ネタがいっぱい?

龍彦親王航海記 澁澤龍彦伝』が朝日新聞の読書欄に載りました。これで四つの全国紙すべてで紹介されたわけです。

今回の評者は出口治明さん。個人的にはちょっと意外でした。歴史ものであれば、これまでもしばしばご紹介いただきましたが、文芸作品で出口さんとは! なおかつ、ご自身の読書エピソードもなかなか興味深いものでした。

さて、本書は第四刷が底を尽きかけ、既に第五刷に入っています。今月下旬には出来予定ですので、在庫が少なくなっている書店の方、補充をよろしくお願いします。

続きましては、同じく朝日新聞の国際面、中国とミャンマーに関する記事です。

ミャンマーと言えば民主化の指導者アウン・サン・スー・チーさんの評判がこのところガタ落ちで、ロヒンギャの問題もあり混迷を深めている感がありますが、大国・中国とインドの間にあるその地政学的な重要性はむしろますます高まっていくのではないでしょうか?

そんな国際情勢を読み解いたのが『ビルマ・ハイウェイ 中国とインドをつなぐ十字路』です。その楊展は「中国とインドをつなぐ十字路」というサブタイトルによく表わされていると思います。

最後も朝日新聞、別刷beです。

エスペラントについての記事が載っていましたが、いま密かなブームなんでしょうか? 知りませんでした。いや、ジュンク堂書店難波店の語学書コーナーで大々的にプッシュしているのを見たことがありましたけど……

となると、こちらも『ニューエクスプレスプラス エスペラント語』をお薦めしないとなりませんね。ちなみに、《ニューエクスプレスプラス》シリーズの体裁に合わせて「エスペラント語」というタイトルになっていますが、本来は「エスペラント」と言うのが正しいそうですね。確か「サンスクリット」も「サンスクリット」であって「サンスクリット語」ではなかったと思います。

3冊ではなく3点!

毎年年末の恒例、朝日新聞読書面の《今年の3冊》です。

あたし、これまで何気なく《今年の3冊》と読んでいましたが、紙面を確認すると《書評委員が選ぶ「今年の3点」》なんですね。失礼しました。

  

さて、居並ぶ書評委員の方の3点にあたしの勤務先の書籍は選ばれているか探してみましたら、この3点(!)が選ばれていました。

まずは出口治明さんが『ゴルバチョフ(上)』『ゴルバチョフ(下)』を選んでくださいました。

冷戦を終結させたソ連の最高指導者の伝記だ。政治と倫理は結合できるという確信と暴力の否定が彼の政策を深層で支える倫理的基盤だったが、そのような革新的な政治家が全体主義国家で生まれたこと自体が大きな謎だ。資料も精査されており一気に読ませる傑作だ。

次に、長谷川眞理子さんが『かくしてモスクワの夜はつくられ、ジャズはトルコにもたらされた』を選んでくださいました。

1872年にアメリカ南部で生まれた黒人、フレデリック・ブルース・トーマスが、アメリカを飛び出し、興行師として20世紀初頭のロシア、ヨーロッパ、そしてトルコ活躍する波瀾万丈の生涯の伝記。力と希望がもらえる。

最後に、横尾忠則さんが『ピカソとの日々』を選んでくださいました。

ピカソの伝記を2冊評したが、どちらも知られざるピカソの内実が。かつてのピカソの愛人フランソワーズ・ジローと、娘のマヤの長男という身内によって書かれただけに愛憎こもごも、読者にとっては大変興味深い。①(『ピカソとの日々』)の著者ジローはピカソによって訴えられることになるが、結局ピカソは敗訴することになる。

果たして全体の中で3冊は多いのか少ないのか、いずれにせよこれだけたくさんの本が出ている中で選んでいただいたことに感謝です。問題はこれらの書籍、現在書店の店頭に在庫はあるでしょうか?

