県を跨いだ移動

非常事態宣言が解除になったので、ちょっと揚げ足取り的なことを書いてみたいと思います。

来月半ば過ぎまでは県を跨いだ移動は控えてください、というのが解除に当たっての注意事項的に告げられました。そうなると、幸いにもあたしは大丈夫なのですが、あたしの勤務先でも出社できなくなる人がいます。埼玉県や千葉県、神奈川県在住の人がそこそこいるのです。

でもまあ、こういう出勤のための越境は認められているのですよね? そうでないと全国の県境に住んでいて隣の県にお勤めの人は動けなくなってしまいますから。東京だと、埼玉に住んでいて神奈川県内に出勤する人とか、関西なら神戸の人が京都の会社へ出社するとか、そういった事例は枚挙に暇がないはずです。しかし、会社としてそういう社員の出社を制限している場合とは別として、基本的には許容の範囲内だと見なされているようです。

しかし、それでも例の「自粛警察」が他県ナンバーの車にいたずらをしたといったニュースがありました。「営業車です」と紙に書いて貼っておかないとうっかり駐車もできません。

では、あたしの仕事である書店回りはどうなのでしょう? 都内の書店なら訪問してもよいけど、神奈川など他県へは行ってはいけないのでしょうか。あたしは神奈川県も担当エリアなので、神奈川へ行ってもよいのか否かはかなり重要なことです。ちょっとくらいならよいのでしょうか?

例えば、あたしの担当地区になりますが、小田急沿線の場合、町田までは東京都だからOKだけと相模大野は神奈川県だからダメ、ということになるのでしょうか? いや、町田まで行く手前に新百合ヶ丘があるけど、あそこは神奈川県だから途中下車して営業してはいけないのでしょうか?

もし本当に他県へ入るなということが徹底されたら、あたしは登戸から南武線に乗って帰ることもできなくなりますね、登戸駅は神奈川県ですから。いや、駅構内から出なければ、乗り換えだけなら大丈夫なのでしょうか?

「コロナ後」の書店営業とは?

5月の最終週が始まりました。そして本日のあたしは在宅ワークです。今週も出社は火曜と金曜のみの予定です。

あたしの勤務先のコロナ対策体制は、一応今月いっぱいということになっています。在宅勤務を活用すると共に、出社する場合も早めに来る人、遅めに来る人などがいて、社内で密を作らないようにやってきましたが、それも今週で終わるのでしょうか?

今のところ会社側からこの体制の延長は発表されていませんし、来襲からは通常営業という発表もありません。今日の政府発表、そして東京都の発表を受けて上層部で検討・決定されるのだと思います。

基本は通常に戻ることになるのでしょうが、感染が治まったわけでもなければ、ワクチンや治療薬が出来上がったわけでもない現状では、通常と言ってもコロナ以前と全くイコールになるとは思えません。しばらくは密を避けるとか、柔軟な対応が必要になってくるのではないかと思います。それが「新しい生活様式」ならぬ「新しい働き方」なのかも知れません。

しかし、たとえば営業部の場合、受注と出荷の業務があるので、在宅では仕事になりません。もちろん、この機会に受注と出荷を外部の業者に委託してしまうという選択肢もあるのでしょうし、既にそういう体制を取っている出版社も多いです。まあ、そこまでの変更はいきなり出来るものでもありませんから、とりあえずは考慮外となりますが……

個人的に気になるのは書店回りです。こちらが訪問するのはよいとして、書店の側がどう思うか、という問題があります。書店によっては「当面の間、来店しての営業はご遠慮ください」というところもあるでしょうし、「棚のメンテもあるので、宣言が解除されたら是非来てください」という書店もあるでしょう。

逆に出版社の側が自主的に「しばらくは書店回りは自粛する」と決めているところもあるでしょう。こういったところが、来月からと言うのは時期尚早としても、7月や8月くらいからかつての状況に戻るのかと問われると、なんとも言えません。

かといって、あたし自身にそれ以外の営業のやり方がアイデアとしてあるかと問われても、これまたこれといった方策を持ち合わせていないのが正直なところです。やはり、これまでどおり丹念に書店を回って棚を見て、お店の人と話をして、自社の本をお薦めする、そんなことしかあたしには出来そうにありません。

「アフターコロナ」の書店営業とは、どいったものになるのでしょうか?

本を売るのは大変?

一部地域で緊急事態宣言が解除されそうな様子ですね。本屋さんはどうなるのでしょう? いわゆる街の本屋さんは営業しているところもあると聞きますが、大型店はテナントビルに入っていることが多く、そのビルが休業・休館していると書店だけ営業するわけにもいかず、相変わらず多くの書店が閉まったままです。首都圏で見ますと、本屋ってルミネを始めとした駅ビルやデパートに入っているところが多いのだと改めて気づかされます。

さて、こんな状況下、既に何度かこのダイアリーでも書いていますが、直販が伸びています。書店からの問い合わせも多いです。そして注文される商品はもっぱら大学第二語学クラス向けのテキストです。本来なら大学生協や学内の書店で買うはずが、学校へは入れない、授業はオンライン、先生からはテキストを準備するように指示がある、ということで近所の書店に殺到しているようです。こういう商品の場合、ネット書店も決して早くはないですし、果たしていつ届くのか、散々待った挙げ句品切れでしたという回答が来るかも知れないという可能性もあり、却ってリアル書店が使われているようです。

大学生協によっては学生個人に発送しているところもあると聞きますが送料はどうしているのでしょう? それに万単位の学生と必要な教材の組み合わせ(授業の履修の仕方?)を考えると気が遠くなるような作業です。送料をもらっても手間暇を考えると引き合わないのではないかと思ってしまいます。

あたしの勤務先でも郵便振替で代金(と送料)を送ってもらえば発送することはしていますが、郵便局で振り替えをするという行為にいまの学生は慣れていないようです。いまやあらゆるところで電子決済ですから、本気で直販を伸ばすのであれば、このあたりの対策も考えないとなりませんね。

既に直販を大々的にやっている出版社もありますが、これまではなんとなく「本は書店で売る・買う」という前提があるので、出版社が読者に直接販売するのは遠慮がちなところがありましたが、今後は増えてくるかも知れませんね。

しかし、電子決済とかが絡むとセキュリティの問題がありますし、個人情報保護もしっかりやらないとなりません。そして、発送業務を社内でやるとなると、これは人手もそれなりに必要になりますので、人員配置にもかかわってくることでしょう。いきなり来週から始めましょう、ということにはなりませんね。

「降伏」か「解放」か

ドイツの終戦、「降伏」か「解放」か

朝日新聞の見出しです。ドイツが第二次世界大戦に降伏した日ということになっているそうですね。というわけで、ナチス・ドイツ、第三帝国が崩壊に至る過程にかかわる本をいくつかご紹介します。

まずは『ベルリン陥落 1945』です。700頁弱の大著です。著者はアントニー・ビーヴァー、もうこのジャンルではお馴染みの大家です。

本書はタイトルどおり、ベルリン攻防戦を描いた歴史ノンフィクションです。

続きましては、ベルリンが陥落し、もう後がないと悟ったヒトラーの死に至る『ヒトラーの最期』です。

独ソ戦にドイツ語通訳として従軍した女性の体験記です。通訳として現場に立ち会っただけでなく、当時の街の様子や人々について克明な記録を残してくれています。著者が女性であるということも驚きであると共に、男性とは異なる視点で戦争の修羅場を見つめています。

その他、第二次世界大戦全局を扱った三巻本の通史から、鋼板を扱う『第二次世界大戦1939-45(下)』、浩瀚なヒトラーの評伝決定版から『ヒトラー(下) 1936-1945 天罰』も併せて読まれると理解が更に進むことと思います。

二度手間を何とかしたいのですが……

一週間ぶりの出社でした。

このところかかってくる電話のほとんどは教科書の注文です。

先月末にもこの話題について書きましたが、そのころは学生さんが直接購入したいという電話、問い合わせが多かったのですが、ここへ来て書店からの注文が増えてきました。

大学の授業で使う教科書、あたしの勤務先の場合は中国語や韓国語、フランス語といった語学(第二外国語)の教科書がほとんどなのですが、これには本文の日本語訳とか練習問題の解答などは付属していません。あくまで先生に指導してもらうということを前提に作っているからです。

学生の方からの直接の電話であれば、その点はわかっているのですが、間に書店を介しますと、果たしてそこのところが伝わっているのか不安になります。「大学へ行けないので学内の書店で買えないから」という学生の注文であれば問題ありませんが、語学に興味を持っている一般の方が何かの機会にこういった書籍を知り、自分でもやってみよう(独習しよう)と買ってみたものの本文の日本語訳はない、練習問題はあるのに解答がない、ということで後から問い合わせがあったりするのです。

そういう事故(?)を防ぐために、あたしの勤務先では教科書の注文が書店から入ったときには必ず上記の点を確認するようにしています。そうすると、書店の方はもう一度注文主に確認することになります。お客さんがその場にいるのであればすぐに確認できませんが、そうでない場合は一度電話を切り、お客さんに連絡を取って確認し、再度あたしの勤務先へ電話を掛けてくることになります。

この手間、お互いに何とかしたいところです。ウェブサイトに

また、教科書の場合は練習問題の解答をご用意しておりませんので、その旨ご了承いただいていることを書店様へお伝えいただけると、ご注文がスムーズです。

という但し書きを載せていますが、ここまで確認して本屋へ行っている方がどのくらいいるのか、なんとも心許ないところです。なんとかしたいのですがねえ、うまい方法はないものでしょうか?

