4日遅れの……

ようやく、姪っ子からチョコが届きました。

「ようやく」なんて書くと、まるであたしが首を長~くして待っていたような印象を与えてしまいますが、別にそんなことはありません。

妹曰く、先週の土日は姪っ子が体調を崩していたとこかでチョコを作れなかったようです。で、この土日で作ってすぐに送ってきたようです。

ご覧のように、左の函入りはどうやら市販品。まだ手作りなどできない下の姪っ子が妹と相談して買ったのではないでしょうか? 右側の三つの袋が上の姪っ子が作ったとおぼしきチョコです。

でも、チョコと書きましたが、チョコではなくて、チョコレートケーキのようなものです。こういうの、正確には何と呼ぶのかわかりませんが、やや甘さが足りないかなという感じ、あえて大人向けにビターに作ってくれたのでしょうか?

短篇なら、ということで……

昨日の「よんとも」が、海外文学初めての人でも短篇なら取っ付きやすいからお勧め、という趣旨でした。おすすめの短篇集の中にはあたしの勤務先の『西欧の東』がありましたので、あたしも何冊かお勧めしたいと思います。

まずは『ヴァレンタインズ』です。アイスランドの作家オラフ・オラフソンの作品です。

全部で12篇ですが、それぞれのタイトルが「一月」「二月」と始まって、12篇ですので「十二月」まであります。各篇は男女の恋愛を描いているのですが、どれもこれも一筋縄ではいかない結末です。「どうしてその場面でそんなセリフ言っちゃうの?」「どうしてそんな行動を取るのよ?」と言いたくなるような、愛の終わりとまでは言えないまでも二人の危機を描いた作品集です。

続いてはアメリカの作品『神は死んだ』です。

冒頭の作品で、いきなり神様が野垂れ死にをしてしまいます。「えっ、どういうこと?」と思われた方は是非とも本書を読んでください。そして、神様が死んでしまうという設定、日本人にはピンと来ないかも知れませんが、キリスト教社会のアメリカ人にとってはきわめて深刻な問題のようで、続く各篇は神が死んだことによる人々の不安や社会の不条理が描かれます。「ああ、欧米人っては神様が死んでしまうとこんなふうになっちゃうんだ」と思えてきます。

三つ目はメキシコ系移民のアメリカ作家による『ミニチュアの妻』です。

どれこれも奇想天外な着想に満ちあふれた作品ばかりですが、代表して表題作「ミニチュアの妻」について紹介しますと、主人公はあらゆるものを小さくする技術を持った男性です。ひょんなことから彼の奥さんが小さくなってしまいました。もちろん彼には小さくした門を元へ戻す技術もあるわけですが、何パターンかある小さくする方法のどれを用いたかがわからないと元へ戻すこともできないのです。彼は自分の妻がどの方法で小さくなってしまったのかがわかるまで、まずはミニチュア化した妻が快適に暮らせるように、シルバニアファミリーよろしく家具などの調度品を作ってやります。実に快適な妻のためのミニチュアの家ができたわけですが、そんな妻が採った行動は……

他にもたくさんありますが、タイトルだけ挙げておきますと『ナイフ投げ師』『モンスターズ 現代アメリカ傑作短篇集』『キャサリン・マンスフィールド傑作短篇集 不機嫌な女たち』『歩道橋の魔術師』といったところが読みやすく、面白くて、海外文学が初めてという人にも取っ付きやすいのではないでしょうか?

クリント・イーストウッド?

昨日の「よんとも」はメモ帳を持参しなかったので、小橋さん、トヨザキ社長の軽妙なやりとり、ただ必死に聞くだけで何もメモを残せませんでした。返す返すもそれが残念です。

それはともかく、いくつか印象に残ったことと感想などを……

小橋さんが大好きな作家はエリザベス・ストラウトだそうで、昨日は短篇という縛りがあったので『何があってもおかしくない』を挙げていましたが、トークの中では姉妹篇と言ってよい『私の名前はルーシー・バートン』も是非読んでみてくださいと勧めていました。

またトレヴァーも挙げたのは『異国の出来事』でしたが、国書刊行会の《ウィリアム・トレヴァー・コレクション》はどれもお勧めとのこと。やはり好きな作家になると短篇長篇を問わず読みたくなるものなのですね。

そして欧米外にも優れた作家はたくさんいるという例としても挙がっていたのが『観光』のラッタウット・ラープチャルーンサップです。この中に主人公の「僕」が飼っている(父にプレゼントされた)ブタが出てくるのですが、そのブタの名前がクリント・イーストウッドです。そんなところでも人盛り上がりしたのですが、何の因果か、あたしの昨日のブラウスがブタ模様。イベント後にトヨザキ社長から開口一番「クリント・イーストウッドだ」と言われました。まさか、そんな話の展開になるとは思いも寄らず、不甲斐ない話ですが『観光』も未読なので単なる偶然でしかありません。狙ってチョイスしたのでしたらカッコよかったのでしょうが……

