オチは言えない?

クレスト・ブックスの『文学会議』読了。

短編が2編、いや、中編でしょうか、とにかくそれほど長くは無い作品が二つ収録されています。一つが表題作の「文学会議」、もう一つが「試練」です。

はっきり言って、どちらの作品もベースは真面目な、ちゃんとしたストーリーのある作品のようなのですが、読後感は「なんじゃこりゃ?」という感じです。そして、その「なんじゃこら」具合が、それぞれに異なるのです。

「文学会議」は、作家というのは世を忍ぶ仮の姿であるマッドサイエンティストの主人公が動物のクローン製造技術を編み出します。その技術を使って征服を企むのですが、自分のクローンではとても世界を征服できないと考えた彼は、天才のクローンを作ろうとします。そこで目を付けたのが同じく作家のフエンテス。彼も参加する文学会議にみずから乗り込み、まんまとフエンテスの細胞の採取に成功するのですが、培養装置に入れて数日後、とんでもない自体が起こるのです。

ここから先は言えません、書けません。ただ、その間に主人公の恋のアバンチュールらしき描写が挟み込まれ、それが何とも言えないけだるい感じを醸しだしているのですが、そこを読む限り主人公はマッドと言うよりもかなり生真面目な紳士に感じられます。

二つのめの「試練」は、ぽっちゃり型の冴えない女の子が街を歩いていたら二人組のパンク少女に声をかけられます。いつの間にか彼女らの会話のペースに引き込まれ、通りで話し込み、さらにはファストフード店でも弾むような弾まないような会話に引きずり込まれ、しかし少女はいつの間にかパンク少女たちに魅了されていきます。

このあたりの会話は、日本でも見られそうな、いまどきの若者と真面目学生との会話、あるいは頭の硬い大人との会話のようでもあり楽しめます。レズ関係を強要されるのかと思いきや、最終盤、自体は思わぬ方向へ進みます。カバーやオビの内容紹介でスーパー襲撃と書いてあるので、彼女ら3人でスーパーを襲撃するのだろうと予想して読んでいたのですが、三人の会話で作品が終わろうかという感じになってきたところで急展開です。

いきなり少女は二人に連れて以下ラテスーパーの襲撃に加わることになってしまうのですが、その描写がすごい。とてもここには書けません。前半の「見かけはパンクだけで実はいい人」っぽい会話からは想像もできない展開です。

いやあ、すごい作品でした。

既読

宮木あや子さんの新刊『喉の奥なら傷ついてもばれない』を読み始めました。短編集です。

 

その最初の一編「天国の鬼」が、「あれ、この話、読んだことあるなあ」と感じました。「似たような作品あったっけ?」と思いながらも、「いや、これだ、これ。確かに読んだ、読んだ」という気分で読了。

そして出た結論は、「以前に読んだアンソロジーの中に収録されていた一編だ」というもの。そのアンソロジーというのは『果てる 性愛小説アンソロジー』です。宮木さん以外にも執筆者はいますが、ここにこの「天国の鬼」が収録されていました。しかし、二回読んでも楽しめる、あたしってよっぽど宮木さんの作品が好きなのでしょうね。

さて、「天国の鬼」以外の短編はどうなのでしょうか? それはこれからのお楽しみ!

知らない街の物語

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パリの猫

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