12月 2019のアーカイブ
復活の日は来るか?
新刊『東ドイツ史1945-1990』が好調で、刊行早々で重版が決まりました。これといった類書がないというのも好条件、追い風になっているようです。
確かに、ナチスに関するものはありますし、統一ドイツを欧州情勢に絡めた本は数多く刊行されていますが、東ドイツの通史というのはあまり見かけないですね。
そんな東ドイツもの、あたしの勤務先ではかつて『監視国家 東ドイツ秘密警察に引き裂かれた絆』という書籍を刊行していました。東ドイツというとスパイとか秘密警察といったものにスポットをあてた書籍が多いような気がします。だからただの通史が好まれるのかも知れません。
通史と言えば、『20世紀ドイツ史』というものもあります。こちらは東とか西ではなく、20世紀のドイツ全体を扱ったものです。ナチの時代もあれば、東西分裂時代も扱われています。
と、ご紹介しましたが、この二冊、どちらも現在は品切れ、重版も未定です。ちょっと残念です。
今月のおすすめ本[2019年12月]
ご案内を二つ
花を召しませ?
なんか、久しぶりに土日の天気がよいような気がします。消費税アップ以降、今年の秋は土日というと天気が悪く、関東では何度も台風や集中豪雨に襲われ甚大な被害が出て、三連休どころではない秋でした。
秋はどこなのか、と思っている間に東京は晴れてはいますが真冬の寒さ、一気に冬将軍到来といった気分です。年々、春と秋が短くなっているような気がしますが、これはデータでも裏付けられるのではないでしょうか?
さて、最初の写真は昨日インスタにも投稿したわが家の近所の紅葉ならぬ黄葉です。団地の中には欅と銀杏がたくさんあって、現在は欅が落葉真っ盛り、遅れて銀杏も葉を落とすようになるでしょう。その前に一瞬の美しい風景を撮ってみました。来週になるともう葉が火なり落ちてしまっているのではないかと思います。
本当はもっとワイドに撮りたかったのですが、電信柱が邪魔をしていたのでこんな構図になってしまいました。やはり電線の地中化、電信柱の撤去はこんな郊外でも真剣に検討してほしいものだと、こういう時だけは思います。
そして二枚目はわが家の庭先の紅葉です。いや、紅葉と言うよりも茶葉と言った方がふさわしい色合いですかね。
母曰く、躑躅だそうです。「つつじ」なんて漢字でさらっと書けやしないのに、パソコンは便利ですね。勝手に「躑躅」と変換してくれます。そう言えば、つつじで思い出しましたが、以前京王線に乗っていたときに車内のディスプレイで駅の案内に「躑躅丘」と出たときは驚きました。なんのことはない、「つつじヶ丘」駅のことです。しかし、普段ひらがなで慣れ親しんでいる名称がいきなり漢字で表記されるとすぐには理解しづらいものです。
さて、樹木や葉っぱばかりでしたので、少しはお花をご紹介します。
まずは玄関先のパンジーです。三色スミレと呼ぶべきでしょうか? しかし、「ファビュラス」って書いてあります。パンジーの品種の一種なのでしょうか? あたし、植物には詳しくないのでよくわかりませんが、たぶん、そうなのでしょうね。
写真だと何色に見えるでしょうか? 実際には濃い紫色です。あたしの好きな色です。やんごとなき色です。乃木坂ちゃんのカラーはこんなに濃い色ではありませんが、やはり紫ですよね。
あたしは、基本的に紫色が好きで、藤色からこういった濃いものまで、どれも好きです。ブラウスとかネクタイなどを選ぶときも紫色を選びがちです。だからといって、あたしがやんごとなき身分であると言いたいわけではありませんし、それを気取るつもりもありませんが……(汗) いや、誰もそんなこと思っていないか?
最後はわが家の門の前のプランターに植わっているパンジーです。こちらも母曰く、ビオラという種類も混じっているそうですが、どれがどれなのか、あたしには皆目見当も付きません。
どうなのでしょう? やはり新聞配達の人にしろ宅配便の人にしろ、玄関先に花があると少しは心が和み疲れも癒されるものでしょうか? うちの母がそんな効果を狙って花を植えているとは思えませんが、ないよりはあった方が心も気持ちも上向くと思います。
写真で左側に見えている黒いフェンスがわが家の門で、プランターの上の方にインターホンと表札がある、というわけです。
日常に潜む不安感
少し前に『モンスーン』の著者、ピョン・ヘヨンさんが来日してトークイベントを行ないました。
その時点で、『モンスーン』は読んでいて、いわゆるフェミニズムと総称されるような韓国文学とは異なる、独特の怖さを持った作品に非常に魅了されていたので、トークイベントも楽しく聞きました。
その席上、ピョン・ヘヨンさんもそうですし、対談相手の金原瑞人さんも取り上げていた作品『アオイガーデン』を読んでみました。評判どおりの素晴らしい作品でした。原作は『アオイガーデン』『飼育場の方へ』という二つの短篇集で、そこから四篇ずつ選んで一冊にまとめたのが邦訳の『アオイガーデン』で、日本独自編集版ということになります。
原作二つ、『アオイガーデン』はややホラーテイストで、『飼育場の方へ』は日常的な題材という違いがあると訳者あとがきで触れられていましたが、最初の四篇と後の四篇でガラリと変わる感じはなく、どれも身近で起こりそう、起こっていそうな世界を描いていて、それでいてちょっとした不安感、足元の覚束ない感じがあって、身に迫ってきます。これらは『モンスーン』にも通じる世界ですね。
最初にも書いたように、現在の日本で韓国文学といえば女性の生きづらさを描いたような、いわゆるフェミニズム系の作品が評判を得ているようで、それはそれでおもしろく考えさせられるのですが、韓国文学はそればかりではないということももっと発信していかなければと、出版社の人間としては思います。パク・ミンギュさんのような男性作家もいますし、フェミニズムに飽き足らない人向けにも、もっともっとバラエティ豊かな作品が紹介されるといいなあと思います。
そんな中で、このピョン・ヘヨンさんの作品は誰にでも起こりそうな、それでいて自分の身に起こったら絶対嫌だなあと思う、そんな作品が多く、読後感が爽やかと清々しいといったものとは真逆ではありますが、是非読んでもらいたい作家だと、あたしは思います。