新宿で#MeTooフェアをやっていました

紀伊國屋書店新宿本店、3階でこんなフェアをやっていました。

《私たちの#MeToo》フェアです。

河出書房新社のフェアのようで、テーマ関連書籍が並べられています。#MeTooというハッシュタグ、ハリウッドあたりから広がった動きでしたよね。いわゆるフェミニズムの文脈で捉えてよいのでしょうか? あたしのような旧世代の人間には少しわかりにくいところがあるのも事実で、だからこそ、こういうフェアが参考になるわけです。

フェアでは右のような冊子(パンフレット?)も置いてありました。選書リストになっています。

新宿紀伊國屋の3階ですから、このフェアは人文書コーナーの企画になります。人文の棚であればこそのフェアであり、選書だと思いますが、このところ小説の世界でも、韓国のフェミニズム小説がホットです。

代表格は筑摩書房の『82年生まれ、キム・ジヨン』で、いまや大ベストセラーになっています。目を転じてみると、このところの韓国小説はフェミニズムが一つのトレンドなのか、というくらい翻訳が続いていますが、日本の小説や欧米の小説でもフェミニズム、性暴力、女性差別を扱った作品はたくさんあります。

文芸書コーナーでも《#MeToo》フェアはできるでしょうし、既にそういうフェアをやっている、やったという書店も多いようです。気になるのは、どれだけ男性のお客さんがそのフェアに関心を持ち、本を手に取り、購入したかですけど……

夜明け前

昨日の天野健太郎さんを偲ぶ会、思い出したことがあったので、追記します。

まずは赤松さんが天野さんに話したという、日本における「重版した台湾文学」について。

売れない、売れないと言われる海外文学、中でもアジア文学はとりわけ売れないジャンルだと言われています。そんな中、少ないながらも台湾文学も邦訳が以前から出版されてきました。ただし、売れ行きはと言いますと……

数少ないと言いますか、赤松さん調べで、これまで日本で出版された台湾文学で重版されたものは以下の5点なんだそうです。『さよなら・再見』(黄春明著、田中宏・福田桂二訳、めこん、1979)、『夫殺し』(李昂著、藤井省三訳、JICC出版局、1993)、『台湾海峡一九四九』(龍應台著、天野健太郎訳、白水社、2012)、『歩道橋の魔術師』(呉明益著、天野健太郎訳、白水社、2015)、『あの頃、君を追いかけた』(九把刀著、阿井幸作・泉京鹿訳、講談社、2018)です。なんと、5分の2、4割が天野さんの翻訳です。

天野さんの翻訳だと売れる、という方程式がある程度は成り立つと思いますが、その理由として登壇された方が口々に語っていたのは、翻訳が素晴らしいということです。もちろん、台湾文学の優秀な目利きとして、そもそもよい作品を選んで紹介しているという前提もありますが、やはり日本の読者に受け入れられるには訳文が日本語として一定のレベルに達していないと難しいわけで、その点でも天野さんは優れた翻訳家であった、ということです。

また、確か齋藤真理子さんだったと思いますが、英米に限らず翻訳家というのは、日本の場合、ほとんどの人が大学の教員という肩書きを持ち、そういう人が研究活動の一方、翻訳を手がけている例が多く、翻訳だけでやっている人は非常に少ない、自分もそうだけど、天野さんも同じような立場で、同志だと思っていた、と話されました。確かに、上で「海外文学は売れない」と書いたわけですから、海外文学の翻訳家としてだけで食っていくのは至難だと思います。それでも翻訳を続けているのは、その作業が楽しいからであり、日本の人に少しでもその国を知ってもらいたい、こんなに面白い作品を読んでもらいたいという情熱があればこそです。

そういう現状もあってか、このところ韓国文学が日本で盛り上がりつつあります。ヒット作も出て来ています。天野さんは、韓国文学は売れるようになってけれど台湾文学はまだまだ、とおっしゃっていたようですが、それだからこそもっともっと翻訳して紹介した作品があったのではないでしょうか。それを思うと天野さんの早すぎる死は残念でありません。

