岩波文庫に中国文学はどれだけ残っているのかしら?

これで全5巻完結となる、講談社学術文庫の『水滸伝(五)』が刊行された後を引き継ぐように、こんどは岩波文庫から『文選 詩篇(一)』の刊行がスタートしました。

 

この両者、読者対象はかなり重なると思うので、これが両方同時に刊行されていたら、毎月毎月買う方としてはかなりの出費になったところですが、こうして時間差を付けてくれると非常にありがたいものです。もしや、講談社と岩波書店が何かしら相談をしていたのではないかと考えたくなるくらいです。もちろん、こういう相談であれば、今後も大いにやっていただきたいものです。

さて、その岩波文庫ですが、どのくらい中国文学作品を出しているのでしょう? 下の写真は、わが家の書架の一部です。主に岩波文庫を置いているコーナーです。

右の方に見える『杜詩』(全8冊)は古書店で購入したので、とっくに品切れでしょう。その隣に見える『杜甫詩選』が現役だと思います(『杜甫詩注』は岩波文庫ではないので除外)。『子夜』(上・下)などの現代文学を挟んで『唐詩選』(全3冊)が見えますが、これは装幀を変えていまも現役ですね。『楚辞』は2冊並んでいますが、現在の岩波文庫の装幀(右側)も現在は品切れになっているのでしょうか?

他の棚に目を移しますと、上の写真のような感じ。『笑府』(上・下)や『唐宋伝奇集』(上・下)などは現在も新刊で手に入るのでしょうか。『玉台新詠集』(全3冊)も怪しいところですが、岩波書店のサイトには「在庫僅少」と書いてあります。

左の方、李白から陶淵明あたりまではほとんど品切れなのではないかという気がしますが、どうなんですかね? このあたりは中国文学でも代表的な名前ですから切らさない欲しいところです。

で、最後の写真も二枚目の写真の並びです。『遊仙窟』は品切れみたいですが、『李商隠詩選』はまだ在庫があるようですね。それにしても横光利一の『上海』が2冊あるのは、ダブって買ってしまったのだと思いますが、厚みがずいぶんと違うのは使っている用紙が異なるからでしょうか?

2018年1月22日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

いままで岩波文庫になかったのが不思議?

岩波書店から岩波文庫版『文選 詩篇(一)』が刊行になりました。全6巻予定の第1巻のようです。今後の刊行が楽しみなのと、「詩篇」とあるからには、詩以外の部分もいずれはと期待してしまいます。

で、わが家の書架を漁ってみましたら、上の写真のような本が出てきました。『李善注文選』です。『文選』には『六臣註文選』と呼ばれる注釈書もありますが、あたしの持っていたのは李善注でした。まあ、文選と言えば李善注というのは斯界の常識ですから、まずはこれを持っていれば大丈夫なのかなと思って学生時代に買い求めたものです。

それにしても、ここまで何の断わりもなく『文選』と書いてきましたが、皆さんきちんと「もんぜん」と読めているのでしょうか? まさか「ぶんせん」と読んでいるとか、そんなことありませんよね?

実際に『文選』は見たことも読んだこともなくとも、『枕草子』に「書は文集、文選」という有名な一句がありますから、名前くらいは聞いたことのある人がほとんどではないかと思いますが、昨今の若い人だとどうなのでしょうか?

それにしても、これほど有名な『文選』がいままで岩波文庫に入っていなかったなんて不思議と言えば不思議な話です。まあ、岩波文庫に当然入っていてしかるべき中国古典は他にもたくさんありますが……(汗)

2018年1月20日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

こんどは小説を読んでみたい

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2018年1月2日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

三美団円

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2017年12月2日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

遂に新釈漢文大系が完結なんだそうですが……

あたしも学生時代にお世話になった明治書院の「新釈漢文大系」がようやく完結を迎えるそうです。全120巻ですか。出版社も、各巻を担当された編著者の方もたいへんな苦労だったと思います。

ところで、こういった中国古典の全集、かつてはそれなりに出版されていたんですよね。中国以外ではまず考えられないような企画だと思いますが、それだけ中国古典の素養がかつての日本人に影響していたということでしょう。

そんな中国古典の全集について、以前まとめてみたことがあります。このページの情報やリンクは、その後更新していないので、今となっては古かったり、リンクが切れているところもあるかと思いますが、ご寛恕ください。

で、そのページで取り上げている全集は以下の通りです。

国訳漢文大成
経史子部と文学部それぞれに正編と続編があり、主立った中国古典が収録されています。ただし訓読のみで現代語訳はありません。当時の人には読み下し文がすなわち現代語訳であったのでしょう。訓読の作法を知るには便利で、きれいな読み下し文です。語注もためになります。

漢文大系(冨山房)
諸子百家を中心に収録してあり、版本としての信頼性も高いシリーズです。近年、長澤規矩也先生の索引付が再版されましたが、原則として本文に送り仮名と返り点がついているだけで、別に訓読・現代語訳があるわけではありません。

新釈漢文大系(明治書院)
いつになったら完結するのかというくらい延々発行され続けているシリーズで、本文に読み下し文・現代語訳、および注釈が施されています。全100巻という大型のシリーズのため、多少マイナーなものも収録されていることがあります。

中国古典新書(明徳出版)
新釈漢文大系を上回る巻数を誇り、かなりマイナーな本も収録されていることがある。ただし廉価シリーズなので、ほとんどの書は抄訳であるので、むしろ巻頭の解説を参考に使うべきであろう。

