店では一緒に並べるのは難しいと思いますから、こういった取り組みは街の小さな本屋さんの方がやりやすいのかもしれませんね。

とはいえ、ちくま文庫がこれだけ売れているのであれば、絵本など「ハーメルンの笛吹き」関連書籍を集めたフェアなんてやっても面白いと思います。

そろそろラ・フランスの季節かな? となるとこの曲

今宵の文化放送系「乃木坂46のの」はMC梅沢美波と4期生の矢久保美緒と北川悠理がゲスト。

30分の番組中に必ず曲が2曲かかるのですが、1曲目は北川セレクトの「自由の彼方」、これは夏の全国ツアーで北川参加したユニットで歌った曲だからという理由による選曲。そして2曲目が矢久保選曲の「やさしさとは」でした。

「秋になると聞きたくなる」と語っていましたが、確かに冒頭のラ・フランスって秋が深まると店頭に並ぶフルーツですよね。

それにしても、矢久保、よい選曲じゃないですか、見直しました。この曲は乃木坂46の全曲中でも隠れた名曲としてファンの人気も高い一曲ですし、なによりななみんの数少ないセンター曲、あたしも大好きです。歌唱メンバーも非常にバランスがよいですね。

久しぶりに聴きましたが、やはり佳曲です。「自由の彼方」もさゆの卒業発表を受けて聞くと泣けてきます。

H&M、きのこ祭?

タイトル、H&Mと言っても、某北欧系のアパレルメーカーのことではありません(笑)。そもそもアパレルメーカーがきのこっておかしいですよね?

で、閑話休題。

書店店頭でこんな本を見かけました。みすず書房の『きのこのなぐさめ』です。海外文学作品のようですが、著者は文化人類学者でもあるのですね。非常に気になる一冊です。

愛する伴侶を失った主人公が、きのこを通して再生する物語なんだそうですが、内容紹介を読む限り、ちょっとした「きのこ百科図鑑」のような趣が感じられます。それにしても、愛する人を失った人が何かをきっかけに再び活力を取り戻すというストーリーはよくある話ですが、その「何か」というのは動物だったり趣味だったりすることが多いと思います。今回のようなきのこというのは寡聞にして他には知らないのですが、何かしら趣味を持つ、情熱を捧げられるものが見つかれば人は生きていけるのですね。

ところで、きのこと言えばあたしの勤務先でも『昼の家、夜の家』という海外小説を出しています。ノーベル文学賞の有力候補の一人、 オルガ トカルチュクの長篇で、タイトルからはわからないでしょうが、こちらもきのこ小説なんです。

本書が刊行された当時、日本の書店ではちょっとしたきのこブームが起きていまして、本書もそんな「きのこフェア」の時にラインナップの一つとして並べていただいた記憶がありますし、そのお陰もあってよく売れました。きのこブームはその後落ち着きましたが、相変わらず根強い人気を誇っているのは事実ですから、何かの弾みでまたブーム到来となるかも知れませんね。

それはともかく、ひとまず『きのこのなぐさめ』と『昼の家、夜の家』で「きのこ祭」は如何でしょうか? はい、H&Mとは両出版社の頭文字のことです。

ところで、かつての「きのこブーム」時に書店店頭でフェアをやっていたころ、並んでいたのはきれいなきのこの写真集や図録のようなものがメインでした。読み物も並んではいましたが、やはり読者も極彩色のきのこの図版に惹かれているようでした。

そんな中、たまたまあたしが読んでいた岩波文庫の『和辻哲郎随筆集』の一節に「茸狩り」という一篇がありました。京都近郊へきのこ狩りに出かけたことを綴った味わい深い一篇です。「これも並べればよいのに」と思いましたが、さすがに書店の方のアンテナに引っかかってこなかったと見えまして、並んでいる書店は皆無でした。

ちなみに、みすず書房ではほぼ同時に『マツタケ 不確定な時代を生きる術』なんて本も刊行しています。こちらは海外文学ではなく、「マルチスピーシーズ民族誌の成果」だそうです。あくまでマツタケは話の導入のようです。

今年は2名ですよね?