評判がよいみたい

昨日の朝日新聞夕刊です。

渋谷で上演中の舞台「キレイ」が紹介されていました。

既に何度目かのリバイバル上演、そのたびにバージョンアップしているのですが、今回も更に磨きがかかっているようです。こうして毎回変わっていくから、以前の舞台を見た人もまた見に行こうという気持ちになるのでしょう。

そして今回、それでなくともチケットの取りづらい舞台なのに、神木隆之介と生田絵梨花という人気者が主演ですからますますチケットが取れなくなっているようですね。立ち見もあるという噂も聞いていますが……

チケット取れなかった方は、ぜひ書籍版『キレイ 神様と待ち合わせした女[2019/2020]』で雰囲気だけでも感じていただければと思います。

著者来日

今朝の朝日新聞読書欄です。台湾の人気作家、龍應台さんが登場しています。

先日来日され、トークイベントもありました。恐らく、その折りに取材したものでしょう。朝日新聞の記事やトークイベントは、新刊『永遠の時の流れに 母・美君への手紙』に合わせたものですが、記事中にもあるように龍應台さんと言えば、あたしの勤務先から刊行している『台湾海峡一九四九』『父を見送る』です。特に『台湾海峡一九四九』は日本でも話題になり、非常によく売れました。

この三つで三部作完結ということでのインタビューのようです、まさに激動の時代を生き抜いてきた一族、家族ということがわかります。

同じく一族を描いた三部作として思い出されるのは、ユルスナールの『追悼のしおり』『北の古文書』『なにが? 永遠が』の《世界の迷路》三部作ではないでしょうか? 両者の性格や書きぶりはまるで異なるものではありますが、一族の物語という点では共通するのではないでしょうか?

このタイミングで!

朝日新聞に大きくゴルバチョフのインタビュー記事が載っていました。ゴルバチョフと聞いても、若い方はピンと来ないかもしれませんね。あたしくらいの世代ですと、停滞するソ連をなんとか蘇らせようとした改革者というイメージがあります。

 

となると、記事と併せて読んでいただきたいのがこちら、『ゴルバチョフ その人生と時代(上)』『ゴルバチョフ その人生と時代(下)』です。

どんな本かと言いますと、

「冷戦終結30年」にして解明される、ゴルバチョフという「謎」。ソ連改革から解体へと導いて「世界を変えた男」を、人間味豊かに描く。ピュリツァー賞と全米批評家協会賞受賞の歴史家による、評伝の決定版

と公式サイトの紹介文にあります。今年は昭和が終わって30年、中国の天安門事件から30年、そしてベルリンの壁崩壊から30年という節目の年。30年前の世界史的な動きのキーバー村の一人がこのゴルバチョフなわけです。

この機会に、年末年始に読書に如何でしょうか?

間接的に紹介されている?

昨日の朝日新聞夕刊です。

今年の演劇会を回顧する記事が載っていました。そう言えば、今年の漢字も発表されましたが、もうそんな季節、年の暮れが迫っているのですね。

さてこの中で三人中二人が「プラータナー」を挙げています。これってタイと岡田利規さんのコラボのような作品だったと記憶していますが、書籍はあたしの勤務先から刊行されています。それが『憑依のバンコク オレンジブック』です。

これは単純な戯曲の本ではなく、「国際共同制作プロジェクトの公式ガイドブック」でもありますので、バンコク観光案内や対談、論考なども含んだ、一見すると旅行ガイドのような作りになっています。ご興味のある方は是非どうぞ!

続いては、小泉環境大臣のスピーチも日本ではニュースになりますが、世界的には化石賞を受賞したという点の方が取り上げられる環境問題の話題。ブラジルの大統領がグレタさんを揶揄したと取られかねない発言をしたとか……

その問題の発言に登場するポルトガル語が「ピラリャ」です。ポルトガル語に不案内なあたしにはどんな綴りなのかもわかりませんが、たぶん、これではないかと思われる単語を辞典で調べてみました。

朝日新聞の記事には「日本で出版されているポルトガル語辞典では「ピラリャ」は「子ども、小柄の人」と説明されている」とありますが、あたしの勤務先から出ている辞典にも同様の説明がありました。

いや、「子供」と「子ども」という表記の違いはありますが、朝日新聞の説明そのまんまの記述です。

ということは、朝日新聞が言う「日本で出版されているポルトガル語辞典」とは、あたしの勤務先から刊行されている『現代ポルトガル語辞典[3訂版]』のことではないでしょうか?

