7月 2016のアーカイブ
まさに国父
いみじくも本屋と本をめぐる状況について二つほど
今朝の朝日新聞「天声人語」は本屋の話。
過疎の地域で本に触れる機会を残そうと奮闘する人のこと。
道内では書店ゼロの街が増える一方、大都市では図書館、書店、学校図書室とも充実している。
これはたぶん「天声人語」筆者の声だと思いますが、果たして都会は恵まれているのか? たとえば、人口当たりの本屋の数ということで言えば、東京だって「街の書店」がどんどん消えています。本屋のない地区、地域が意外と広がっているのは、都会に住んでいれば実感できます。
それでも電車で一駅行けば本屋があるでしょ、と言われれば、確かにその通り。でも上に書いたように、人口当たりで考えると、都会もかなり深刻な状況なのではないかと思います。
図書館もどんな図書を置いているか、貸出率や住民の中の利用登録カードの登録率はどれくらいなのかを測ってみると、都会が必ずしも好成績とは限らないと思います。
蔦屋が、田舎としか言いようのない土地で図書館を開く、選書に批判はあるものの、地域コミュニティーの核として機能し始めているという現実もあるわけで、何が正解なのか、よくわかりません。
上の写真は、今日の東京新聞夕刊の紙面。こちらも、いろいろ工夫を凝らして生き残りを図っている、街の書店の記事。
たまたま今宵の、とある懇親の集いで、ドコモがやっているdマガジンの話になり、雑誌で稼いでいる街の本屋にとってdマガジンの影響はかなり深刻だとのこと。あたしの勤務先は、雑誌は「ふらんす」しかないので、雑誌依存率は高くなく、なおかつ「ふらんす」はdマガジンに入っていないので直接の影響はありませんが、街の書店が消えていくというのは、ボディーブローのように、どの出版社にも厳しい状況なんだろうと思います。
しかし、完全に失敗したことが明らかなアベノミクスのお陰で給料はまるで上がらず、この出版不況もいまだ出口は見えず。本屋とか図書館とか、紙とか電子とか、そういう垣根をいったん取っ払って、根本的に考え方を改めないとダメなのでしょうか?
とはいえ、あたしだって根本的にどう改めるのか、まるでわかっていないのですが……
既刊本もお忘れなく!
まずは作品社の新刊『ようこそ、映画館へ』、著者はロバート・クーヴァー。思い出されるのは『老ピノッキオ、ヴェネツィアに帰る』でしょうか?
でも、あたしの勤務先からも『ユニヴァーサル野球協会』というのを出していますので、既刊本も一緒に並べようという書店員の皆さま、お忘れなきよう、思い出していただければ幸いです。
次に、河出書房新社から『あなたの自伝、お書きします』、こちらの著者はミュリエル・スパーク。河出書房新社からは装幀も統一感を持たせて『寝ても覚めても夢』『ブロディ先生の青春』が出ています。
この最後の『ブロディ先生の青春』は、別の訳者で、あたしの勤務先から『ミス・ブロウディの青春』として出ていますし、同じUブックスで『死を忘れるな』という作品も出しています。
河出書房新社の新刊と並べるときには同社の既刊書だけでなく、これらUブックスも思い出していただけると幸甚です。
選挙ポスターを見ていて新刊の配本について考えました
東京は都知事選の真っ最中です。こんどの日曜日が投票です。東京以外の地区ではニュースでどのように扱われているのかわかりませんが、東京ではニュースはもっぱら主要三候補しか取り上げていないといっても過言ではありません。テレビの番組では三候補の同性を扱った後に、申し訳程度に「この他にご覧の方々が立候補しております」と名前と小さな顔写真が一覧となって画面に表示されるだけです。
うーん、この扱い、公平・公正な選挙という点で問題ないのでしょうかね? ちょっと疑問です。
で、上の写真は、あたしの自宅の近所の掲示板です。これだけ枠があるのに、ポスターが貼ってあるのは8名だけです。これでも告示日から少したっているので増えた方です。
そして、上の写真は、あたしの勤務先の近所の掲示板です。13名のポスターが貼ってあります。まだ余白が残っているとはいえ、わが家の近所の掲示板と比べるとずいぶん多いです。
実際に投票するときに、こんなポスター一枚で投票先を決めるわけではありませんが、それでも待ちのところどころに貼ってあるポスターは視覚効果の上でもそれなりの影響があると思います。しかし、あたしのように都内をいろいろ移動している者はこうして違いを知ることもできますが、わが家の近所に住むお年寄りで、滅多に遠出もしないような人だと、上の写真の8名以外の立候補者を知ることもなく終わってしまう可能性もあります。
うーん、これでよいのか?
しかし、考えてみますと、この掲示板、都内だけでどれくらいあるのでしょう? 仮に1万か所あったとします。そうすると、ポスターは1万枚用意しないとならないわけですし、その1万枚のポスターを1万か所に貼りに行かないとならないわけですよね。これはお金も人手もかかります。資金力のない候補ではそんなことできません。
となると、まるっきりポスターを作らないか、5000枚とか、3000枚とか、1000枚とか、用意できるお金と人手に応じて準備するわけで、限られたポスターをどこに貼るかといえば、できるだけ人目につく場所、都心や郊外なら駅前などになると思います。逆に言えば、住民しか通らないような郊外の住宅街には貼られない、貼りに来ない、ということになります。
と考えたら、新刊書籍の配本のことを思い出しました。
例えば、文庫や新書。毎月、レーベルによって異なりますが、新聞などの広告を見ていると大手の文庫は月に8点くらいは出ています。しかし、全国の書店にくまなく届けられるほどの部数を作っているわけではありません。出版社にだって予算ってものがありますから、過去のデータと突き合わせ、このくらいの部数は売れるだろうと予想を立て、それに応じて作るわけです。
となると、限りある新刊の文庫はどういう書店に届くのか?
選挙ポスターと同じです。人口が多い都会の、なおかつお客さんが多い都心の大型店を中心に配本されるわけです。人口の少ない地方の、あまりお客も来ないような小さな書店には、待てど暮らせど届くことはないのです。都心と郊外の、選挙ポスターの枚数の差を目にするたびに、そんなことを考えます。
都知事選のように、都内のどこへ行っても同じポスターが貼られる選挙なので。こういうことに気づきましたが、区や市によって選挙区が異なり、立候補している候補者も異なるような選挙ですと、わが家の近所の掲示板と都心の掲示板との差には気づかなかったでしょう。
東京を歩くというよりも彼らの息吹を感じる本
今日の配本(16/07/27)
併売推奨、こんどは中非
こんな本が刊行されました。
『喰い尽くされるアフリカ』、集英社刊です。中国とアフリカの問題に関するものですね。となると、当然のことながら、あたしの勤務先のこの本が思い出されます。
『中国第二の大陸アフリカ』です。
これはどう考えても併売でしょ?
クセジュGO、それともUブックスGO、あるいはエクス・リブリスGO?
いまや世界中の話題になっているポケモンGO。
あたしはポケモンには全く興味がないですし、ほぼまるっきり見たことがないので、わざわざこのゲームをやろうという気は起きません。ですから世間で人々が夢中になっているのも、単にスマホに夢中になっているというくらいにしか感じられません。
が、ここまでブームになり、社会問題化するとすごいものですね。
で、考えました。
このポケモンGOは街中に現われるポケモンを捕まえるゲームですよね。それと同じように、街中に現われる文庫クセジュをゲットしたら、その電子書籍が手に入る、なんてゲームを作ったらどうだろうか、と。
いや、クセジュが地味でしょうか? だったらUブックスでもいいですし、ガイブン好きにはエクス・リブリスでもいいと思いますが、そういうゲームって流行るでしょうか?
しかしなあ、そうなるとタダで電子書籍を配布してしまうことになりますね。どうにかして課金するシステムを作らないと。とは言っても、電子書籍をゲットするたびに課金されるのでは、誰もゲームをプレイしてくれないか……
うーん、悩ましいところ。いいアイデアだと思ったんですけどね。
東京には中国人がいっぱい!
『帝都東京を中国革命で歩く』という書籍が刊行になりました。あたしの勤務先のウェブサイトで連載されていたものを書籍化しました。読んで字のごとく、東京に中国革命の志士たちの足跡を追ったものです。
辛亥革命前後、多くの中国人が日本に滞在していたというのは、中国近代史を学んでいる者にとっては常識に近いものですが、一般の方でも横浜や神戸の中華街、そこに住む華僑の人たちを見れば、課なり古くから中国人が日本に住み着いているというのはわかっていただけると思います。辛亥革命前後に特に多くなったのは、中国での政変を避け日本に亡命した人もいれば、明治維新を経て近代化に成功した日本に学ぼうと留学生として来日した人もいました。
そんな彼らが日本に来てどんなところに住んでいたのか、どんな場所で活動していたのか、当時の地図を眺めながら東京の街、特に早稲田、本郷、神田界隈を歩く、というのが本書の趣旨です。中国近代史に興味のない方には登場する人名が覚えられないかもしれませんが、少なくとも東京に住む方、縁のある方であれば、「へえー、そんなところに中国人たちの宿舎があったんだ」といった発見があると思いますし、歴史書というよりは肩の凝らない街歩きガイドブックとして読めると思います。
が、単なる街歩きの本と言うには、当時の場所があまりにも変わってしまっていて、正直なところ「もはや歩けない」と言った方がよいでしょう。ですが、本書の魅力は、孫文や魯迅といった有名人だけでなく、日本人にはまだ馴染みがないかもしれませんが、革命の志士たちの略伝として、特に日本で暮らした若いころを中心とした物語として読めるところにあります。何か辛亥革命のころの本を読みたいと思ったときに、一般の方では専門書は歯が立たないと思います。でも、本書ならそんな予備知識もいりません。そして読み通せば、歴史の流れと主要な人物の輪郭が頭にインプットされていること間違いありません。さらに知りたい方は本書を手掛かりに次のステップへ進むとよいでしょう。
最近ですと、こんな本が出ています。
『孫文』と『梁啓超』、どちらも岩波書店です。他にもこの時代の人の伝記的なものはたくさん出ていますが、比較的新しいものが続けざまに出版されたので目に留まりました。
あと、魅力的な人物(志士たちはみな魅力的ですが……)に黄興がいます。書籍では手頃なものがないですが、ジャッキー・チェン主演の映画『1911』の主人公が黄興です。この映画を見れば、この時代の流れが頭に入ってくるでしょう。
とまあ類書はいろいろあるのですが、まずは同じ著者の『革命いまだ成らず(上)』『革命いまだ成らず(下)』を一緒に並べていただけると、いやこれは既刊ですから、それと一緒に最新刊『帝都東京を中国革命で歩く』を並べていただければ幸いです。
というわけで、タイトルは決して爆買い中国人が闊歩する銀座などのことを言っているのではありません、悪しからず。