角川選書の新刊、『マルクス 資本論』です。
著者は佐々木隆治さん。
どこかで見覚えのある名前、と思ったら、前号の『人文会ニュース』128号でマルクスについて書いていただきました。
角川選書は少々ボリュームもありますので、まずは『人文会ニュース』から読んでみるのはいかがでしょうか?
角川選書の新刊、『マルクス 資本論』です。
著者は佐々木隆治さん。
どこかで見覚えのある名前、と思ったら、前号の『人文会ニュース』128号でマルクスについて書いていただきました。
角川選書は少々ボリュームもありますので、まずは『人文会ニュース』から読んでみるのはいかがでしょうか?
昨日は四ッ谷にある韓国文化院で翻訳フェスティバルでした。かなり大きなホールでしたが事前予約で満席という盛況ぶりでした。
第一部は「本が生まれる現場から」と題して、晶文社、新潮社、白水社、クオンの編集者が翻訳作品を作る、出版するにあたって考えなどを披瀝、第二部は「翻訳の仕事最前線」として5名の翻訳家の方が実際の翻訳作業について、翻訳という仕事について語りました。そして最後の第三部は「翻訳コンクール」の授賞式でした。どれも興味深く、楽しいひとときでした。
個人的には、やはり出版社の営業として、第一部の編集サイドの意見というのは面白く聞けるものの、営業としてはまた異なった立場、考え方もあるだろうなあと感じました。もし機会があるのであれば、同じ出版社の営業部の人に登壇してもらって、翻訳作品について語ってもらうのも面白いかも知れません。
さて会場は、場所や主催者の関係もあり、韓国語や韓国文学に興味のある方が多かったのでしょうか? 業界関係者も少なからずいたようですが、多くのは翻訳家の卵のような方が多かったのではないか、という印象を受けました。翻訳コンクールに応募したけど選には漏れてしまった方もいたのだと思います。
あたしのこの印象が正しかったとして、今回のイベントがそういう方々にとって「これからも翻訳を続けていこう」という励みになったのか否か。いきなり出版社に自身で翻訳したものを持ち込んでもほぼ採用されることはないということでショックを受けた方も多かったのではないでしょうか? ただし、出版社としてもいつまでも同じ翻訳家にだけ頼っていることはできません。こういっては失礼ですが、翻訳家の方だって年をとりますし、いずれはお亡くなりになります。死んでしまっては翻訳を頼むことはできませんから、新たな翻訳家の発掘は出版社としても死活問題です。
もちろん生前においても、若い作家の作品を年老いた翻訳家が翻訳するというのはどうなのか、登壇されていた金原瑞人さんも多少ニュアンスは異なりますが、そんなようなことを語っていました。感覚にしろ言葉遣いにしろ語彙の選択にしろ、若いからこそ出てくるものってあるはずですので、そういう意味でも出版社は多くの翻訳家の方を、キープという言い方は失礼かも知れませんが、知り合っておきたいと考えているはずです。
まあ、独りでコツコツと作業をしている人がどれだけいるのか知りませんが、たいていの方は翻訳家の方がやっている翻訳教室や翻訳講座のようなものに通っているはずですので、その翻訳家の方を通じて出版社の人間を紹介してもらうのが一番の近道ではないでしょうか。出版社としても、ふだん仕事をしている翻訳家からの紹介であれば無視もできないでしょうし。
個人的には、第二部の座談、五名の方はアメリカ、ドイツ、台湾、イタリア、韓国の翻訳を主に手がけている方々でしたが、アメリカを除けばやはり翻訳の世界では少数派です。このあたりの、同じ翻訳家と言っても立場の違い、市場の違いに対する意識のずれやギャップが面白かったですし、興味深かったです。必ずしも英米が恵まれているわけでもないんだなあと感じました。
『奥のほそ道』は未読なのですが『ぼくの兄の場合
』は読了しました。一方を読んでいないのに語るなと言われそうですが……
実はこの二点、どちらも先の大戦をテーマにしている作品なのです。
ただ、そのアプローチはまるで異なります。
『ぼくの兄の場合』は戦争に行った兄と、その兄の残した日記を頼りに戦後、それを追体験する弟。戦争が身近でありつつも距離をおく弟の姿。カラッとしたものを感じます。
一方の『奥のほそ道』は泰緬鉄道の建設現場が舞台です。熱帯のジャングル、体にまとわりつくような湿度、捕虜の苛酷な状況。まさしく戦争という世界。
どちらも史実をベースにしつつもフィクションとして描かれています。「戦争を考えるフェア」と言うと人文書コーナーの専売特許のような雰囲気もありますが、こういう作品も混ぜてもよいかと思いますし、あるいはこういう作品を集め、文芸書コーナーで「戦争を読むフェア」をやってもよいのかも知れませんね。
最近『このサンドイッチ、マヨネーズ忘れてる/ハプワース16、1924年』という邦訳新刊も刊行されたサリンジャーですが、明けて2019年は生誕100年にあたります。
誕生日が1月1日なので、明けたら即アニバーサリーですが、この冬はちょっとしたサリンージャー祭りになるのではないでしょうか? 映画が2本、公開を控えています。
まずは「ライ麦畑で出会ったら」です。
これは監督の実体験を基にした作品のようです。サリンジャーに、『ライ麦』舞台化の許可を求め会いに行こうとする主人公の話です。果たして、サリンジャーに会えたのでしょうか? 舞台化の許可は取れたのでしょうか?
