もう一方の側から見てみると……

今朝の朝日新聞に中朝国境付近で不動産投資ブームという見出しが目に留まりました。

 

今後の中朝関係の発展を見越して、北京や上海では規制が厳しい不動産投資のマネーを、こういった地方へ注ぎ込んでいる富裕層が多いのでしょう。行く宛のないバブルマネーですね。これが弾けたら、中国経済はどうなってしまうのでしょう?

ところで、記事では不動産投資に熱を上げる漢民族の話になっていますが、この地域は言わずと知れた朝鮮族の居住地でもあります。町によってはほとんどが朝鮮族というところもあるでしょう。中国国内なので朝鮮族と呼ばれますが、つまりは朝鮮人です。歴史的に見れば、このあたりも大朝鮮の領土だった時代もあったわけですから、朝鮮人から見れば、満洲族に追い出されるのならともかく、漢民族にわが物顔に振る舞われるのは忸怩たるものがあるのではないでしょうか。

そんな中国東北地区の様子を朝鮮族の視点からルポしたものが『辺境中国 新疆、チベット、雲南、東北部を行く』です。先日の書評以来注文殺到で、ただいま重版中ですので、しばらくお待ちください。

灯台下暗し

先日、岩波新書の『インド哲学10講』を読んだのですが、その中で野田又夫が引かれていました。

 

恥ずかしながら、野田又夫って全然知らなくて、ただ引かれている文章などが興味深かったので、著作を調べてみたら手頃なところで岩波文庫の『哲学の三つの伝統 他十二篇』がありました。というわけで、こんどはそれを読み始めたところです。

が、パラパラとページをめくっていた時に、この文庫の底本となった『野田又夫著作集』というのが、あたしの勤務先から出ている本だということを知りました!

えーっ、という感じです。驚きました。なんとなく縁を感じると共に、悔しい思いもいっぱいです。

で、勤務先で少し調べてみると、1981年頃に刊行された全5巻本でした。もちろん現在は品切れです。と言うよりも、そんな本が出ていたということを、今の今まで知りませんでした。あたしが入社したのは著作集刊行から10年ほど後になりますが、周囲に尋ねてみると、どうやらあたしが入社した時点で既に品切れ状態だったようです。

うーん、それでは知らなくても仕方ないですね。しかし、この間、一度も問い合わせすら受けたことなかったというのは、野田又夫というのは知る人ぞ知る学者だったのでしょうか。なにも知らなくて、本当に恥ずかしいです。

しかし、いま読んでいる岩波文庫、非常にわかりやすいですし面白いです。こんな学者がいたんだと、目から鱗です。

大学生になったら? 大学生になるまでに?

くまざわ書店の店頭でフェアをやっていて、その小冊子をいただきました。《大学生になったら読んでおきたい本》フェアです。同チェーン各店で現在開催中なのだと思います。

冊子の最後のページには《くまざわ書店「大学生になったら読んでおきたい本」フェア有志一同》として挨拶文が載っています。有志として本を推薦しているのは同チェーン各店に勤務する書店員10名の方々です。かなり気合いの入った取り組みに感じられます。

内容は「大学生のための読書入門」「大学の内と外をつなげるために」「社会と人間について考えるための本」「心と思想に触れる」「入門 ニッポンを知る」「乱読のすすめ」「立っている足下が崩れる4冊」「自分とは何か、自己を客観的に見る道標になる一冊」「自明性を疑う」「普遍性と特殊性の共犯関係」というテーマで5冊ずつくらい選書されていて、各書籍に選者のコメントが数行付いています。

 

そんな中、「大学の内と外をつなげるために」の項で『寝るまえ5分の外国語 語学書書評集』を、「自明性を疑う」の項で『ライ麦畑でつかまえて』をそれぞれ選んでいただきました。深謝。

全体で見ると、やはり岩波書店からの選書が目立ちます。その他では筑摩書房、みすず書房などからも多く選書されているなあという印象です。

ところで「大学生になったら」ではなく、「大学生になるまでに」というテーマを設定したらどんな本が選ばれるのでしょうか? 興味あります。