もっと少数派

穂村弘『野良猫を尊敬した日』読了。

相変わらず穂村さんのエッセイは面白いです。しかし、奥付によると穂村さんの肩書きは「歌人」となっていますが、挙がっている著書は歌集よりもエッセイの方がはるかに多いのは、穂村さん的にどうなのでしょう?

そんな本書の一篇「少数派」にこんなくだりがあります。

例えば、ディスニーラン。行ったことがないのだ。これは東京在住の人間としては、珍しいだろう。ディズニーランドのゴミ箱は喋るんだよ、と教えられて感心したり、ミッキーマウスを「一匹」と云って「一人」と訂正されたり、少数派気分を味わっている。
それからもうひとつ、『スター・ウォーズ』も観たことがなかった。過去形なのは、こちらは、去年、観てしまったからだ。(P.97)

あたし、ディズニーランドは行ったことがありますが、3回くらいで、すべて地方に住む親戚の子供が東京へ遊びに来たときに連れて行ってやった、というだけのことで、いわゆる友達とか恋人と行くなんていう僥倖に恵まれたことはありません。

さらには、ディズニーシーには一回も行ったことがなく、上に述べたディズニーランドへ行ったというのも、すべてディズニーシーができる前の話、ディズニーシーができてから、舞浜界隈には行ったことがないのです。

『スター・ウォーズ』の方は、あたしは相変わらず観たことがありません。ダースベイダーとかヨーダという名前が穂村さんのエッセイには出て来ますが、なんとなく名前の聞き覚えはあるものの、それがどのキャラクターを指しているのかはわかりません。

『スター・ウォーズ』なら外国のものだからと言い訳ができるかも知れませんが、日本のものでも、例えば『ワン・ピース』、これをあたしは観たことも読んだこともありません。ルフィというのが主人公だと知ったのも一年か二年前のこと。それ以外の登場人物はまるっきり名前すら聞き覚えがないです。ダースベイダーとヨーダを知っていた『スター・ウォーズ』よりも悪いですね。

いずれにせよ、あたしも穂村さんに負けず劣らず少数派なんでしょう。

しかし、穂村さんは冴えない男を演じているだけで、エッセイの中にはしばしば友達の話や、昔付き合っていた彼女の話が出て来ます。あたしなんか、そうやって語るような昔の友達も付き合ったことのある恋人もいません。挙げ句の果てには、穂村さんは既に結婚できているではないですか!

どう考えても、あたしの方がはるかに情けない人生を送っていると言えそうですね……(涙)。

バカに付ける薬はない?

雑誌が売れないご時世だというのに、同じ雑誌を三冊も買ってしまいました。

『日経エンタテインメント!』の最新号です。別に間違えて買ったわけではありません。営業先の書店で無理矢理買わされたわけでもありません。自分の意志で買いました、それもセンブン・ネットです。

だって、ご覧のように、購入特典で3タイプのクリアファイルが付くからです。AタイプからCタイプって、まるでCD見たいですね(笑)。こうやっていいように鴨にされて散在し……

われながら、自分の愚かさを自覚しています。

それでも、あたしなど各タイプ1冊ずつなのでマシな方ではないでしょうか? 熱心な(?)ファンなら各タイプ数冊ずつ買っている猛者もいると思います。

ちなみにこのくらいファイル、表はこのように制服スタイルですが、裏面はまた別のメンバーが登場しています。どっちを表と言い、どっちを裏と言うのか、正解はわかりませんが(汗)。あと、こういった付録のクリアファイルってB5判が多い気がしますが、今回のは3つともA4判の大きさ。ちょっとトクした気分です。

上海、行きたいなあ~

温又柔『真ん中の子どもたち』読了。

ストーリーは日本人の父(台湾研究者)と台湾人の母を持つ主人公が日本で中国語学校に入り、その勉強の一環として一か月の語学留学で上海を訪れさまざまな経験をするというもの。本書の感想やストーリー紹介は省きまして、あたしが読んでいて一番楽しかったのは、その上海を主人公と級友が散策するシーンです。

あたしも中国は何度か訪れていますが、最後に訪中してからかれこれ10年になろうとしています。これまでの訪中は「中国旅行記&写真帳」にまとめてあります。それによると、上海には5回行ってることがわかります。同書の主人公が上海を訪れたのは、あたしの5回の上海訪問よりは少し後になると思われますが、現在の上海ではないのでやや懐かしさを覚える描写も随所に見られました。

特に印象に残っているのは海関の時計ですね。やはり上海と言えば外灘(バンド)、外灘と言えば、和平飯店と共にあの時計が印象的です。あの時計の鐘の音を聴きながら和平飯店で食事をしたことが二回あります。一回目ははじめのの訪中の時で、それは主人公と同じ一か月の短期語学研修で、あたしは北京で四週間学んでいました。その後、卒業旅行として洛陽、西安、上海と一週間かけて旅したのですが、その時です。もう一度は母と妹と三人で訪中したときです。

