うちのはちょっと間に合わないので……

昨日のダイアリーで、ヴァレンタインにはチョコと一緒に『ヴァレンタインズ』を贈ろう、と書いたのですが、実はもっと男性に贈ってもらいたい本があります。

あたしの勤務先の新刊『ヒョンナムオッパへ 韓国フェミニズム小説集』です。[注記:パソコンやスマホなどの画面ではわかりづらいと思いますが、タイトルは「ヒョンナムオッパ」がカタカナ、「へ」がひらがなです]

 

それこそ心の底からお薦めしたいと思っていますし、こういう本こそ女性だけでなく男性にも読んでもらいたいと思っているのです。しかし、チョ・ナムジュさん来日のタイミングに合わせての刊行なので(19日に新宿の紀伊國屋ホールでトークイベントがあります)、バレンタインデーには惜しくも間に合いません。うーん、残念!

そこで次善の策として、いま売れに売れているチョ・ナムジュさんの『82年生まれ、キム・ジヨン』をお薦めいたします。購入者の多くが女性のようですが、女性が買って彼氏や夫に読ませるのがお薦めです。

チョコと一緒にキム・ジヨン、如何でしょうか?

『ヒョンナムオッパへ』はホワイトデーのお返しに、男性から女性に贈ってもよいと思います。

全訳ではないのですね? そりゃそうか!

ちくま学芸文庫から『資治通鑑』が出ます。いや、もう出ているのかしら?

で、『資治通鑑』の邦訳というのは、たぶん手軽なものでは、かつて平凡社の『中国古典文学大系』全60巻の第14巻に入っていたものくらいしかなかったと思いますが、函入りの全集の一冊ですから、さすがに手軽とは言えませんね。ですので、こうして文庫のような形で読めるようになるのは嬉しいことです。

が、オリジナルの『資治通鑑』はそれなりの大著です。ご覧のように中華書局版『資治通鑑』を架蔵していますが、全部で20冊になります。筑摩の学芸文庫と言えば、『三国志』をはじめ、これまでもしっかり全訳の中国古典を出していますので、今回も日本語版で10冊くらいになるのかなと思ったところ、なんと一冊こっきりです。その辺はちくま学芸文庫版も心得ていて、ウェブサイトの紹介には

全二九四巻にもおよぶ膨大な歴史書『資治通鑑』のなかから、侯景の乱、安禄山の乱など名シーンを精選。破滅と欲望の交錯するドラマを流麗な訳文で。

と書いてあります。ちょっと残念な気もしますが、コンパクトに一冊でエッセンスを読めるようにした方が今の時代には合っているのかも知れませんね。

ちなみに、左の写真のように、わが家には『通鑑紀事本末』や王夫之『讀通鑑論』なども架蔵しておりました。我ながら、学生時代によく集めたものだと思います。残念ながら『国譯資治通鑑』は架蔵していませんが、上述の『中国古典文学大系』は全60巻を所持しています。

なお『資治通鑑』は「しじつがん」と読むのは改めて断わらなくともよいでしょうか? 「しじ」の方はまだわかりますが、なんで「つうかん」ではなく「つがん」なんでしょうね? そう言えば、中国古典には『通典』という書籍もありますが、これも「つうてん」ではなく「つてん」と読みますね。

2019年2月9日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

イノシシとどうつきあうか?