もう一本は「ライ麦畑の反逆児」です。
こちらは晶文社の『サリンジャー 生涯91年の真実』を原作とした、サリンジャーの評伝になります。
どちらも公開がとても待ち遠しい作品です。もちろん、サリンジャーと言えば、何はともあれ『キャッチャー・イン・ザ・ライ』、つまり『ライ麦畑でつかまえて
』ですから、映画を見に行く前に、あるいは見た後には是非。
土曜日に移った朝日新聞の読書欄。本日はこちら。
リチャード・フラナガンの『奥のほそ道』です。フラナガンと言えば、前作『グールド魚類画帖
』もよく売れた作家です。本作もこれで更に勢いがつくことでしょう。ただいま重版中です。
ところで、本日の紙面はこれだけではありませんでした。
文庫クセジュの『家族の秘密』も紹介されています。
タイトルからですと、どんな内容の本だと思うのでしょう? 著者には同じく文庫クセジュに『レジリエンス こころの回復とはなにか 』という著作もあります。二冊併せて是非どうぞ。
「スターリンの葬送狂想曲」とは、なかなかに刺激的なタイトルです。ロシアでは上映禁止になった映画だそうです。いよいよ日本公開です。
この映画を愉しみ、更に理解を深めるために、こんな本はいかがでしょうか?
まずはスターリンの評伝『スターリン 青春と革命の時代』『スターリン 赤い皇帝と廷臣たち(上)
』『スターリン 赤い皇帝と廷臣たち(下)
』の三冊です。
そして、公式サイトのトップ画像に出てくる面々のうち『スターリンの将軍 ジューコフ』『スターリンの娘(上) 「クレムリンの皇女」スヴェトラーナの生涯
』『スターリンの娘(下)「クレムリンの皇女」スヴェトラーナの生涯
』の二人の評伝も出しております。
読み応えのある本ですが、面白さは抜群です。映画を見る前、あるいは見た後に是非どうぞ!
書店を回っていると、店内の目立つところで『ペンギン・ハイウェイ』の文庫本が積まれているのが目に入ってきます。森見さんの作品なんですね。
どんな作品なのかと言いますと、ネットの紹介記事などでは
ぼくはまだ小学校の四年生だが、もう大人に負けないほどいろいろなことを知っている。毎日きちんとノートを取るし、たくさん本を読むからだ。ある日、ぼくが住む郊外の街に、突然ペンギンたちが現れた。このおかしな事件に歯科医院のお姉さんの不思議な力が関わっていることを知ったぼくは、その謎を研究することにした―。少年が目にする世界は、毎日無限に広がっていく。第31回日本SF大賞受賞作。
と書いてありました。面白そうなストーリーです。そして、どうやら映画化されたようです。この夏、8月に公開だそうです。それで店頭でも原作本を猛烈にプッシュしているということのようです。
でしたら、同じペンギンつながりで、『ペンギンの島』も一緒に並べていただけないものでしょうか? こちらは
聖者の手違いから人間に変身したペンギンの国の年代記を通して、フランスの歴史を戯画的に語り直したノーベル賞作家の埋もれた名作。
というストーリーです。いかがでしょう? こちらも負けず劣らず面白い作品だと思いませんか?
ちなみに、本作はペンギンに洗礼を施してしまったため、ペンギンを人間にしてしまうという話なわけですが、『神は死んだ』という作品には「「神の肉」を食べたために、知性が高度に発達した犬へのインタビュー」が出て来ます。こちらも荒唐無稽さは負けず劣らず、そしてとても面白い作品です。