初めて和平飯店で食事をしたときのことは、自分の旅行記にこんな風に書いています。

 締めくくりに、和平飯店(中国では、飯店、賓館と言ったらホテルのこと。このホテルは、上海でもベストスリーにランクされる程の高級ホテルです)の北楼七階だったか八階だったかのレストラン(中華は飽きたので洋食の)で、上海の黄浦江を行き交う船と、黄昏から夜の帳が降りる街を見下ろしながらワインで乾杯して、食事をして……。バックには、ピアノが生演奏でショパンを奏でていた、と言うより叩いていたと言う方が正しいかな。窓からは大時計が見えていて、これがライトで輝いていた。
この時計が三度目の時を告げ、そろそろ戻ろうということになり、タクシーを頼んで宿舎へ帰った。

なんか、今とはずいぶんと文体が異なっていて、自分で書いたとは思えませんが……(汗)。とはいえ、とてもロマンチック、雰囲気がよかったのは事実です。

また主人公が男友達と魯迅公園を歩くシーンがありましたが、あたしももちろん行っています。大世界(ダスカ)は前を通っただけで中には入りませんでした。昔の華やかなりし話は読んだり聞いたりしていますので、今、中を覗いてもどうなんだろうと思ったからですが、同書を読んだ後では、やはり入ってみればよかったかなと、ちょっと後悔してます。

 

とにかく、主人公の見聞きする上海が、今ほど発展するちょっと前で、あたしが最後に目にしたころの上海と非常に近しいのではないかという気がして、懐かしく読みました。ああ、また中国、行きたいなあ~

2017年9月3日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

スマホじゃないよ

あたしは昔から腕時計が苦手でしていません。高校の時には腕時計を腰のベルトにぶら下げていました。しかし、それだと文字盤が読みにくいので、大学のころからは懐中時計を使うようになりました。

懐中時計って、高いのはものすごく高くておしゃれですが、安いものになると雑貨屋みたいなところで売ってたりしますよね。それも意外とデザインが面白いものが。一時期はそういうのも使ったりしましたが、結局は文字盤の数字が見やすいものに落ち着いて、社会人になった後も、比較的廉価でオーソドックスな懐中時計をずーっと使っていました。

しかし、世は電波時計の時代に突入です。自宅の壁掛け時計や目覚まし時計も次々に電波時計に買い換えていきました。テレビやラジオの時報とピッタリ合っている時計というのは気持ちのよいものです。家中の時計が秒まで一致しているというのも清々しく感じられます。

となると、懐中時計も電波時計に取り替えたくなるのが人情というものです。しかし、懐中時計の電波時計というのはほとんど商品がありません。腕時計や置き時計はあれほど品数豊富だというのに、懐中時計で手が届くような価格帯ではほぼ選択肢がない状況です。

さて、どうしよう。あたしは考えてしまいました。ヨドバシカメラなどの店頭を眺めに行ったこともあります。

そして出した結論が旅行用の携帯時計です。これですと電波時計が出ていますし、値段も手頃です。懐中時計をポケットに入れている身からすれば、この程度の大きさ、厚さのものをポケットに入れて歩くのは邪魔にはなりません。

というわけでここしばらく、たぶん数年になると思いますが、使っているのが上の写真のトラベルクロックです。もちろん電波時計です。トラベルクロックですから目覚まし(アラーム)機能も付いていますが、それを使ったことはありません(汗)。そして画面には日付と気温、湿度が表示されるものです。気温については、ポケットに入れていることが多いので、体温が影響してほとんど意味がありませんが、勤務先では上の写真のようにポケットから出して机の上に置いています。

この時計、営業回りの途次など時間が知りたくてポケットから出すと、ほとんどの場合、怪訝な顔をされます。「えっ、それ、何?」という感じです。一見するとスマホを取り出して時刻を確認しているのかな、という風に見えますが、あたしの勤務先はスマホもケータイも支給してくれないので、そんなものは使いません。そもそもあたしくらいの世代ですと、時刻を確認するのにスマホを見るという習慣がそもそもありませんので……

で、スマホかなと思った人も、「いや、スマホにしてはどうも形がヘン。それにナンシーはスマホを持っていなかったはず」と思い、おもむろに「それ何?」と聞いてくるのです。「時計だよ」と答えると、ほぼ全員驚きます。中には爆笑する人もいますが、たいていの人は苦笑いです。

そんなの持って、邪魔じゃないの、と言われることもありますが、上述のようにもともとポケットに懐中時計を入れていたので、このくらいのサイズならそれほど気になりません。とはいえ、今の時代スマホでしょ、という声も飛んでくるのですが、やはりあたしにはこういう方が便利なのです。

しかし、この時計、数日前に脚が壊れてしまいました。

ご覧のように、気づいたら脚と本体の接続部分が折れていたのです。反対側の接続部分が大丈夫なので辛うじて机に立てることは出来ていますが、なんとなく不安定です。まあ、ふだんはポケットに入れて持ち歩いているので、脚などなくても困らなそうですが、勤務先などでは机の上に置いているので、やはり脚が壊れていて立てられないと不便です。