今朝の朝日新聞別刷beの記事です。

今年は亥年なのでイノシシに関する話題も多いですが、イノシシというと「畑を荒らした」「街中に現われた」といったニュースばかりで、あまりよいニュースを聞くことがないような気がします。干支に選ばれているくらいですから、日本人にとってもっと身近で親しむべき動物なんだと思いますが……

そんなイノシシとのつきあい方を考えるのにもってこいの一冊があります。『イノシシ母ちゃんにドキドキ』です。

本書の内容紹介をウェブサイトから引用しますと

日本初! 1年半にわたる野生のイノシシ一家との付き合いを、ユーモアたっぷりに活写します。舞台は、大分は高崎山の東麓にある著者の里山。2010年秋、竹山から著者を見下ろしている母イノシシに遭遇したのが発端。「五匹の仔猪も小さな尻尾をピンと立てて控えておったのじゃ。一、二時間黙って座ったままのワシに安心したのか、斜面をぞろぞろ降りて来て、ワシに向かって横並びに勢揃いしたんじゃわ。距離にして三メートル。ワシ、嬉しさでドキドキが高ぶるばかりでしたわぁ」 こうしてほぼ毎日の生態観察により、イノシシは「猪突猛進」の獰猛な動物ではなく、恐がり屋で、慈愛に満ちた生き物であることが判明。ウリ坊一匹ずつの個性や家族としての行動、他集団との関係、オスの行動、そしてサバイバル術を伝授する母イノシシの細やかな子育てぶり等を絶妙に語ります。とりわけ、母による群からの「追出し行動」の直前にみられる「仔猪全員による母親舐め」の儀式は感動的! 著者は、長年の精力的な自然環境保全活動により「大分に菊屋あり」といわれた名物爺さん。誤解にまみれたイノシシ観を一変させると同時に、農産物被害の考え方も併せて提言。図版多数収録!

といった具合です。いま読むべき一冊ではないでしょうか?

ヴァレンタインには『ヴァレンタインズ』

あたしには縁がないですが、来週はヴァレンタインデーです。書店回りをしていると、あちらこちらで、この時季ならではのチョコが売られていて、とても美味しそうです。チョコは大好きなので、自分のために買いたくなります(汗)。

そんなヴァレンタインですが、チョコだけでなく、手編みのマフラーを贈ったり、ネクタイを一緒にプレゼントしたりという女性も多いと聞きます。

ならば、本を一緒に贈るなんてどうでしょう? ぴったりの本があります。それが『ヴァレンタインズ』です。短篇集なので読みやすいと思います。ただし、贈る時にはご注意ください。

アイスランド出身の実力派による、珠玉の第一短編集。一月から十二月まで、一年の各月の名前が冠された12編には、夫婦や恋人たちの愛と絆にひびが入る瞬間が鋭くとらえられている。

というのが本書の内容です。そうです、「ひびが入る瞬間」にフォーカスを当てた作品集なのです。「こんな本を贈ったから彼との間に溝が出来た」と言われても困りますので、この点はあらかじめご注意ください。

記事や広告から我田引水

昨日の朝日新聞夕刊です。夏目漱石と熊本に関する記事が載っていました。

記事の後半に載っている『草枕』のモデルとなった「那美」さんについては『『草枕』の那美と辛亥革命』という本を、あたしの勤務先で出しております。

しかしながら在庫がない状態でして、重版の可能性はあるのでしょうが、今すぐにということにはなっておりません。せっかくこういう記事が出たのに残念です。

ウェブサイトには

父は自由民権派の闘士、養子は漱石の弟子前田利鎌、妹の夫は宮崎滔天。孫文・黄興・宋教仁ら亡命革命家を支援し、男女同権の志を貫き生きた一女性の、波乱の生涯を描き切る力作評伝。

という内容紹介が載っています。まさしく、今回の朝日の記事にドンピシャリの本だったのです。たぶん在庫があれば、小さくとも紙面の片隅で紹介されていたのではないでしょうか? うーん、残念。

続きましては、今朝の紙面、岩波書店の広告欄にご注目。

岩波ブックレットの『うつ時々、躁』が紹介されています。

その紹介文の中に「双極性障害」という言葉が見えるのにお気づきでしょうか。少し前に文庫クセジュで『双極性障害』を出したところです。

岩波ブックレットも文庫クセジュもどちらも書店ではそのコーナーにまとめておいてあることが多いですが、心理学などのコーナーに置いてもらえると効果的だと思います。

ジュンク堂書店高槻店>アマゾン?