そして、そんな韓国も含めたアジア文学を俯瞰してだと思いますが、島田荘司さんが、日本でこれから売れるようになる、普通に読まれるようになる直前、ちょうど夜明け前なのだ、と話されました。天野さんも夜が明けるのを見たかっただろうなあと思いますが、夜空の少し明るくなってきた、白みはじめてきたのは感じていたのではないでしょうか。夜明け前に、その夜明けを準備して志半ばにして斃れるなんて、まるで坂本龍馬ですね。

泉さん、齋藤さん、そして天野さんのお三方でアジア文学について縦横に語り合うトークイベントをやりたいと話されていたそうです。実現しなかったのが本当に残念です。

偲びました

昨日は、午後から虎ノ門の台湾文化センターで天野健太郎さんを偲ぶ会が行なわれましたので行って来ました。

写真のように会場は満席で、立ち見の方もチラホラ。急遽、空いているスペースに椅子を並べて座席を増やしていました。そもそも先週初めには、満員御礼と言うのでしょうか、受け付けは終了していました。これだけの人が集まるとは、正直驚きでした。

舞台の脇には左の写真のように天野さんの写真、それと天野さんの著訳書が並べられました。乃南アサさんからの素敵なお花も置かれていました。

並んでいる本を眺めていると、短期間に精力的に活動されたことがわかりますし、文学だけでなく、天野さんの興味、関心の広さがうかがわれました。

式次第としては、まず大妻女子大学の赤松先生による「台湾文学と天野健太郎」というテーマでの講演。

日本における台湾文学や台湾紹介の歴史と、その流れの中における天野さんの位置、役割を紹介してくれました。中国文学とか、東アジア文学といった言葉でひとまとめにされてしまいがちな台湾文学を、その中から一個の独立したものに高めた天野さんの功績がよくわかるお話でした。

そんな赤松先生がまとめた天野さんの立ち位置が左の写真です。スクリーンに映写されたものを撮ったのでやや不鮮明ですが、会場に集う誰もが納得の業績だと思います。

天野さんは台湾文学だけでなく、台湾そのものをトータルに日本に紹介した、日本人に知ってもらいたいと考えていたのですね。その点はあたしも少ないながら参加したイベントや打ち上げなどで天野さんと話した時に感じました。台湾に関する総合プロデューサー、やや胡散臭い印象を与えるのを承知で言えば、プロデューサーと言うよりもプロモーターという言葉の方がしっくりくるほど精力的に活動されていたと思います。

式次第に戻りますと、台湾文化センターでの天野さんのカルチャーミーティングという活動を振り返り、その後は一青妙さんによる朗読。遺作となった『自転車泥棒』の冒頭部分を読んでくれました。

あたしも同作品は読んでいますが、確かに冒頭部分、なんとなくいつもの天野さんとは違うと言いますか、非常に印象的なシーンだったと感じました。その部分を耳で聞かせていただきました。

 

 

その後は、天野さんに縁のある4人の方が語る天野さんの思い出。泉京鹿さん、川本三郎さん、齋藤真理子さん、島田荘司さんが登壇されました。短い時間で、皆さんとても話し足りない、まだまだ天野さんとの思い出、エピソードはあるんだけれど、という感じでしたし、これ以上話したら話だけでなく涙も止まらなくなりそうな雰囲気でした。

そんな偲ぶ会の会場で配布されたのが右の写真、「天野健太郎 遺稿集」という小冊子です。小冊子というにはかなりのボリュームで56ページもありました。

昨日の会の発起人の一人、野嶋剛さんがまとめられたもので、天野さんのウェブサイトで連載されていたエッセイや雑誌などに発表された文章、齋藤真理子さんとの対談、『歩道橋の魔術師』『自転車泥棒』の著者・呉明益さんによる「天野健太郎さんのこと」、そして野嶋さんの追悼文、という構成です。

偲ぶ会には上掲の登壇者の他にも、台湾文化センターでの天野さんのイベントに参加されていた方を中心に大勢の方が集まっていましたが、天野さんの故郷からご両親やご家族の方も参加され、目に涙を浮かべる方もいらっしゃる中、とても温かな会でした。

テーマがはっきりしていると食いつきもよい!

