「早く結婚したい」と言います。

新潮新書『いい子に育てると犯罪者になります』を読んでいます。その中にちょっと気になった一節がありました。

非行少年は、不遇な環境で育っているため、「早く結婚したい」と言います。自分が温かい家庭で育ってこなかったので、温かい家庭を持ちたいのです。(同書182頁)

不遇な家庭で育つと早く結婚したがる傾向にあるということですよね? そうなのでしょうか?

あたしの場合、亡き父は浮気性で、母はかなり苦労させられたと思います。結果的に家庭を壊すまではいかなかったですけど、一時期は離婚も現実的な状態だったのを子供心に記憶しています。ただ、決して父親が家庭を顧みず、子供の相手もしないというわけではなかったので、想像されるほど悲惨な家庭ではなかったとは言えると思いますが……

そんな家庭で育ったあたしも、結婚はしたいなあと思いつつも、心の奥底で「自分にもあの父親の血が流れているわけだから、家庭を持っても決して家族を大事にできないのではないか」という恐れがあり、「自分も妻を省みず浮気をしてしまうのではないか」という恐怖心がずっとありました。だから、いまもって結婚もできないですし、恋人もできたことがありません。

正解なんてない事柄ですから、どちらが正しいとは言えないのでしょうけど、あたしはそんな風に感じました。

もうお一人も実は出していました!

あたしの勤務先、ノーベル文学賞受賞作品の邦訳を刊行していたということで、先週末から盛り上がっています。

売れない、売れないと言われる海外文学が年に一度盛り上がるチャンスなので、これくらいのお祭り騒ぎは許してください。

あっ、ここ数年はノーベル文学賞だけでなく、日本翻訳大賞という賞も生まれ、こちらも受賞すると書店店頭での動きが俄然よくなりますので、年に二回の僥倖ですね。

ちなみに、ノーベル賞は人物に対して贈られますが、翻訳大賞は作品に対して贈られます。さらに、ノーベル賞は故人には贈られないので、絶対に取れるはずと言われながら取れずになくなった作家も数知れず……

さて、今回盛り上がっているのはオルガ・トカルチュクですが、もう一人、今年の受賞者であるペーター・ハントケは、邦訳が品切れになっていたりして、書店でも手に入れるのは難しいと聞きました。その状況に変わりはないのでしょうか?

そんなハントケですが、ある書店員さんからの問い合わせで、あたしの勤務先からも一冊出ているのを知りました。

『ドイツ幻想小説傑作集』です。新書判の白水Uブックスの一冊ですが、もう品切れで、ここ何年も目にしていません。もちろん、勤務先には原本として本は存在していますが……

で、写真がそれです。確かに書店店頭ではほとんど目に入ることはないですよね。表4に収録作品のリストが載っているのですが、ご覧ください、確かにハントケの名前があります。いまさら重版ということはありませんが、ちょっと惜しい気もします。