あえて文庫を買うとき

日本エッセイスト・クラブ賞を受賞した『台湾生まれ 日本語育ち』が白水Uブックスになります。写真は、左が単行本、右がUブックス版です。

単行本からUブックスへというのは、他の出版社でいうところの文庫化のようなものです。

ところで、単行本を買った人は文庫本も買うのでしょうか?

好きな作家の作品なら、単行本も文庫本も両方買う、というファンの方は多いようです。ファン心理としては装丁もきれいな単行本を買うというのが大前提のような印象を受けます。

それに対して廉価な文庫本は、その作家のファンではないけど評判になっているからちょっと読んでみようと思って、という方が買われるのではないでしょうか。ですから購買層の間口が広くなる傾向があります。時には本屋の店頭で装丁に惹かれてジャケ買いする人もいますが、装丁に惹かれるのは文庫本ではなく、圧倒的に単行本の方が多いと思いますので、単行本ではそういう売れ方もままあるでしょう。

その他、好きになったとき、気づいたときには単行本は品切れとなっていて、文庫本しか手に入らなかった、ということも昨今の出版事情では大いにありえます。昨日このダイアイーに書いた新潮社のクレストブックスも新潮文庫にならずに品切れのまま、という作品は意外と多かったです。

さて、あたしの場合ですが、上述したように好きな作家の場合は単行本を買います。専門書になると文庫化というのは滅多にないことなので単行本で買うしかありませんが、最近はかつての名著が講談社の学術文庫やちくま学芸文庫になったりして入手可能になる場合がありますので油断はできません。

で、単行本を既に持っているものが文庫化されたときに文庫も買うか否かです。

これには、一つ規準というか、ごくごく緩いルールみたいなものがあたしの中にありまして、単行本とまるまる同じ内容ならば買わないけれど、増補があったり、文庫本のみの解説が付いていたりすると購入率が格段に上がります。いや、中国関連のものであれば単行本を持っていても文庫のおまけ(増補や解説)があればまず間違いなく買います。(ただし、著者自身による1ページにも満たない「文庫版ためのあとがき」のようなものは論外です……汗)

というわけで『台湾生まれ 日本語育ち』ですが、今回のUブックス版に3編の追加があります。それだけあれば単行本を持っていても更にUブックス版を買おうという動機になると思うのですが如何でしょう?

中国とアフリカ

今朝の朝日新聞の社説です。

中国とアフリカに関する論評が載っていました。

このところ中国のアフリカ進出が日本のメディアでも取り上げられるようになり、「日本は出遅れている」とか、「中国のやっていることは新たな植民地主義だ」といった主張が目立ちます。

と言うよりも、中国とアフリカで話題になることはそればっか、と言った方が正確かもしれません。

しかし、国営企業と一緒にアフリカへ渡って働く中国人だけでなく、アフリカに住み着いている中国人が多数存在することをご存じでしょうか?

そんなアフリカで一旗揚げようと海を渡った中国人に迫ったのが『中国第二の大陸 アフリカ 一〇〇万の移民が築く新たな帝国』です。

本書は、カラオケバーを経営する売春宿の女将から銅山開発に成功した起業家に至るまで、中国移民が追い求める「アフリカン・ドリーム」の実像を、サハラ以南10カ国を巡って詳細に描いたルポである。著者は中ア双方で『ニューヨーク・タイムズ』の支局長を務めたベテラン・ジャーナリスト。両者に渦巻く野望、欲得ずくの協力・依存関係、蔓延する腐敗と偏見――「ビジネス」という視点だけでは見えてこない人びとの日常の姿を通して、アフリカで急速に存在感を増す中国の「人としての顔」を浮かび上がらせる。そこに新植民地主義の影を見ることもできるが、同時に、経済的、文化的相互交流が盛んな新世界を展望することも可能だ。本書は中国とアフリカの関係を新たな視点で見直し、歴史地図に位置づける試みである。『ニューヨーク・タイムズ』ほか有力紙誌が絶賛。

という内容紹介にもあるように、数多ある「中国アフリカ」本とは一線を画す内容です。彼らの生き様を見ていると、「親方五星紅旗」でアフリカを搾取する中国国営企業とは異なった一面が見えてきます。そして、あたしが感じたのは、中国大陸にいようがアフリカ大陸にいようが、庶民は生きることに懸命なんだということです。

中国大陸ではもう夢を描けなくなったらアフリカへ渡った彼らは、果たして夢をつかめるのでしょうか?

2018年9月7日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

海外でも大活躍!

朝日新聞、昨日の夕刊です。

北海道の地震のニュースが紙面の大半を占めるなか、芸術関係のニュースに見覚えのある名前が……

チェルフィッチュの岡田利規さんの記事です。

いまや海外でも大活躍の岡田さんですね。

というわけで、あたしの勤務先から出ている岡田さんの本ということで『エンジョイ・アワー・フリータイム』と『三月の5日間』をご紹介。

  

『三月の5日間』は、上の写真ではあえてオリジナル版を並べてみましたが、現在書店でお求めいただけるのは『三月の5日間[リクリエイテッド版]』になります。