「降伏」か「解放」か

ドイツの終戦、「降伏」か「解放」か

朝日新聞の見出しです。ドイツが第二次世界大戦に降伏した日ということになっているそうですね。というわけで、ナチス・ドイツ、第三帝国が崩壊に至る過程にかかわる本をいくつかご紹介します。

まずは『ベルリン陥落 1945』です。700頁弱の大著です。著者はアントニー・ビーヴァー、もうこのジャンルではお馴染みの大家です。

本書はタイトルどおり、ベルリン攻防戦を描いた歴史ノンフィクションです。

続きましては、ベルリンが陥落し、もう後がないと悟ったヒトラーの死に至る『ヒトラーの最期』です。

独ソ戦にドイツ語通訳として従軍した女性の体験記です。通訳として現場に立ち会っただけでなく、当時の街の様子や人々について克明な記録を残してくれています。著者が女性であるということも驚きであると共に、男性とは異なる視点で戦争の修羅場を見つめています。

その他、第二次世界大戦全局を扱った三巻本の通史から、鋼板を扱う『第二次世界大戦1939-45(下)』、浩瀚なヒトラーの評伝決定版から『ヒトラー(下) 1936-1945 天罰』も併せて読まれると理解が更に進むことと思います。

読書欄に大きく載っています

今朝の朝日新聞読書欄です。

トップに掲載の一番大きな書評は『トマス・ジェファソン(上)』『トマス・ジェファソン(下)』でした。評者は宇野重規さん。

今年は秋にアメリカ大統領選挙を控えていますので、今後もアメリカ大統領に関する書籍は増えてくると思いますし、紙面の記事、テレビの特集でも取り上げられるでしょう。現実の情勢分析が一番の関心事かと思いますが、アメリカ大統領とは何なのか、改めて考えてみるのにこういう評伝はもってこいではないでしょうか?

ケネディやワシントン、リンカン、ルーズベルトあたりですといろいろ関連書も出ていると思いますので、これまで評伝など出ていなかった大統領、日本人になじみの薄い大統領の書籍などは要注目だと思います。

でも、ジェファソンは決して無名の大統領というわけではありませんね。名前くらい聞いたことはある人は多いのではないでしょうか。もちろん何代目の大統領なのか自信を持って言える人は少ないかも知れませんが……

自分の再選に向け、とにかく敵を作りたくて死に物狂いの現大統領と引き比べて読んでみるのも如何でしょうか?

さて、本日の読書欄で注目なのはもう一点、こちら、『保健室のアン・ウニョン先生』です。

いま大人気の韓国小説の一つです。あたしもいま読んでいます。とても面白いです。

霊が見えるというアン・ウニョン先生が学園の魔を退治すると聞けば、ちょっとホラーテイスト(?)の作品なのかという気もしますが、怖さはまるでなく、むしろほのぼのとした空気さえ漂っています。評にもあるように、学校に巣喰う魔とは韓国社会の闇、生徒たちの閉塞感などの比喩なのでしょう。

しかし、アン・ウニョン先生、飄々としつつも必死で、だからこそ滑稽です。そして何よりも面白いと感じるのは霊を退治する道具立てです。日本であれば、作品によるのでしょうけど、もう少しおどろおどろしい感じを演出するのではないかなあと思いつつ、このあたりの軽さが本作品の魅力でもある気がします。

帯にはTVドラマ化とあります。ぜひ日本でも放送してほしいものです。

二度手間を何とかしたいのですが……

一週間ぶりの出社でした。

このところかかってくる電話のほとんどは教科書の注文です。

先月末にもこの話題について書きましたが、そのころは学生さんが直接購入したいという電話、問い合わせが多かったのですが、ここへ来て書店からの注文が増えてきました。

大学の授業で使う教科書、あたしの勤務先の場合は中国語や韓国語、フランス語といった語学(第二外国語)の教科書がほとんどなのですが、これには本文の日本語訳とか練習問題の解答などは付属していません。あくまで先生に指導してもらうということを前提に作っているからです。

学生の方からの直接の電話であれば、その点はわかっているのですが、間に書店を介しますと、果たしてそこのところが伝わっているのか不安になります。「大学へ行けないので学内の書店で買えないから」という学生の注文であれば問題ありませんが、語学に興味を持っている一般の方が何かの機会にこういった書籍を知り、自分でもやってみよう(独習しよう)と買ってみたものの本文の日本語訳はない、練習問題はあるのに解答がない、ということで後から問い合わせがあったりするのです。

そういう事故(?)を防ぐために、あたしの勤務先では教科書の注文が書店から入ったときには必ず上記の点を確認するようにしています。そうすると、書店の方はもう一度注文主に確認することになります。お客さんがその場にいるのであればすぐに確認できませんが、そうでない場合は一度電話を切り、お客さんに連絡を取って確認し、再度あたしの勤務先へ電話を掛けてくることになります。

この手間、お互いに何とかしたいところです。ウェブサイトに

また、教科書の場合は練習問題の解答をご用意しておりませんので、その旨ご了承いただいていることを書店様へお伝えいただけると、ご注文がスムーズです。

という但し書きを載せていますが、ここまで確認して本屋へ行っている方がどのくらいいるのか、なんとも心許ないところです。なんとかしたいのですがねえ、うまい方法はないものでしょうか?