さて、既にTwitterなどでは小橋さんファンの方と見られる昨日の参加者の方の書き込みが賑わっていますが、いつもの「よんとも」に比べると会場の雰囲気がずいぶんと異なりました。いつもの「よんとも」はトヨザキ社長のファンやガイブン好きが集まるので、紹介された本も既に読んでいる人が多い印象でした。しかし、昨日は小橋さんのファンの方が多かったせいでしょうか、それほど海外文学に親しんでいない方が熱心に話を聞いている姿が印象的でした。

海外文学にこれまで触れてこなかった人に海外文学の面白さを広めたい、そういう「よんとも」の趣旨からすると昨日のイベントはまさに理想的な場になっていたのではないでしょうか。もちろん本好きな小橋さんのファンの方ですから、本に対する興味・関心はそれなりにあったようですので、あとはいかに海外文学へと導くか、その呼び水さえあればなだれ込むような方々ばっかりだったと思われます。

イベント後は、多くの方が紹介された本をレジに持って行っていましたし、複数冊購入されている方も多かったです。ガイブンの布教活動、大成功だったのではないでしょうか? あとは舞台でもドラマで映画でも構いませんから、小橋さんお気に入りの作品を是非小橋さんに演じていただきたいと期待しています。小橋さんが演じるのではなく、脚本や演出でも構いませんので、是非ともお願いします。

また一人改革派が逝く

朝、新聞を開いたら飛び込んできました。

毛沢東の元秘書・李鋭氏が亡くなったそうです。書棚を漁ってみましたら『中国民主改革派の主張 中国共産党私史』が出て来ました。岩波現代文庫からはもう一冊『無風の樹』というのも出ていますが、こちらは架蔵していませんでした。

毛沢東の周囲の人の回想録や手記などはいくつか出ていますが、改革派として最後まで筋を貫いた李鋭氏の死去は習近平の個人崇拝路線の現在、どういう意味を持つのでしょう? またこのニュース、中国国内ではどの程度の扱われ方なのでしょう?

2019年2月17日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

ガイブンが苦手な人でも短篇なら!

トヨザキ社長のライフワーク「読んでいいとも!ガイブンの輪」が本日午後、下北沢の本屋B&Bで行なわれました。今回のゲストは、女優・小橋めぐみさん、本当に海外文学がお好きなんだなあというのがよくわかる、あっという間の2時間でした。

今回は短篇特集でしたので、ひとまず小橋さん、トヨザキ社長お二人が挙げられた書目を以下にご紹介。

まずは小橋さんの推薦書籍を。内容紹介は各所の公式サイトから引用しました。

異国の出来事

ウィリアム・トレヴァー著/栩木伸明訳。国書刊行会。

南仏の高級別荘地、自由奔放な妻はおとなしい従順な夫を召し使いのようにあしらっている。しかし……夫婦の中に潜む深い闇を描く「ミセス・ヴァンシッタートの好色なまなざし」、一人の青年を愛した二人の少女が三十年後にシエナの大聖堂で再会する「娘ふたり」他、父と娘のきまずい旅、転地療養にきた少年とその母と愛人、新天地への家出、ホームステイ先での淡い恋、など様々な旅をめぐって静かな筆致で精密に綴られる、普通の人々の〈運命〉と〈秘密〉の物語。日本オリジナル編集による傑作選、全12篇収録。

小説のように

アリス・マンロー著/小竹由美子訳。新潮クレスト・ブックス。

子連れの若い女に夫を奪われた過去をもつ音楽教師。新しい伴侶とともに恵まれた暮らしを送る彼女の前に、自分の過去を窺わせる小説が現れる(表題作「小説のように」)。ほか、ロシア史上初の女性数学者をモデルにした意欲作「あまりに幸せ」など、人生の苦さ、切なさを鮮やかに描いて、長篇を凌ぐ読後感をもたらす珠玉の十篇。

何があってもおかしくない

エリザベス・ストラウト著/小川高義訳。早川書房。

生まれ育った田舎町を離れて、都会で作家として名をなしたルーシー・バートン。17年ぶりに帰郷することになった彼女と、その周囲の人々を描いた短篇9篇を収録。卓越した短篇集に与えられるストーリー賞を受賞した、ピュリッツァー賞作家ストラウトの最新作!

観光

ラッタウット・ラープチャルーンサップ著/古屋美登里訳。早川epi文庫。

美しい海辺のリゾートへ旅行に出かけた失明間近の母とその息子。遠方の大学への入学を控えた息子の心には、さまざまな思いが去来する――
なにげない心の交流が胸を打つ表題作をはじめ、11歳の少年がいかがわしい酒場で大人の世界を垣間見る「カフェ・ラブリーで」、闘鶏に負けつづける父を見つめる娘を描く「闘鶏師」など全7篇を収録。人生の切ない断片を温かいまなざしでつづる、タイ系アメリカ人作家による傑作短篇集。紀伊國屋書店で開催された〈ワールド文学カップ〉でMVPを獲得した話題作、ついに文庫化。

続いてはトヨザキ社長の推薦書籍。

わたしたちが火の中で失くしたもの

マリアーナ・エンリケス著/安藤哲行訳。河出書房新社。

秘密の廃屋をめぐる少年少女の物語「アデーラの家」のほか、人間の無意識を見事にえぐり出す悪夢のような12の短篇集。世界20カ国以上で翻訳されている「ホラーのプリンセス」本邦初訳。