こんどの講義はハイデガー

連休明け、今月半ばには配本になる『ジャック・デリダ講義録 ハイデガー』と既刊を並べてみました。

これまでに

ジャック・デリダ講義録 獣と主権者Ⅰ
ジャック・デリダ講義録 獣と主権者Ⅱ
ジャック・デリダ講義録 死刑Ⅰ

が刊行になっていますので、これが四冊目になります。いずれ『死刑Ⅱ』も刊行になるはずですので、しばしお待ちください。

本を買うという体験

勤務先にて、最近の問い合わせで多いもの、それは教科書の購入についてです。教科書と言っても、いわゆる小中学校で使われる、文科省検定の教科書ではありません。大学の一般教養、語学の授業で使われるテキストの話、業界では「採用品」と呼ばれています。

その語学の教科書、例年ですと大学内にある書店、大学生協とかブックセンターと呼ばれるようなところで買ってもらうわけです。しかし今年は多くの大学でオンライン授業になっていて学生は大学キャンパスへ入ることもできなくなっています。

オンライン授業用の電子テキストとか教材のウェブ公開については著作権の弾力運用だとか、いろいろ施策も出ていますが、とにかく学生としてはテキストを手に入れなければなりませんし、教員としてもテキストを手に入れてもらわなければ話になりません。この点は他の一般教養科目と語学科目の違いかも知れません。

で、例年なら大学内の所定のところへ行って授業名や教員名を言えば、迷うことなく「それなら教科書はこれです」と言われ、それを疑いもせずに買うわけです。それでよいのです。しかし、今年はそんな「所定のところ」へ行くことができません。大学生協によっては学生へ直送するサービスをやっているところがあるとか、ないとか……

しかし、多くの学生は教員からの指示に従い、自分で本屋へ行って所定の教科書を買うことになっているようです。「本屋で本を買ってこい」と言われて、そんなことをしたことない学生も、昨今だと多いのでしょうね。まずはアマゾンを覗いてみるようです。しかし、アマゾンは日用品優先になっていて、多くの出版社の書籍が在庫切れ、入荷未定となっています。

「アマゾンで在庫切れ=品切れ」と思い込んでしまう人があまりにも多くて、業界人としてはそこの誤解をまずは正していかないとならないのですが、大学授業用のものですから、アマゾンに限らず一般の本屋さんでも普段は置いてなんかいません。注文取り寄せというのが基本なのです。大学内の「所定のところ」はあらかじめ教員から指示されているので学生の人数分を揃えて待っているわけであって、それが非常に特殊な本の売り方だと、やはり学生の方々に理解してもらうのは困難なようです。

で、うだうだ書いてきましたが、大学へ行けない、アマゾンも品切れ、近所の書店へ行っても置いていない(否、近所の書店は休業中だった!)となると最後の手段は直接出版社へ連絡だ、となります。というわけで、このところ電話が多くなっているのです。

学生の方からすると不親切と思われるかも知れませんが、あたしの勤務先の対応は、まずはオンラインでもリアルでも書店にご注文くださいと案内します。学生さんがいう教材はほぼ間違いなく品切れになっていることはなく、潤沢に在庫がありますので注文すれば取り寄せることができます。しかし、アマゾンの在庫切れの呪縛がなかなかのもので、どうやったら買えるのか、というところで引っかかってしまうようです。

その次は、直接販売ということになるのですが、あたしの勤務先の場合、まず先に郵便振替で代金を支払ってもらう形を取っています。そして送料もかかります。この方法がベストではない、お客さんにとっては不親切だしハードルも高いというのは重々承知しています。改善しなければならない最大の障壁だという自覚はあります。しかし、こればっかりはすぐに明日から変えられるものでもなく、現状ではこの方法になります。

そこで郵便振替の口座番号などを伝えるのですが、そもそも自分で郵便局へ行って振り替えなんてやったことがない、振り替えの用紙なんて見たことがない、という学生さんも多いようで、こちらの言っていることが正確に伝わっているのか電話口で不安になることもあります。振替用紙同封でこちらから先に送るということはしていないのですが、これも早くテキストを手に入れたいお客さんにはもどかしいところでしょう。

今回のコロナウイルス騒ぎで、日常業務の不備というか至らぬところが見えてきたわけです。やはりサービス業ですから、どれだけ読者にサービスを提供できるかという点にもっと注力していかなければならないんだなあと改めて自覚した次第です。

