台湾を知るなら白水社?

最近のあたしの勤務先、既にロングセラーとなっている『台湾生まれ 日本語育ち』、朝日新聞の連載の効果もあって追加注文も伸びている新刊の『蔡英文 新時代の台湾へ』と、気づくと台湾もののヒットが続いています。

 

そもそも台湾専門の出版社でもなければ、台湾や中国など中華圏を得意とする出版社でもありません。あえて言うなら、大学の教科書としての中国語教材はそれなりの売り上げがありますので、学生時代の第二外国語などで使っていたという方も多いのではないかと思います。その流れで『ニューエクスプレス中国語』『ニューエクスプレス広東語』『ニューエクスプレス上海語』、そして『ニューエクスプレス台湾語』というように、これまではこの程度の出版状況でした。

 

 

それがちょっと変わったと、今から考えると思えるのは『台湾海峡一九四九』の刊行がきっかけではないでしょうか?

 

本書は、日本に統治され日本人として大陸の中国人とは敵国同士という立場で干戈を交えることになった台湾の人、国共内戦に敗れ台湾に逃げ込んできた国民党や大陸出身の中国人などの歴史を描いたものです。この百年の台湾の歴史を知るにはもってこいの本です。

同書は著者・龍應台さんが、台湾のこれまでについて息子に語るという体で書いたものですが、より自分の家族の歴史について語ったのが『父を見送る』となります。

以上のに作品はノンフィクションですが、そんな台湾を小説に仕立てのが『神秘列車』と『歩道橋の魔術師』の二作品です。どちらも少し前の台湾の様子を生き生きと、抒情溢れる筆致で描いています。中国大陸の作品と、同じ中国人だなと感じる部分と、やはり大陸とは違うな、と感じる部分、どちらもあります。

 

そして、その台湾の現在ということで、最初に挙げた二作品。台湾についての紀行エッセイ、特派員や学者がまとめて新書や文庫などはいくつも出ていますが、ここに挙げた本を一通り読んでいただければ、かなり多角的に台湾について知ることができると思います。

『一房の葡萄』か……

フジテレビ系のドラマ「早子先生、結婚するって本当ですか?」の中で、松下奈緒演じる主人公・早子が悩んだりすると読み返す本が有島武郎の「一房の葡萄」です。使われているのは岩波文庫版ですね。他にも手に入る版があるのか知りませんが、こういうのも何かの縁、機会があれば一度読んでみようかなと思いました。

ドラマの設定では、早子は何かというとこの本を繰り返し繙いているようです。今回の放送でも川栄李奈演じる早子の妹から「お姉ちゃん、また『一房の葡萄』読んでるでしょ?」という指摘がありました。

世間の本好きの方って、意外と何度も読み直す本があるようですね。あたしは、読み直すということはほとんどありませんが、そういう人ってお気に入りの小説を学生時代に読んだ後も社会人になってから読み直すようです。人生に行き詰まったとき、本が助けてくれるというのはよいことだと思いますし、そういう本を一冊でも持っているというのは大事なことかもしれません。

あたしの場合、上に書いたように読み直すということはなく、「あれ、確か前にも似たようなストーリーの作品を読んだな」と思ったりしたときに、それを確認するためにパラパラとページをめくる、該当箇所を確かめる、という程度のことはありますが、人に聞かれて、何度も読み返す本はありますかと問われても、ありません、としか答えようがないです。

それでも、あえて答える、無理矢理ひねり出すとしたら『韓非子』でしょうか。タイトルからもわかるとおり、中国の古典です。思想書です。『論語』とか『老子』などの仲間と思っていただければ、当たらずといえども遠からずです。

   

いま現在、簡単に入手できる翻訳は岩波文庫だけなのでしょうか? 徳間文庫や中公文庫などにも以前は翻訳が入っていたのですが、現在は品切れになっているみたいです。もったいないことです。

この『韓非子』とあたしの関係についてはこちらを読んでいただければと思います。

2016年6月12日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー