やはり雑貨か?

書籍が売れないと言われて久しいです。

が、書籍自体は『火花』のお陰もあって売り上げはなんとか、深刻なのは雑誌のようです。

で、このところの流行はセレクト型の書店。雑貨を置いてみたり、カフェを併設したり、本の並べ方もこれまでのようなジャンル別というよりは、ジャンルはジャンルなのですが、これまでのようなジャンル分けではなく、より読者目線と言いますか、店主のこだわり、興味の赴くままの並べ方が多く見られます。

こういった書店もアリだとは思いますが、個人的には店の大きさは問わず、これまでのようなオーソドックスな書店がまずはあって、それにプラスしてのセレクト型書店だと思っています。日本中の書店が全部セレクト型になったら使いにくくてしょうがありません。セレクト型はその店のコンセプトに自分の興味が合わないと、全く使えない書店でしかありませんから。

さて、文句ばかり言ってないで、もしお前が書店をやってみたらどうするんだ、と自分なりに考えてみました。資金繰りだとか本の調達だとか、そういったことはわかりません。単純に本を並べて売る、というだけなのですが……

とりあえず、小さなコンビニ的なお店をイメージ。駅にあるキオスクみたいな感じ。お菓子や飲み物、文具なども並んでいて、別な一角に雑誌や文庫が並んでいるような小さなお店。こういうお店、雑誌はともかく、並んでいる文庫も岩波や中公、新潮、角川といったものではなく、どちらかという実用書系の出版社の文庫が多い印象があります。たとえば、この文庫の棚に並べるのをすべてUブックスにしてみたらどうだろうか、そんな夢想、というか妄想です。

もしかすると、最初のうちは、あるいはじわじわと、一部業界人には噂が広まって、業界内の媒体では取り上げられるかもしれない。業界人の個人ブログやツイッターなどではつぶやいてはくれそうです。首都圏や関西圏に行けば大型店も多く、Uブックスがしっかり揃っている書店も多いですが、そうでない地区では「Uブックスって何?」状態でしょうから、都会でも郊外の沿線駅前あたりなら珍しがってくれるかもしれません。

でも、売れるか?

難しいでしょうね。毎月、数冊売れる程度はあるかもしれないけど、それじゃ商売にならないのは素人にだってわかります。かといって、売れるもの、売れている物を並べたら、それはセレクトショップではなく、どこにでもある金太郎飴書店です。自分自身こだわりも何もあったものではありません。

となると、やはりこんな書店は続けられないのか?

鍵はお菓子やドリンクといった雑貨にあるのでしょうか? こちらがそれなりに売れてくれれば本が売れなくてもお店としてはなんとかやっていけるかもしれません。お菓子やドリンクなどの粗利がどれくらいかは知りませんが、本よりはよいでしょうし、本よりは売れるでしょう。そっちを売って売って売りまくって、なんとか書籍部門の赤字をペイする、それしかなさそうです。

ということは、結局、この数年やたらと出店しているカフェ併設の書店チェーンと同じことですね。曰く、本が売れなくてもカフェの儲けでやっていける、本で儲けようとは思っていない、ということ。

これでは本屋をやりたいのか、わかりません。好きな本を並べるには、好きかどうかに関係なく、お店を維持していけるような商材を置かざるを得ない、そんな結論に行き着いた夢想、否、妄想でした。

注目はプーチン?

日曜日恒例、朝日新聞の読書欄。『プーチンの実像』が取り上げられていました。

プーチンと言ってもウサビッチではありません(爆)。ロシアの大統領のプーチンです。

個人的に、新聞の読書欄で自社(厳密には別会社ですが、ほぼ自社と言って構わないのでは?)の本を取り上げるのはどうなのか、そういう思いがなくはないですが、それはさておきプーチンです。資源外交で発言力、影響力を強め、アメリカの凋落を尻目に、中国と組んで国際社会でもこのところ存在感を増しているロシア。

いや、それはもう過去の話で、今のロシアはかなりの綱渡り状態だという指摘も聞こえてきますが、いずれにせよ、多くの日本人にとってロシア・ソ連は昔からよくわからない不気味な国、近くて遠い国、一番の敵国というイメージが出来上がっているのではないでしょうか? だからこそ、改めてロシアを知る意味もあるし、そのロシアを率いるプーチンにスポットをあてる重要性がわかるというものです。