今日は在宅

あたしの在宅ワークは、基本的には水木なんですが、今日は急遽、在宅ワークに変更しました。会社から連絡があり、本日の出勤予定社が多いので、在宅可能な人は極力在宅ワークにして欲しいと要請がありましたので。

どうしても土日明けの月曜日はファクスやメールがたまりがちなので出勤しなければという意識が働くのでしょう。でも、幸いなことにと言ってよいのか、マズいことにと言った方がよいのか微妙なところですが、このところ月曜朝に届いているファクスの注文書が減っています。

やはり営業している書店が少ないことが影響しているようです。特に大都市の大型店で休業や時短営業が多く、営業している書店でも周辺の企業に在宅ワークが増えてきているのでお客さんが少ないことも原因だと思われます。そうなると無理して月曜日に出勤しなくても何とかなるものです。

できれば、あたしの勤務先の部署なども週に二日出社くらいまで持っていかないとダメなんだと思いますが、今のところは週に三日出社、二日在宅勤務という感じです。編集部がかなり在宅も進んでいるようなので、勤務先全体ではそれなりの在宅率になっているかも知れませんが、これは数字のまやかしです。

それにしても、ステイホーム週間というわかったような、わかりにくいようなネーミング。小池都知事って、なんであんなに横文字が好きなのでしょう? すぐに理解しづらい単語を使うことで庶民の警戒感を呼び起こそうとしているのでしょうか。でも、こういう時は理解しやすさを最優先すべきなのではないでしょうか? ネットのコラムで、きちんと記者会見を聞けば日本語で言い直している、非常にわかりやすい説明をしているという擁護意見がありましたが、日本語に言い直すくらいなら最初から使わない方がよいと思うのですけどね。

ちなみに、あたしの場合は昔っから、年末年始やゴールデンウイークは出かけない習慣なので、ステイホームなどと言われなくても家にいます。

社会復帰はできるのか?

書店回りをしなくなり、更には時短勤務、在宅ワークになって一週間、いや二週間でしょうか? だいぶ慣れました。いや、慣れすぎてしまっています(汗)。

あたしの勤務は、朝の6時に出社してお昼12時まで。まあ、6時は早すぎるので、社内的には7時から12時までの5時間勤務となっています。時短勤務なので、各自出社時間をずらしながら5時間勤務をしていますので、昼ごろ来て夕方までという者もいます。あたしの場合は超早番といったところでしょうか?

で、12時で退社ということは、学生時代の土曜日みたいな感じです。早起きは辛くはないので、それほど苦にもならず、駅までのバスがまだ走っていない時間なので30分弱のウォーキングも運動不足の解消に少しは貢献しているのではないかと思い込もうとしています(笑)。

在宅ワークの方は、今のところ月火金が出勤日で、水木が在宅です。週休四日のような生活です。いや、もちろん自宅でメールチェックしたり、やれるべき作業はやっていますが、どうしても気が緩みがちではあります。

こんな生活がどのくらい続くのでしょうか? 一か月や二か月続いたら、もう前の生活には戻れそうにありません。きちんと月曜から金曜まで、毎日7時間働いて、午後からは重いカバンを持って書店回りに行ってなんて、果たして体が対応できるのでしょうか? そんな不安がフツフツとわき起こってきています。

新訳? 改訳?

光文社の古典新訳文庫から『すべては消えゆく』が刊行されました。

あれっ、どこかで見覚えのあるタイトルですね。そうです、もともとはUブックスに『すべては消えゆく』が入ってたのを、海外文学ファンならご存じのことと思います。しかし、同書は品切れになって久しいです。

そこへ持ってきての復活ですから喜んでいる方も多いのではないでしょうか? しかし、古典新訳文庫ですからそのまま出したとしたら「新訳」の名折れのはず。訳者は同じ中条省平さんですし。

ということで現物を見てみましたら

本書は一九九六年六月に白水社から刊行された『すべては消えゆく』を大幅に加筆・修正したものに、別の二篇を新たに訳して加えたものです。

という注記がありました。つまりは改訳ということになりますね。ちなみに「別の二篇」とは同書収録の「クラッシュフー」「催眠術師」の二篇で、これがタイトルに「マンディアルグ最後の傑作集」と名付けた所以でしょう。

ちなみにマンディアルグ作品で、あたしの勤務先でまだ在庫のあるものは『城の中のイギリス人』と『オートバイ』のみになります。

以前は『狼の太陽』とか、『薔薇の葬儀』『黒い美術館』『燠火』といった作品もUブックスにあったんですけどね……

来年は没後30年、復刊できないものでしょうか?