バスク!

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こんどの講義はハイデガー

連休明け、今月半ばには配本になる『ジャック・デリダ講義録 ハイデガー』と既刊を並べてみました。

これまでに

ジャック・デリダ講義録 獣と主権者Ⅰ
ジャック・デリダ講義録 獣と主権者Ⅱ
ジャック・デリダ講義録 死刑Ⅰ

が刊行になっていますので、これが四冊目になります。いずれ『死刑Ⅱ』も刊行になるはずですので、しばしお待ちください。

短篇集収録作品の一つです

今朝の朝日新聞です。「折々のことば」で韓国の作家ハン・ガンの作品が引用されていました。

しかし出典をよく見ると『明るくなる前に』ではなく「明るくなる前に」となっています。つまり書名ではないということです。ということは、短篇集や中編集など何編か収録された書物の一篇だろう、あるいは雑誌に発表されたものか……

と予想をつけて、あたしの勤務先から出ているハン・ガンの『回復する人間』の巻頭を飾る一編が「明るくなる前に」でした。

ハン・ガンの作品はいくつも邦訳されていますが、本書は短篇集ですので取っ付きやすいと思います。外出自粛のいま、自宅読書の時間の相手に如何でしょうか?

本を買うという体験

勤務先にて、最近の問い合わせで多いもの、それは教科書の購入についてです。教科書と言っても、いわゆる小中学校で使われる、文科省検定の教科書ではありません。大学の一般教養、語学の授業で使われるテキストの話、業界では「採用品」と呼ばれています。

その語学の教科書、例年ですと大学内にある書店、大学生協とかブックセンターと呼ばれるようなところで買ってもらうわけです。しかし今年は多くの大学でオンライン授業になっていて学生は大学キャンパスへ入ることもできなくなっています。

オンライン授業用の電子テキストとか教材のウェブ公開については著作権の弾力運用だとか、いろいろ施策も出ていますが、とにかく学生としてはテキストを手に入れなければなりませんし、教員としてもテキストを手に入れてもらわなければ話になりません。この点は他の一般教養科目と語学科目の違いかも知れません。

で、例年なら大学内の所定のところへ行って授業名や教員名を言えば、迷うことなく「それなら教科書はこれです」と言われ、それを疑いもせずに買うわけです。それでよいのです。しかし、今年はそんな「所定のところ」へ行くことができません。大学生協によっては学生へ直送するサービスをやっているところがあるとか、ないとか……

しかし、多くの学生は教員からの指示に従い、自分で本屋へ行って所定の教科書を買うことになっているようです。「本屋で本を買ってこい」と言われて、そんなことをしたことない学生も、昨今だと多いのでしょうね。まずはアマゾンを覗いてみるようです。しかし、アマゾンは日用品優先になっていて、多くの出版社の書籍が在庫切れ、入荷未定となっています。

「アマゾンで在庫切れ=品切れ」と思い込んでしまう人があまりにも多くて、業界人としてはそこの誤解をまずは正していかないとならないのですが、大学授業用のものですから、アマゾンに限らず一般の本屋さんでも普段は置いてなんかいません。注文取り寄せというのが基本なのです。大学内の「所定のところ」はあらかじめ教員から指示されているので学生の人数分を揃えて待っているわけであって、それが非常に特殊な本の売り方だと、やはり学生の方々に理解してもらうのは困難なようです。

で、うだうだ書いてきましたが、大学へ行けない、アマゾンも品切れ、近所の書店へ行っても置いていない(否、近所の書店は休業中だった!)となると最後の手段は直接出版社へ連絡だ、となります。というわけで、このところ電話が多くなっているのです。

学生の方からすると不親切と思われるかも知れませんが、あたしの勤務先の対応は、まずはオンラインでもリアルでも書店にご注文くださいと案内します。学生さんがいう教材はほぼ間違いなく品切れになっていることはなく、潤沢に在庫がありますので注文すれば取り寄せることができます。しかし、アマゾンの在庫切れの呪縛がなかなかのもので、どうやったら買えるのか、というところで引っかかってしまうようです。

その次は、直接販売ということになるのですが、あたしの勤務先の場合、まず先に郵便振替で代金を支払ってもらう形を取っています。そして送料もかかります。この方法がベストではない、お客さんにとっては不親切だしハードルも高いというのは重々承知しています。改善しなければならない最大の障壁だという自覚はあります。しかし、こればっかりはすぐに明日から変えられるものでもなく、現状ではこの方法になります。

そこで郵便振替の口座番号などを伝えるのですが、そもそも自分で郵便局へ行って振り替えなんてやったことがない、振り替えの用紙なんて見たことがない、という学生さんも多いようで、こちらの言っていることが正確に伝わっているのか電話口で不安になることもあります。振替用紙同封でこちらから先に送るということはしていないのですが、これも早くテキストを手に入れたいお客さんにはもどかしいところでしょう。

今回のコロナウイルス騒ぎで、日常業務の不備というか至らぬところが見えてきたわけです。やはりサービス業ですから、どれだけ読者にサービスを提供できるかという点にもっと注力していかなければならないんだなあと改めて自覚した次第です。