こういう地図、今も作っているのでしょうか?

下の図版、その昔、あたしが学生時代に短期語学研修で中国へ行ったとき、西安の街中で売っていたのを見つけて買った市街図です。1988年3月のことです。

鐘楼の近くでバスを降り、引率の先生の先導で、昼食だったか夕食だったかのレストランに向かって歩いているときのことです。遅れないように歩いていたものの、この地図は買っておかなければと思い、慌てて買いました。

この十年くらいの事情は知りませんが、当時は北京でも上海でも道路脇にスタンドのような売店がたくさんあって、地方から出て来た中国人向けに交通地図、旅遊図が売られていました。地図を手に入れないと、網の目のように走るバス路線がわかりませんから、まずは地図を手に入れるのが肝心な時代でした。

ただし、この独特のバス路線図は理解するのにそれなりの習練を要するもので、あたしも最初はまるっきり理解できませんでした。が、一か月の研修の後半になると、バス路線図を駆使して、いろいろなところへ出かけたものです。

で、その西安の地図ですが、広げると下の図のようになっています。地図のタイトルどおり、鳥瞰図です。これが当時の西安です。

北京や上海では、こういった立体的な鳥瞰図はついぞ目にしたことがなかったので非常に新鮮で、また見ていてとても愉しかったので思わず買ってしまうのも理解していただけると思います。そして、裏面が、下の図のように他の都市でも見られる、一般的なバウ路線図になっています。

この西安の地図、あたしの乏しい中国体験からでは、この時の西安の地図しかお目にかかったことがないのですが、北京や上海でも探せばあったのでしょうか? あるいは西安だけがたまたま作っていたものなのでしょうか?

しかし、その後、ネットでは「E都市 三維秘図」というサイトを見つけ、なんと中国の様々な都市の鳥瞰図が見られるようになりました。その西安と比べると、当時の西安はまだ地方都市の風情が残っていますね。この地図はこの地図として味わい深いものがあります。

晶文社とふたたび、みたび?

晶文社の新刊『ギリシャ語の時間』、ほぼほぼ読み終わるところです。

タイトルだけですと、「語学エッセイ?」という感じの本ですがガイブンです、韓国文学です。晶文社がこのほどスタートさせた韓国文学のシリーズ《韓国文学のオクリモノ》の記念すべき第一冊目です。

主人公は、あることがきっかけで言葉を話せなくなった女性と、彼女が通う古典ギリシア語スクールの男性教師です。この教師は視力が徐々に失われていく病気を抱えていて、それがかなり進行していて失明寸前の状況です。

そんな二人の、これは大人のプラトニックラブなのでしょうか? あとちょっとで読み終わりますが、結末が楽しみです。

そんな本書には、ところどころギリシア語が引用されています。ギリシア語が読めなくてもストーリーに何ら問題はありませんが、読めた方がより味わえるのも確かです。そんな、本書をきっかけに古典ギリシア語に興味を持たれた方には『古典ギリシア語のしくみ』がお薦めです。

スラスラ読める、新書のような語学入門書《言葉のしくみ》シリーズの一冊です。本格的に古典ギリシア語を学ぼうというほどではないけれど、ちょっとはかじってみたいという方に、このシリーズは非常にピッタリです。

一見すると海外文芸らしくない文芸書と、語学書らしくない語学書の組み合わせ、なんかちょうどお似合いな気がします。

なお、『ギリシャ語の時間』には、主人公の女性と一緒に古典ギリシア語の授業を受けている生徒が何人か出て来ます。その中の一人、大学院生はギリシア語をマスターし、ギリシアへ留学して古代医学を勉強するのだそうです。

そのシーン(P.100-P.101)にガレノスの名が出てきます。ちょうど今月下旬に『ガレノス』という本が、あたしの勤務先から刊行されるところです。なにやら、妙なシンクロが晶文社と続いていますが、興味のある方はこちらも是非どうぞ!