今年もノーベル賞の季節がやって来ました。文学賞は10日に発表されるそうですね。

昨年、スキャンダルに見舞われて発表を見送ったノーベル文学賞、今年は昨年分と合わせて2名が受賞するとのことです。日本のニュースでは相も変わらず村上春樹ですが、世界に目を向ければもっと他に候補者はいるものです。

オッズを見てみますと、第一位はアンネ・カールソン、詩人です。ちょっと調べてみましたが、邦訳はないようですね。第二位がマリーズ・コンデ、フランスの作家です。かなりの高齢のようですので取らせて上げたいなあと思います。翻訳も何冊かあるようですが、果たして出版社に在庫があるのか、そこが問題です。

  

第三位に残雪。中国の作家です、あたしの勤務先から3冊出ています。新書判なので、受賞したときのフェアでも売りやすいと思います。その次に村上春樹の名前が挙がっていますが、上位3名はいずれも女性ですね。今回は女性が取るのでしょうか?

 

そして、9番目に挙がっているのが、オルガ・トカルチュク。邦訳は二点、いずれもあたしの勤務先の刊行物です。このあたりが受賞してくれると、勤務先的には嬉しいのですが……

近日中に行きたいなあ、と思いました。

TBS系の情報番組「王様のブランチ」でコレド室町テラスにオープンした誠品生活が紹介されていました。

日本でも流行りのセレクト型書店、たぶん多くの日本人は「代官山蔦屋じゃん!」という感想を持つのでしょうが、話によると順序が逆で、代官山蔦屋が台湾の誠品生活をモデルにして作られたものなのだとか。本当なのかガセなのか知りませんが、そんな話を聞きました。

ちなみに、更に未確認情報ですが、誠品生活も、もともとは創業者が日本留学時代に六本木の青山ブックセンターを見て「こんな書店を台湾に作りたい」と思って、帰国後に始めたものなんだとか。その青山ブックセンター六本木店は既になく、新たなコンセプトの文喫になってしまっています。書店業界の栄枯盛衰ですね。

それはともかく、やはり台湾の書店だけあって、台湾の本や台湾に関する書籍も充実しているようです。番組の中でも紹介されていましたが、あたしも中国へ行ったときはよく本を買っていましたので、非常に興味をそそられました。

そう言えば、かつて台湾へ行ったときに、本場の誠品書店、どこのお店だったかは忘れましたが、台北で少しだけ入ったことがあります。既に日本にも1000坪超の書店があり、セレクト型、提案型と呼ばれる書店が出来ていたので、取り立てて目新しさは感じませんでした。

あたしの場合、大陸でも台湾でも本屋へ行ったら、向こうの古い街並みの写真集とか古典の注釈書とか、そういった自分の専門に直結するような書籍ばかりを探してしまうので、本屋としてどうかといった視点ではほとんど見ていないところがあります。

さて、番組では書籍売り場だけでなく雑貨売り場やレストランなども紹介されていて、どれも興味深く、やはりこれは行ってみないとならないなと思いを新たにしたところです。

が、たまたま書籍コーナーを紹介しているときに映った三枚目の写真、岩波書店の充実ぶりに驚きました。棚の高さは低めですが、これだけ岩波文庫が並んでいるのは壮観です。

それに引きかけ、あたしの勤務先の書籍はどのくらい並んでいるのでしょうか? 最近は台湾の小説なども刊行しているので、それなりに並んでいるとは思うのですが。

一緒に売れないでしょうかね?

ちくま文庫の『ハーメルンの笛吹き男 伝説とその世界』が売れているそうですね。

もうずいぶん前に刊行された本ですが、この事件のあった日にTwitterでそのことをつぶやいたら、それがあれよあれよという間にバズって、注文殺到となったようです。

筑摩書房が巧く仕掛けたのでしょうが、仕掛けたからといってバズるとは限らないのがネットの怖さでもあり面白さでもあります。

もちろん作品自体が名著であり、これまでもずーっと売れていたわけですから、バズる要素はあったはずです。それをうまく活かした出版社の戦略の妙ということなのでしょう。

ところで、ハーメルンの笛吹男の物語はよく知られた話ですので、関連書籍も多いでしょう。

ちなみに、あたしは小学校の時に学芸会の劇で、この物語をやった記憶があります。何の役だったのかは忘れましたし、もしかしたらあたしは出演していなかったかも知れませんが、とにかくやったということは覚えています。

で、類書もたくさんあるわけですが、そんな一冊があたしの勤務先から出ている『ハーメルンの笛吹きを追え!』です。これは小説です。

「ハーメルンの笛吹き」の話はとても有名。でもあの子供たちはいったいどこへ連れ去られたのか? 秘密の力を持つ少女が笛吹き男を追って子供たちを救出する素敵な冒険ファンタジー。

という内容です。ちくま文庫と一緒に並べたら売れますでしょうか?