ちなみに問題の「ピラリャ」は、日本のサイトでは綴りを載せているところがほぼ皆無だったので、英語のサイトなどを調べに調べて「pirralha」ではないかと当たりを付けてみたのですが、あっているのでしょうか?

こうして見てみますと、ポルトガル語って綴りも難しいですし、発音記号も英語とはまたちょっと違うものがあったりして素人には手強いです。

で、ポルトガル語に興味を持たれた方、これを機に勉強してみようと思った方、辞書を選ぶなら『現代ポルトガル語辞典』ですよ!

また行ってみたいなあ~

本日の朝日新聞夕刊です。

八戸ブックセンターが紹介されています。

ここは本屋のような本屋でないような、ちょっと変わった、独特なお店です。数年前の人文会の研修旅行で行ったことがあります。八戸市が本に対する取り組みに力を入れているからこそ、こういった施設ができたようです。

記事にも登場している音喜多さんには、以前『人文会ニュース』に寄稿していただいたこともあります。八戸ブックセンターについて書いていただいているので、朝日の記事に興味を持たれた方は、是非『人文会ニュース』もご覧くださいませ。WEBで読めます。

日本経済新聞で『房思琪の初恋の楽園』が紹介されました

昨日の日経の読書欄です。

房思琪の初恋の楽園』が紹介されました。

少し前の、李琴峰さんの評もそうですが、本書は紹介するのが難しい小説だと思います。「おもしろい」と言ってしまうと、この切なく苦しい、そしてあまりにも忌まわしい作品世界を茶化しているように聞こえてしまいますし、こういう作品を「おもしろい」と表現するのもどうかと思います。

ただ、そういう意味の「おもしろい」ではなく、「極めて興味深い」「読み始めたら止まらない」という意味で「おもしろい」を使うのであれば、まさしくそのとおりだと言えます。

裏切りと地獄とか、そんな評が多いのに「初恋の楽園」とは皮肉なタイトルを著者はつけたものです。果たしてファン・スー・チーに二度目の恋は訪れるのでしょうか?

文学が凶器に、楽園が地獄に

少し前になりますが、大手全国紙ではなく、各地の地方紙に李琴峰さんによる『房思琪の初恋の楽園』の紹介記事が掲載されました。李さんは刊行時のイベントにも登壇してくださいましたので、通信社が依頼をしたのではないかと思われます。



紹介文の中で李さんは「そんな一方的な願望をあざ笑うかのように、本作では文学がいとも簡単に凶器に変貌する」と指摘しています。それなのに主人公を追い詰める文学の装いだけは典雅なままです。「文学が暴力に、楽園が地獄になる様を目の当たりにした時、読者は戦慄を覚えずにはいられない」との感想はまさにそのとおりです。

ところで、楽園とは何だったのでしょう? 主人公たちが住んでいたマンションのわけはないですが、世間から見るとそれは紛れもなく楽園に見えているようです。あるいは台北で主人公と幼馴染みが住んでいた部屋、あるいは主人公をレイプした李国華のマンションのことなのでしょうか?

しかし、楽園とは追放されるところ、地獄に落ちる入り口だと、アダムとイブのころから決まっているのだとしたら、なんとも皮肉なタイトルだと思います。

それにしても、この作品はすごい作品です。

隣国の素顔を知る

今日の朝日新聞夕刊です。

夕刊なので関東ローカルの記事だと思いますが、とても嬉しい記事です。アカデミアくまざわ書店橋本店で開催中の韓国文学フェアの記事です。

「「嫌韓本」が多くの書店の店頭に並ぶ今だからこそ、隣国の素顔を知ることのできる本に触れてほしい」

全くそのとおりだと思います。惜しむらくは、この記事に、土曜日に神保町が行なわれたK-BOOKフェスティバルについても触れていれば、なおよかったのにと思います。とはいえ、まずはごくごく普通の市民の目線でお互いを見つける手掛かりとして文学作品が手に取ってもらえればなによりです。