ついつい気になってしまうものです

あ本日は、もう一点、見本出しがありました。それがこちら。

金子兜太戦後俳句日記』です。

全三巻のうちの第一巻で、第二巻は8月、第三巻は来年2月に刊行予定です。半年に一冊と覚えてください。

ご覧のように函入りの一冊です。お値段も本体価格9,000円とやや高額です。しかし既に全巻予約、定期購読の注文や問い合わせが届いております。金子兜太さんの人気、畏るべし、です。

函から出すとビニールカバーの掛かった上製の本が現われます。月報もつきます。

あれ、ふと思ったのですが、半年に一度出る本なのに「月報」という呼び方は正しいのでしょうか? しかし、まさか「半年報」と呼ぶわけにもいきませんし、こういったものは「月報」と誰もが思い込んでいるわけですし、これで誤解されることもないでしょうから、構わないのでしょうね。

ところで、今回の第一巻は「一九五七年~一九七六年」を収録しています。なんと、あたしの生まれた年が含まれているではないですか!

というわけで、早速、あたしの生まれた日に、兜太さんはどんな日記を書いているのか、どんな句を詠んでいたのか見てみました。それが右の写真です。

うーん、句はないようです。

原爆なんていう言葉が出てきますが、このころですと「もう戦後は終わった」という感覚なのか、まだまだ戦後が続いているという感覚なのか、生まれたてのあたしにはわからないところです。

より身近に感じられましたが……

ヒョンナムオッパへ 韓国フェミニズム小説集』、いよいよ本日、見本出しです。配本は20日ですので、来週後半には店頭に並び始めるのではないかと思います。筑摩書房の『82年生まれ、キム・ジヨン』を買われた、読まれた方には是非お薦めです!

『82年生まれ』の著者チョ・ナムジュさんの作品が「ヒョンナムオッパへ」で、本作の巻頭を飾る作品です。こちらは短篇なので取っ付きやすいのではないかと思います。そして、それ以外にもさまざまな作家の作品が全部で7作品収録されています。タイトルを眺めながらどれから読もうか考えるひとときも、読書(特に短篇集)の醍醐味だと思います。

さて、ここで先入観を与えてはいけないと思いつつも、『82年生まれ』と『ヒョンナムオッパへ』だとどっちが面白い、という営業回りで聞かれそうな問いにあたしなりにお答えしたいと思います。

でも、『ヒョンナムオッパへ』は未刊ですからお読みになっていない方ばかりでしょう(原書で読んでしまった方もいるのでは?)から、裏表紙の帯をご覧いただきましょう。どんな内容の作品なのか、少しはご理解いただけるでしょうか?

という前置きはこのくらいにして、問いに対する答えですが、『82年生まれ』と『ヒョンナムオッパへ』とでは身近さに距離があると感じました、あくまであたし個人の感想です。『82年生まれ』はちょっと遠いです、こういう喩えがわかりやすいかどうかなんとも言えませんが、隣のクラスメートという感じです。顔は知っているし、一回くらいは話したことがあるかもしれないけどよくは知らない人、という感じです。

それに対して『ヒョンナムオッパへ』はよく話をする同じクラスの人です。日常的な会話もあるし、ある程度はどんな人なのかも理解しているつもりという感じです。

なので、だからこそ、『ヒョンナムオッパへ』の方が切実であり、よりリアルに感じられ、読んでいて辛い部分がありました。この気持ち、わかっていただけますでしょうか。いや、わかってもらえなくてもよいです。とにかく読んで何かを感じていただければ、それで十分です。

後れているとかいないとかの問題ではありませんが……

来週には『82年生まれ、キム・ジヨン』の著者チョ・ナムジュさんが来日し、新宿の紀伊國屋ホールで特別対談が行なわれます。そのタイミングで、あたしの勤務先からも『ヒョンナムオッパへ 韓国フェミニズム小説集』を刊行します。短篇集で、チョ・ナムジュさんも執筆者の一人です。

こんな感じで、韓国の女性作家の作品がちょとしたブームになっていて、先日の関西ツアーの時も、このようなフェミニズム系の作品を集めてフェでもやりたいね、という話を書店の方としておりました。韓国の女性作家という縛りでやるか、フェミニズムという括りにして広く作品を集めるか、そんな話題で盛り上がりました。

ただ、落ち着くところとしては、最近やはり刊行が盛んな台湾の作品なども加えたいとなり、またフェミニズムとかLGBTQを表に出すと拒否反応を示す読者もいるかも知れないから、ぼんやりと「いま読みたい、アジア作家フェア」といった看板のフェアがよいのではないかと、なんて話していました。実際のところは、韓国、台湾、日本の作品で、差別なども含めた女性問題、LGBTQなどを扱った作品を集めてみたら、ということになりました。

しかし、韓国や台湾はそういった作品も出て来ていますが、日本の作家の作品でこういったテーマで並べられそうなものってありますでしょうか? 書店の方と話ながら、ハタと困ってしまいました。パッと思いつくものがないのです。

もちろん、あたしは文芸作品をそれほど読んでいる方ではないので知らなくても当たり前なのですが、書店の方もサッと思いつくものがないなあと悩んでいる様子。もしかして、日本ではこういったテーマで作品を発表するのがまだまだ憚られる社会なのでしょうか? そんな気までしてしまいます。

考えてみますと、韓国と台湾は、評価はともあれ、ともに国のトップに女性を戴く(戴いた)わけで、この点だけを取り上げて比較するのもなんですが、日本はずいぶんと見劣りがします。

ちなみに、大陸中国は共産国家になってからは女性の社会進出が進み、男女共働きは当たり前、実際には差別はあるようですが、表面的には女性の幹部も目につきますし、同じアジアとはいえ、ちょっと異なるようですね。

イノシシとどうつきあうか?