と思っていたら、タイミングよく、あまりにもよすぎて出来レースなのではないかと思われるくらいのタイミングですが、今宵のNHKスペシャルはプーチンの特集。やはりプーチンは今の国際情勢の鍵を握る重要人物なのでしょうね。

そんなプーチンやロシア情勢。あたしの勤務先でもいくつか本を出していまして、こんなのがあります。

  

プーチンと甦るロシア』『チェチェン 廃墟に生きる戦争孤児たち』『チェチェン』です。

 

また少し歴史を遡った、ロシア帝国時代を扱ったものとしては『エカチェリーナ大帝(上)』『エカチェリーナ大帝(下)』や『クリミア戦争(上)』『クリミア戦争(下)』なんていうのもございます。

コラボフェア、いろいろ

書店店頭で見かけたフェアの冊子あれこれ。

まずはこちら、昨年も見たなあ、という記憶がある「チチカカコ」フェア。

あれ? 「ちちかかこ」ですから5社のはずなのに冊子の表紙には6社の社名が! 今年は「ちちかかこ」の5社に平凡社が加わって6社になったそうです。

そのあたりの事情は冊子の最初に書いてありました。今年から「ちちかかこへ」になったそうですが、この「へ」は「he」と発音するのか、それとも「e」と発音するのか、どちらでしょう?

続いては、ジュンク堂書店池袋本店が継続的に行なっている「愛書家の楽園」フェア。今回のテーマは「食」ということですが、レシピ本ばかりが食の本ではないということで、食について考えるような本を集めたフェアになっています。

そのあたりのフェア趣旨も書いてありますし、もちろんレシピ本は一冊も選書されていなかったはずです。

このテーマなら、あたしの勤務先からもエントリーできそうな本があったのではないかな、と思いました(汗)。

それにしても、こういう風にテーマを決めて、出版社の垣根を越えたフェアって面白いですね。

東京には書店がない?

正月明け早々に霞ヶ関にある書原が閉店するそうです。書原と言えば阿佐ヶ谷にあるお店があまりにも有名ですが、全部で6店舗あり、それぞれのお店も阿佐ヶ谷店に負けず劣らず、個性的で「いかにも書原」という感じがとても好きでした。そんな書原の中でも都心に立地する霞ヶ関店が閉店とはたいへん残念です。

さて、あの界隈、小さな書店はあるのでしょうが、あるいは官公庁の庁舎内にも売店的な本屋はあるのでしょうけど、街の本屋がほとんど見当たりませんね。書原から少し歩いたところにある虎ノ門書房、日比谷公園近くのジュンク堂書店くらいでしょうか?

それだけあれば十分だろ、という意見もごもっともです。全国的には「本屋のない自治体」がたくさんあるわけですから、東京で書店が一つ二つ閉店しても他の書店がいくらだってあるじゃない、という意見は確かにその通りです。

でも、クルマ社会の地方と違って、確かに渋滞はしていますが、一般には電車と徒歩の社会である東京は、会社や自宅の最寄りに書店がないと、わざわざ歩いて遠くの書店まで行くのはかなりたいへんです。いや何キロも歩くわけではありませんが、気分の問題と言ってもよいでしょう。ただ時間に追われる東京人、短い昼休みに遠くの本屋まで歩いて行く時間はなかなか取れないのが実情です。

だったら会社が終わってから? それも案外気分的には遠いものです。オフィスと最寄り駅の間に本屋があるのであれば問題ないですが、わざわざ遠回りして本屋に立ち寄るというのは、どうしても手に入れたい本があるときでないと実行に移すことはありません。通勤経路上にあるからフラッと立ち寄るのであって、そうでなければ本屋までわざわざ行く人は限られます。

特に、なまじ路線がたくさんあり、ほとんどの人が定期券で通勤している実情を考えると、本屋のためだけに最寄り駅ではない駅へ行ったり、定期券区間外の駅を利用するというのは考えにくいものです。贅沢な話ですが、一ブロックに一つずつ書店がないと困るものなのです。