西欧の東

ミロスラフ・ペンコフ著/藤井光訳。白水社エクス・リブリス。

過去と現在、故郷と異国の距離、土地と血の持つ意味……〈BBC国際短篇小説賞〉および〈O・ヘンリー賞〉受賞作を含む、ブルガリア出身の新鋭による鮮烈なデビュー短篇集。

誰でもない

ファン・ジョンウン著/斎藤真理子訳。晶文社韓国文学のオクリモノ。

デビュー以来、作品を発表するごとに注目を集め、「現在、最も期待される作家」として挙げられることが多いファン・ジョンウンが、2016年末に発表した最新の短編集。恋人をなくした老婦人や非正規労働で未来に希望を見出だせない若者など、“今”をかろうじて生きる人々の切なく、まがまがしいまでの日常を、圧倒的な筆致で描いた8つの物語。
韓国の若い作家を紹介するシリーズ〈韓国文学のオクリモノ〉第4回配本。

大手出版社がもうとっくに版権を取得しているのでしょうかしら?

来週末には順次店頭に並び始めると思いますが、新刊の『ヒョンナムオッパへ』は韓国の女性作家7名の短篇集です。

そのうちの一人、『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者でもあるチョ・ナムジュさんが来日され、19日の晩には新宿の紀伊國屋ホールで、川上未映子さんとのトークイベントが行なわれます。チケットは、ライブビューイングも含め既に完売とのことで、著者やこういったテーマに関する関心の高さを伺わせます。

ところで、『ヒョンナムオッパへ』の「訳者あとがき」に

いま韓国では、LGBTの人々を描く小説も増えてきており、二〇一八年には、、若い作家たちによる初のクィア小説というサブタイトルのついた『愛を止めないで』も出版されました。

とありました。フェミニズムも関心あるけれど、LGBTも非常に興味深いです。こちらはどこかに本の出版社が既に翻訳刊行する予定になっているのでしょうか? 可能であれば、あたしの勤務先から出したいなあ、などと思ってしまいます。

なぜなら、『ヒョンナムオッパへ』は副題に「韓国フェミニズム小説集」とあるので、こちらも刊行できれば『愛を止めないで 韓国クィア小説集』として二冊セットで売れるからです。如何でしょうか?

多様性が肝要

朝日新聞の読書欄で『共通語の世界史』が紹介されました。評者は出口治明さん。

少し前に、他紙で黒田龍之助さんも紹介してくださいましたが、出口さんの評はいろんな語学が大好きな黒田さんのそれとはガラッと趣の異なるもので、こちらも本書の特徴をうまく紹介してくださっています。

どちらも読んで感じるのは、やはり言葉で意思疎通をし思考する人間にとって言語に関する考察というのは興味の尽きないものだ、ということです。言葉によって人は仲良くもなれるし、諍いも起こせます。言葉が異なるから紛争の原因にもなる反面、多様性を担保しているのだと思います。

ところで、本書はヨーロッパを扱っているわけですが、アジアの言語状況については本書に類するものってあるのでしょうか?

重版2点

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ちょこちょこと顔を出しているようで……

中公新書の『リバタリアニズム』を読み終えるところです。

ところで、この本を読んでいると、あたしの勤務先の書籍がちょこちょこと顔を覗かせているような気にさせられます。

たとえば、9頁には「海賊党」という言葉が出てくるのですが、あたしの勤務先からは『海賊党の思想 フリーダウンロードと液体民主主義』という本を出しています。

同書は、ヨーロッパで勢力を伸ばしていると言われる海賊党というものに迫ったノンフィクションですが、これがアメリカのリバタリアンとどう関わってくるのでしょう?

次に、41頁には「グローバル・トリレンマ」という言葉が出て来ます。

これは言わずと知れたロドリックのロングセラー、『グローバリゼーション・パラドクス  世界経済の未来を決める三つの道』で主張されているところです。

『リバタリアニズム』で解かれているグルーバル・トリレンマは「グローバル資本主義・国家主権・民主主義の不整合」を指していますが、『グローバリゼーション・パラドクス』ではそれを「現今の世界情勢は、グローバリゼーションと国家主権、そして民主主義を同時に追求することを許さず、どれか一つを犠牲にするトリレンマを強いている。教授はこうした基本認識に立ちながら、国家主権と民主主義を擁護するとともに、無規制なハイパーグローバル化に網を掛けることを提言する」と述べているわけです。

リバタリアンはこの三つのどれを選ぶのでしょう?

そして最後、80頁には「鉄のカーテン」という言葉が使われています。これはまもなく刊行予定の上下本のタイトル『鉄のカーテン』です。こちらは

第二次世界大戦の終結から、スターリンの死、ハンガリー革命に至るまでの時代に、ソ連がいかに東欧諸国(主に東独、ポーランド、ハンガリー)を勢力下に収め、支配していったのか、そして各国がいかに受容し、忌避し、抵抗していったのか、その実態をテーマ毎に論じた力作

です。