今朝の朝日新聞別刷beの記事です。

今年は亥年なのでイノシシに関する話題も多いですが、イノシシというと「畑を荒らした」「街中に現われた」といったニュースばかりで、あまりよいニュースを聞くことがないような気がします。干支に選ばれているくらいですから、日本人にとってもっと身近で親しむべき動物なんだと思いますが……

そんなイノシシとのつきあい方を考えるのにもってこいの一冊があります。『イノシシ母ちゃんにドキドキ』です。

本書の内容紹介をウェブサイトから引用しますと

日本初! 1年半にわたる野生のイノシシ一家との付き合いを、ユーモアたっぷりに活写します。舞台は、大分は高崎山の東麓にある著者の里山。2010年秋、竹山から著者を見下ろしている母イノシシに遭遇したのが発端。「五匹の仔猪も小さな尻尾をピンと立てて控えておったのじゃ。一、二時間黙って座ったままのワシに安心したのか、斜面をぞろぞろ降りて来て、ワシに向かって横並びに勢揃いしたんじゃわ。距離にして三メートル。ワシ、嬉しさでドキドキが高ぶるばかりでしたわぁ」 こうしてほぼ毎日の生態観察により、イノシシは「猪突猛進」の獰猛な動物ではなく、恐がり屋で、慈愛に満ちた生き物であることが判明。ウリ坊一匹ずつの個性や家族としての行動、他集団との関係、オスの行動、そしてサバイバル術を伝授する母イノシシの細やかな子育てぶり等を絶妙に語ります。とりわけ、母による群からの「追出し行動」の直前にみられる「仔猪全員による母親舐め」の儀式は感動的! 著者は、長年の精力的な自然環境保全活動により「大分に菊屋あり」といわれた名物爺さん。誤解にまみれたイノシシ観を一変させると同時に、農産物被害の考え方も併せて提言。図版多数収録!

といった具合です。いま読むべき一冊ではないでしょうか?

ヴァレンタインには『ヴァレンタインズ』

あたしには縁がないですが、来週はヴァレンタインデーです。書店回りをしていると、あちらこちらで、この時季ならではのチョコが売られていて、とても美味しそうです。チョコは大好きなので、自分のために買いたくなります(汗)。

そんなヴァレンタインですが、チョコだけでなく、手編みのマフラーを贈ったり、ネクタイを一緒にプレゼントしたりという女性も多いと聞きます。

ならば、本を一緒に贈るなんてどうでしょう? ぴったりの本があります。それが『ヴァレンタインズ』です。短篇集なので読みやすいと思います。ただし、贈る時にはご注意ください。

アイスランド出身の実力派による、珠玉の第一短編集。一月から十二月まで、一年の各月の名前が冠された12編には、夫婦や恋人たちの愛と絆にひびが入る瞬間が鋭くとらえられている。

というのが本書の内容です。そうです、「ひびが入る瞬間」にフォーカスを当てた作品集なのです。「こんな本を贈ったから彼との間に溝が出来た」と言われても困りますので、この点はあらかじめご注意ください。

記事や広告から我田引水

昨日の朝日新聞夕刊です。夏目漱石と熊本に関する記事が載っていました。

記事の後半に載っている『草枕』のモデルとなった「那美」さんについては『『草枕』の那美と辛亥革命』という本を、あたしの勤務先で出しております。

しかしながら在庫がない状態でして、重版の可能性はあるのでしょうが、今すぐにということにはなっておりません。せっかくこういう記事が出たのに残念です。

ウェブサイトには

父は自由民権派の闘士、養子は漱石の弟子前田利鎌、妹の夫は宮崎滔天。孫文・黄興・宋教仁ら亡命革命家を支援し、男女同権の志を貫き生きた一女性の、波乱の生涯を描き切る力作評伝。

という内容紹介が載っています。まさしく、今回の朝日の記事にドンピシャリの本だったのです。たぶん在庫があれば、小さくとも紙面の片隅で紹介されていたのではないでしょうか? うーん、残念。

続きましては、今朝の紙面、岩波書店の広告欄にご注目。

岩波ブックレットの『うつ時々、躁』が紹介されています。

その紹介文の中に「双極性障害」という言葉が見えるのにお気づきでしょうか。少し前に文庫クセジュで『双極性障害』を出したところです。

岩波ブックレットも文庫クセジュもどちらも書店ではそのコーナーにまとめておいてあることが多いですが、心理学などのコーナーに置いてもらえると効果的だと思います。

あれよあれよと重版です

新刊『我的日本 台湾作家が旅した日本』の紹介が続いたため注文が伸び、お陰様で重版となりました。

 

本書は台湾作家のエッセイということで、海外文学の棚に置いてある書店も多いですが、もし「紀行、旅エッセイ」という棚があるのでしたら、試しに置いてみては如何でしょうか?