ただいま、ブックファースト・チェーンの何店舗かで、YA(ヤングアダルト)出版会とのコラボフェアが開催中です。

フェアの名称は、ズバリ、「青春の本棚」です。フェア棚にチラシが置いてあったのでいただいてきました。

子供のころはお母さんに読んでもらった、という読書体験をお持ちの方も多いでしょうが、中学高校になると部活や塾などが忙しく、読書をする時間が取れないという声をよく聞きます。それでも、少しでも本に親しんでもらいたい、ということでブックファーストとの共同フェアが決まったそうです。

チェーンでの取り組みなので、あっちの店、こっちの店で同フェアを見かけることになりますからより効果的で、出版社にとってもありがたいことです。

二つ折りのチラシの中面はフェアの書目リストになっていますが、裏面は左の通りです。「青春」という言葉、古びているようで、それでも店頭の看板やパネルにこの言葉を見つけると、ちょっと気になってしまいます。お陰様で、書店店頭での反応も上々のようです。


話題になってます!

写真は、年明けの紀伊國屋書店新宿本店、7階の語学書フロアです。

エレベーターを降りた、正面の棚で《話題になった学習参考書・語学書フェア2018》が開催中です。各社の学習参考書が並んでいますが、お気づきになりましたでしょうか?

そうです。中段のところに《ニューエクスプレスプラス》が並んでいます。点数が揃ってきましたので、こうして並べていただくと更に目立ちますし、手前味噌ですが、見た目もきれいですね。

このところは、ほぼ毎月二点ずつ刊行していますので、あっという間に30点、40点の大台に乗りそうです。ちなみに、明日配本予定なのは、「セルビア語・クロアチア語」と「ルーマニア語」です。

2月は「ビルマ語」「マレー語」という東南アジアの2言語を予定しています。

マイナー言語になればなるほど、他社ではほとんど刊行されてなくて、《ニューエクスプレスプラス》の独擅場になります。特にCD付というところもアドバンテージになっているようです。本格的に学ぶのではなくとも、文字を見て楽しむ、音を聞いて愉しむだけでもよいので、一冊チャレンジしてみてください。

井の頭で

今朝の朝日新聞です。

たぶん多摩版にしか載っていない記事ではないかと思われます……

吉村昭と津村節子の回顧展のような展覧会が行なわれるそうです、それも縁ある井の頭で。そう言えば、津村さんの『紅梅』にも吉祥寺などが舞台として出て来ましたよね。

そして、吉村昭と言えばご紹介したいのがこちら、『評伝 吉村昭』です。

展覧会を機に、両氏の作品を手にするのもよいでしょうが、二人に関する展覧会なら、むしろ自伝・評伝のようなものがよりふさわしいのではないかと思います。

ポスト・ヒューマニティーズ

新宿の紀伊國屋書店、3階の人文書コーナーでやっていた、青土社主催のフェアのようです。

「ポスト・ヒューマニティーズ」って何だろう?

と思って、置いてあった書目リストを眺めていましたら、つまりはごくごく最近の哲学・思想の潮流のようです。

あたしなどが学生の頃は、哲学史というのはせいぜいのところサルトルやハイデガーくらいまでで終わっていて、同時代的なものはほとんど習ってきませんでした、一般教養としては。

社会人になって以降は、そちらの方面にはとんと疎いのですが、それでも構造主義とか、ポスト構造主義くらいの言葉が耳にしています。今回のフェアは、更にそれ以降に焦点を当てたもののようです。

こんな風に学問もアップデートされていくのですね。まるで知らない世界ですが、非常に興味深いです。

フランスの20年?