そういう点から考えますと、前にも書いたかもしれませんが、東京では銀座四丁目の交差点から新橋に書けて賀書店の空白地帯です。辛うじて四丁目交差点に教文館ブックファーストがありますが、それ以南には書店と言えるような本屋はないと言ってよいでしょう。かつてはちょっと離れていましたが旭屋書店があり、アイドルのサイン会やお渡し会で有名だった福家書店がありましたが、どちらもずいぶん前に閉店しています。新橋にも書原や文教堂があったのですが、それもやはりずいぶん前に閉店したっきりです。

このあたり、ご存じのようにたくさんのオフィスがあります。働いている人の人数も相当な数になるはずです。こういう言い方をしたら失礼かも知れませんが、昼間の人口だけで言えば、本屋がない地方自治体と変わらないのではないでしょうか? 銀座から新橋にかけての地域だけではありません。ターミナルに超大型書店が集中する東京ですが、山手線内を仔細にみてみると、このように書店の空白地区ってかなりあるものです。周辺にはたくさんの人が働いているわけですから、それなりの需要はあるはずですが、そういう人たちはどこで本を買っているのでしょうか? アマゾンでしょうか? それとも、もう本を買うのは諦めているのでしょうか?

東京って前からそうだったの? と言われれば、否と答えます。以前は小さいけれど、いわゆる街の書店がもっとあちこちにありました。もちろん、今でも数多くの書店が頑張っていますが、そういう書店がこの十年近い間に数多く消えていったのも事実です。「借りているのではなく、自前の土地と建物だからやってられる」というセリフもよく聞くように、東京は家賃が高く、とても書店が入居できるようなレベルではありません。特にオリンピックを見越して、また高度経済成長以来の建築物の老朽化から、どんどん新しいビルが出来ています。でも新しいから家賃はますます高くなるわけで、そうなると本屋はとても入れなくなる、という悪循環です。上に挙げた「自前だから」という書店も、自前だからこそ本屋を辞めて他に貸す、ビルを建て替えて別なテナントを入居させる、ということになって、書店がますます消えていく一因にもなっています。

ある書店の店長さんが話してくれました。「昔は、そこそこ高い本でも買ってくれるお客さんがいたんだけど、そういう人たちがみんな定年退職して、このあたりからいなくなっちゃって……」そういう世代に代わって、いま働いている若い世代はそこまで本を買わないようですね。あるいは本を買うときはネットか、新宿や丸の内の大型書店へ行くようで、小さな街の本屋には来なくなっているそうです。

うーん、あたしは東京生まれ東京育ちなので地方の実情までは理解できていませんが、これだけ人が住んでいる大都会・東京の書店ロスも深刻な問題なのではないかと思います。

ノンフィクションと世界史、そして甘辛人生相談

書店店頭でいただいたチラシ。ミシマ社のものです。新刊『辛口サイショーの人生案内』に佐藤ジュンコさんがイラストを描いているということから、既刊『佐藤ジュンコのひとり飯な日々』とのコラボフェア&チラシということのようです。佐藤ジュンコさんのゆるーいイラストが楽しいです。

とりあえず、佐藤ジュンコが選ぶ5冊がコメント入りで紹介されています。

続いては、ガラリと変わってノンフィクション。柏書房のチラシです。上のチラシが紹介する5冊はミシマ社の刊行物とは限らない、否、一冊もないセレクトですが、こちらは基本的に柏書房の書籍で構成されています。

しかし、これだけ点数を刊行していると自社だけでそれなりのフェアが組めてしまうものですね。ノンフィクションジャンルの出版目録を兼ねている感じがします。カラーで、上質な紙を使っています。

広げると、裏面はご覧のような世界史年表。そこに本を関連づけて配置しています。これをそのままパネルにしてフェアの看板に使っているお店も見ました。年表って、日本人は好きだから、これは目を惹くでしょうね。

語学読み物、復権?