関西ツアー中の出来事です。

ジュンク堂書店高槻店をお邪魔している時に、男子高校生二人がお店にやって来ました。店内をうろうろしつつ、一人がもう一人に対して言った一言が衝撃でした。

この本屋、でかくね? こんなでっかい本屋、初めてだよ。アマゾンより本、あるんじゃね?

なんて微笑ましい一言でしょう。

いや、君たちは地元の高校生だよね? 高槻駅の周辺には紀伊國屋書店と大垣書店があるから、今まではそちらに行っていてジュンク堂には来たことがなかったのかい?

そんな風に声をかけたくなりました。この男子高校生はかなり異色なのでしょうか? それとも今どきの高校生の平均的な本屋体験なのでしょうか?

だったらさあ、君たち、たまには梅田とか行くでしょ? 茶屋町にある丸善&ジュンク堂書店へ行ってみなさい、きっと腰を抜かすと思うから。

友好とは単純なことではありませんね

東京国立博物館で開催中の「顔真卿展」に関して、台湾新聞にこんな記事が載っていました。

左側は、開幕セレモニーの様子を伝えるもので、台湾故宮博物院から貸し出された宝物のことにも触れつつ、極めて友好ムード漂う記事になっています。

その一方で右側の記事は、大陸、台湾双方から国宝の貸し出しに対して疑義が呈されていると伝えています。このあたり、文物の海外、館外貸し出しについてはそれぞれの博物館や政府で法令が作られていて、それに則っているのだと思います。しかし、そこに政治的な思惑、外向的な駆け引きも絡むことが多々あるのも予想されます。

逆の立場で考えてみた場合、東京国立博物館が所蔵している伝世の名宝があったとします。それこそ常設展はおろか特別展で陳列されることもほぼないような逸品が海外の博物館に貸し出されたとしたらどう思うでしょうか?

外国人に見せる前に自分のところの国民に見せろ、と思うのは当然のことだと思います。日本人としては「よくぞ請来してくれた」と喜びたいところですが、一筋縄ではいかない問題なのでしょうね。

しかし、そんなことよりも、せっかくそんな紆余曲折がありながらも日本に来ているのですから、顔真卿展、早いとこ見に行かないとなりませんね!

2019年2月7日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

業界のこと2件@朝日新聞

昨日の朝日新聞に載っていた記事です。

既に報じられていたニュースですが、やはり朝日のような主要紙が取り上げるとインパクトも大きくなります。

記事にあるように、確かに賛否両論あるでしょうし、再販制がどうなってしまうのか、学術書(専門書)は今後も出版していけるのか、将来に対する不透明感は増すばかりです。

しかし、意外と業界外からの風にさらされることで低迷する出版界のブレイクスルーが起きるのかも知れませんし、これだけネットが盛んになっている現在、「紙」という媒体にどれだけこだわり続けていられるのか、ということも考えずにはいられません。

そんな出版界ですが、右は今日の朝日新聞です。

いま最も有名な書店員と言ってもよいのかもしれません、三省堂の新井さんが登場しています。

業界内の人間からすると以前から新井さんがやっていることであって目新しいものではありません。このタイミングで朝日新聞が大きく取り上げたのはどういう意図があったのでしょうか?

新井賞は極端だとしても、本屋大賞的なものは日本各地それぞれの土地で行なわれていますよね。そういう各地の書店員の奮闘ぶりも順次取り上げてくれるのでしょうか?

あれよあれよと重版です

新刊『我的日本 台湾作家が旅した日本』の紹介が続いたため注文が伸び、お陰様で重版となりました。

 

本書は台湾作家のエッセイということで、海外文学の棚に置いてある書店も多いですが、もし「紀行、旅エッセイ」という棚があるのでしたら、試しに置いてみては如何でしょうか?