先のダイアリーで「坐忘を思い出す」と書きましたが、「坐忘というのは忘れることだから、思い出していけないのではなかったか」と、今さらながら思っています。

さて、近々、岩波新書から『フランス現代史』という新刊が出るそうです。岩波新書では、かつて同名の本が出ていたはずですが、著者を変え新しいものが刊行されるようです。同書は

1944年の解放から、「栄光の30年」、五月危機、石油危機、「ミッテランの実験」の挫折、新自由主義、そしてマクロン政権成立──フランスの戦後を通観すると、そこには「分裂と統合の弁証法」というダイナミックなメカニズムがみえてくる。欧州統合の動きにも着目しながら現代フランスの歩みをとらえる通史。

というのが内容紹介です。

フランスの現代史と言えば、昨年、ちくま新書から『フランス現代史 隠された記憶』というのが出ていますが、こちらは第一次世界大戦から残る戦争の記憶と言いますか、フランスの暗部を描いたもので、通史的なものではありませんでした。

 

今回の岩波新書は、いわゆる通史のようですから、基本的な知識を得るにはちょうどよいのではないかと期待しています。通史的なフランス現代史と言えば、中公新書で『フランス現代史』が出ていました。1998年刊行の書籍です。

パリ解放とドゴールの凱旋によって出発したフランスの戦後には疲弊した経済の立て直し、植民地解放運動への対処等課題が山積していた。とりわけアルジェリア紛争は国内分裂を招きかねない危機であった。これを乗り切ったドゴールの指導力も、五八年五月の学生反乱を契機とする変革の波には抗し切れなかった。高度産業社会は伝統的価値観も転換させたのである。英雄の時代からコアビタシオン(保革共存)へ向かうフランスの試行の足跡。

という内容のようです。ちょうど20年後の今年、岩波新書版は中公新書版に対し、どういう内容の追加があるのでしょうか? フランスのこの20年には何があったでしょう?

サッカーW杯におけるジダンの頭突き事件に端を発する移民問題、シャルリエブド事件やパリ同時テロ事件など、解決が難しい問題が山積のような気がします。

 

あたしの勤務先も『シャルリ・エブド事件を考える』『パリ同時テロ事件を考える』なんて本を出していますので、《フランス現代史を考える》なんてフェアが出来るかも知れませんね。

「雑」の思想と際、壁

今宵は、三省堂書店神保町本店で開催中の人文会フェアに伴うイベント、正式には「第5回 年末年始は本の街 神保町で人文書」フェア公式イベント、というのがありまして、聴きに行ってきました。演者は、高橋源一郎さんと辻信一さん。

いやー、予想どおり、知的で愉しい一時間でした。あっという間に時が過ぎました。

イベント自体はお二人の共著『「雑」の思想 世界の複雑さを愛するために』刊行記念ということでしたが、雑という視点、とても興味深かったです。

イベントの感想はひとまずおき、キーとなる、対談の中で挙がった名前を自分自身の備忘的のために記しておきます。

狩野亨吉、カール・ポランニー、南方熊楠、玉野井芳郎

イベント、あり?

朝日新聞の夕刊に載っていました。

岩松了さんのトークショーだそうです。

岩松さんと言えば『薄い桃色のかたまり/少女ミウ』で第21回鶴屋南北戯曲賞を受賞されております。

記事中にもあるウェブサイトはこちらです。

サイトにあるイベントの紹介は

現在の日本の演劇シーンを決定的に方向づけた「静かな演劇」。そのパイオニアであり、30年以上も先頭を走り続けながら、まことしやかな解説や体系化から、しなやかに身をかわしてきた岩松了。言葉を重ねるほど謎が深まり、謎が官能を濃くする唯一無二の劇世界を、本人と、岩松戯曲を体現してきた風間杜夫、坂井真紀とともに、紐解いていく90分間。

です。