このダイアリーでは過去に二回ほど対訳語学参考書について書いています。一つはフランス語の対訳参考書について、もう一つはロシア語の対訳参考書についてです。どちらも純然たる語学書と言える造りの本でしたが、最近また、こんな本を発見しました。

現代書館の『ボンヘッファーを読む』です。副題は「ドイツ語原典でたどる、ナチスに抵抗した神学者の軌跡」ですから、ドイツ語の対訳読み物のような感じです。

開いてみると、形こそ対訳ではありませんが、語学参考書の体裁にはなっています。それにしてもボンフェッファーとは……

ボンフェッファー、知っている方、どのくらいいるのでしょうか? ドイツ現代史やナチ、第三帝国などに関心のある方であれば知っている人の割合はかなり高いと思いますが、一般の方の中では知名度はそれほど高くないと思います。ですから書店で人文のドイツ史の棚であればボンフェッファーの名前に反応する人も多いでしょうが、語学書の棚ではどうなのか、多少の疑問はあります。

  

とはいえ、これまでのドイツ語対訳学参と言えば、あたしの勤務先から出ている『聞いて読むドイツの詩』や『聞いて読む初版グリム童話』といったあたりが主流で、『レクラム文庫をドイツ語で読む』などはかなり異色だと思っていました。それがとうとうボンフェッファーの読み物が出てしまうとは!

これって、仏露もそうでしたが、語学の読み物、対訳であるかないかを問わず、そういったものがやはり復活、復権しているということでしょうか。

灯台下暗し、的な……

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ナンシーさんのこと知ってます!~HMV&BOOKS、プレオープン

グランドオープンは19日だそうですが、本日、業界関係者向けのプレオープンということで、渋谷の「HMV&BOOKS」へ行って来ました。渋谷モディの5階から7階までの3フロアです。

はっきり言います。最初はHMVですから、CDショップが始めた書店と言うことで、若者向けの、いま流行りのセレクトショップになっているんだろうな、本は主役じゃないんだろうな、という気持ちでいました。が、その予想は思いっきり裏切られました。もちろん、よい意味で、です。

確かにセレクトショップと言ってしまえば、そういうカテゴリーに分類される書店なのかもしれません。でも、いわゆるセレクトショップが、「特に何か目的があるわけではなく、フラッと入って棚を眺めると新しい発見がある」というコンセプトで、特定の本を探したい客にとって実は不親切な作りになっているのと異なり、このお店は比較的オーソドックスな書棚のゾーニングになっています。(セレクトショップを非難したり否定しているわけではありませんので、念のため!)

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BOOK EXPO、反省しきり?

13日の金曜日。既に書いていますように、大阪のグランフロントで「BOOK EXPO 2015」が行なわれました。東京でやっている「書店大商談会」の関西版ということです。東京は今年で三年参加しまして、売り上げ(受注)という面ではまだまだですが、それでもふだんなかなか訪問できない書店との接点が持てるということで、目に見えない効果がきっと上がっているはず、と思っています。

となれば、東京以上に、決まった書店以外には顔を出せていない大阪ならもっと効果が上がるはず、ということで今年初参加となりました。BOXセットを中心に、下の写真のような感じで書店の方をお待ちしておりました。

全体の感じから言いますと、東京と異なり、児童書とコミックは部屋が完全に異なり、われわれがブースを出していた会場は一般(というのも、真面目に考えると定義が難しい?)の出版社が上のようなブースを出していました。並びは出版社名の五十音順ですが、そうなると「あ行」とか「わ行」で始まる出版社は毎年端の方になってしまうので、毎年一列ずつずれていくそうです。ただ、出入り口が左右の端に近いところにあるので、会場全体の中心部が一等地というわけでもないようですね。

で、見ていますと、来場された書店の方、お目当ては実用、趣味、資格といった出版社のようで、そういう出版社のブースが人気で、入れ替わり立ち替わり書店の方がやってきていました。書店の方も、そういうジャンル担当の方が多いのかな、そう感じました。そんな中、あたしの勤務先のブースは地味というか、違和感というか、浮いた感じがしていて……。いや、店番(ブース番)をしているあたしに、人を引きつける魅力が足りないから、ちょっと閑散とした感は否めませんでした(涙)。

準備などを含めると9時すぎから会場入りし、午後6時までの長丁場(?)なので、そんな他社のブースと自社のブースを見比べていて、いろいろ考えるところがありました。そんなことを反省も込めてつらつら書いてみます。 続きを読む

拙速には書かない!

BOOK EXPO、無事に終わりました。

新幹線の中で、ましてやタブレットで感想などを書くとすると、きっと愚痴っぽくなってしまうので、帰京後(帰宅後?)、しっかりデスクトップPCの前で、改めて書こうと思います。

そして、頭の中ではこの曲がずっと流れていた一日!