長いこと使いましたから、そろそろ買い換えの時期なのですかね? いまだ懐中時計タイプの電波時計はほとんどないので、買うとしたら今回もやはりコンパクトなトラベルクロックになると思います。

「生存か」と言われても……

朝日新聞に載っていた記事。

死亡説が出ている過激派組織「イスラム国」(IS)の最高指導者アブバクル・バグダディ容疑者について、有志連合を率いる米軍のタウンゼンド司令官は8月31日の記者会見で「今も生存していると考えている」との見解を示した。…(中略)…バグダディ容疑者を巡っては、今年6月にロシア国防省が空爆で殺害した可能性を発表した。米軍は「死亡は確認できない」と繰り返してきた。

「イスラム国」掃討、いつになったら終わるのでしょうか?

で、この記事に出てくる「バグダディ」という名前で思い出したのがこちらの新刊。

ブラック・フラッグス(上)』『ブラック・フラッグス(下)』です。内容紹介をサイトから引用しますと

「イラクのアル= カーイダ」の創設者ザルカウィの生い立ちから「イスラム国」の指導者バグダディによるカリフ制宣言まで、 疑似国家の変遷と拡大の背景を迫真の筆致で描く。中東取材20年のベテラン・ジャーナリストによる傑作ノンフィクション! ピュリツァー賞(一般ノンフィクション部門)受賞作。

です。お陰様でよく売れていますが、こういうニュースが入ってくると追い風になるのではないでしょうか?

日本人には「ブラウック・フラッグス」という言葉、馴染み薄いと思います。「イスラム国」の旗ですよね。昨年刊行された青土社の『イスラーム国の黒旗のもとに』は「黒旗」としていますが、やはり日本人にはわかりにくいと判断したからなのでしょうか? 原題は「Under the Black Flag」ですから、さらに「イスラーム国の」を補っているわけですね。

筑摩書房と仲良く?

筑摩書房と言えば言わずと知れた伝統ある大手出版社。宣伝力も含めた営業力、影響力、どれを取ってもあたしの勤務先では太刀打ちできません。ですので、同社の新刊と少しでも絡めそうなものがあれば、他人の褌で相撲を取る、ではありませんが、乗っかっていきたいと思います。

まずはちくま学芸文庫の『ムッソリーニ』です。これと併売していただきたいのは、『ムッソリーニ(上)』『ムッソリーニ(下)』です。

 

文庫と単行本とでは書店店頭で置かれる場所がまるっきり違いますが、できれば隣同士で並べてもらいたいところです。

続きまして、ちくま新書からこんな本が出ます。『素晴らしき洞窟探検の世界』です。未刊ですので、刊行時には文庫クセジュの『洞窟探検入門』を併売していただきたいものです。クセジュなら新書判ですからちくま新書と並べてもおかしくないですし、たぶん店頭の棚も比較的近くだと思います。

最後はこちら。筑摩書房が鳴り物入りで刊行する『ヴェルサイユ宮殿』です。豪華な写真集で、ヴェルサイユ宮殿初の公式なものだとか。

ヴェルサイユ宮殿に関する書籍は各社から数多出ていますが、あたしの勤務先としては『ヴェルサイユの歴史』をお薦め。

本当は『ヴェルサイユ宮殿に暮らす』を推したいところなのですが、現在品切れのため、残念です。

それにしても、筑摩書房の同書を核にして、ヴェルサイユ宮殿フェアなんて出来そうですね。フランス革命やベルばらまで射程に加えたら更に大規模なフェアになりそうですが……

いま、カント?

書店の店頭で何やら目に付いたのですが……

まずは春風社の『カント伝』、翻訳書です。

次に勁草書房の『カントの政治哲学』、

そして最後に法政大学出版局の『カントの自由論』です。

これら、どうもすべて8月に刊行されたようです。こんなにカントが続くって、何か理由があるのでしょうか?

やはりカントの「永遠平和」が国際的に見直されているのでしょうか?

中級フランス語、セカンドシーズン開始?

本日見本出しの新刊『中級フランス語 時制の謎を解く』は、フランス語学習者のみならず、フランス語を教える方々にも大評判となったベストセラー「中級フランス語」3冊の続刊です。既刊の3冊と並べてみますとこんな感じになります。

想定は揃えつつも、ちょっとアレンジを加えてあります。ちなみに、既刊3冊を改めてご紹介しますと以下の通りです。

  

中級フランス語 あらわす文法』『中級フランス語 つたえる文法』『中級フランス語 よみとく文法』の3冊です。

第二シーズンとは公式の呼び方ではなく、あたしが勝手に呼んでいるだけですが、でも当たらずと雖も遠からず、だと思っています。

さて、この第二シーズンも第一シーズンと同じく全3冊を予定しています。ラインナップは上掲写真のように、本書のカバー袖に書かれています。具体的な刊行時期は未定ですので、いましばらくお待ちください。