全釈漢文大系(旺文社)
個人的には新釈漢文大系よりもこちらの方が好きである。訳文や注釈などもわかりやすい気がする。このシリーズの後半は『文選』が収められているので、経史子については種類は少なめである。

中国古典文学大系(平凡社)
全60巻で、小説や詩まで収録されている。文学関係では最も充実しているシリーズである。巻末に原文が載っているが、本文には現代語訳しか載っていないので、使う場合には自分でもう一度原典に当たってみる必要がある。

中国の古典(学習研究社)
原文は別冊で箱のすき間に挟み込んである。不確かな記憶では発行されたのが学部3年の頃だったので、ほとんど利用しなかった。収録している古典は上記の各大系と変わらない。

いま読み返すと、です・ます調とである調が混ざっていて整理されていない文章ですね。情けない……

この他に角川書店も「鑑賞中国の古典」という全集を、たぶん20巻前後くらい刊行していたような記憶があります。また徳間書店も「中国の思想」というシリーズを刊行していて、その後、徳間書店は「史記」「三国志」「十八史略」も同じようなスタイルで出していましたね。

で、上の紹介文を見てもおわかりのように、あたしは旺文社が好きでしたし、よく利用していました。明治書院は残念ながらその次でした。それに、旺文社よりも先に、「国訳漢文大成」や「冨山房漢文大系」に収録されている古典であれば、まずはそれで訓読をチェックするというのが最優先でした。

その他ですと、岩波文庫、中公文庫、講談社学術文庫、朝日文庫など、文庫に収録されている中国古典も適宜参照していました。たぶん『論語』なら10種類以上の翻訳を持っているのではないでしょうか? まあ、中国古典を学んでいる人は、みんなそんな感じでしょう。

さて、あたしは上記の全集の中では、「国訳漢文大成」の「経史子部」の正編、冨山房の「漢文大系」、平凡社の「中国古典文学大系」を全巻持っています。徳間書店の「中国の思想」以下の4シリーズもすべて持っています。

こういったシリーズ、全集にどんな古典が収録されているかは、こちらのページにまとめたことがあります、漏れがあると思いますし、最下欄の検索は使えませんが……(汗)

改めて見返して思いました。

これらの、昔作ったページ、もう一度整理して、きちんと再オープンしたいものですね。

2017年11月3日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

大日本雄辯会と中国

あえて大日本雄辯会なんて書いてしまいましたが、大手出版社・講談社のことです。大手総合出版社ですから、講談社と聞いてイメージする出版物は人それぞれだと思います。

あたしにとっては、最近は学術文庫と現代新書のイメージが強いですが、かつては中国ものも精力的に出していました。あたしの書架からそれらをご紹介いたします。

まずは上の写真の「中国の歴史」(全10巻)です。これは中国の通史としてはよく出来ています。当時の一線級の方々が分担執筆されていて、最新の学術成果なども盛り込まれています。

上の「中国の歴史」が多少の図版はあるにせよ、ほぼ文字ばかりの草書だったのに対し、この「図説・中国の歴史」はそのビジュアル版といったものでした。判型も大きく、豊富な図版がたくさん載っています。考古発掘成果なども可能なかぎり載せてくれています。

これらは日中国交回復に伴う友好、蜜月時代の成果でしょうか?

上掲二つの「中国の歴史」が既に品切れになって久しい講談社でしたが、21世紀になって新しい「中国の歴史」を刊行し始めました。それが上の写真のシリーズです。時代を反映してなのか、もう函入りではありません。

そして、現在刊行中なのが上の写真の「東アジアの近現代史」のシリーズです。中国だけでなく東アジアに対象を広げています。最近は大陸横断、文明横断的な手法が花盛りで、アジアも日本史、中国史、朝鮮史などとバラバラに研究しているだけではダメな時代になったのですね。そんな成果を取り入れたのがこのシリーズになります。

ところで講談社の中国ものと言えば、最初にも書いたように講談社学術文庫や現代新書にあるものを思い浮かべる方がほとんどだと思いますが、講談社文庫にも中国ものはあります。

パッと思いつくのは陳舜臣「中国の歴史」だと思いますが、かつては上の写真のように講談社文庫に中国古典の翻訳が入っていました。この三つ、現在は在庫切れですよね?

2017年11月2日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

不屈の人

台風が近づく中、会社まで出かけて行きました。

「わざわざ大雨の中、なんで?」と問われそうですが、それは陳光誠さんの講演会を聞きに行くためです。会場が駿河台の明治大学でしたから、いったん勤務先へ寄ったわけです。

陳光誠さんと聞いて、どれくらいの日本人がわかってくれるのでしょうか? 少し前から来日していて、各地で講演会を行なっています。その割に、朝日新聞など主要紙で記事になっているのを見ませんが、小さくても出ているのでしょうか。東京講演が今日までなかったからでしょうか?

で、その陳光誠さんですが、「盲目の人権活動家」として有名な方です。5年前、軟禁状態に置かれていた山東省の自宅から脱出し、支援者の助けを借りて北京のアメリカ大使館へ逃げ込み、悩んだ結果、アメリカへの亡命を決断した人、と言えば当時のニュースを思い出した方もいるのではないでしょうか?

いま「有名な方」と書きましたが、それは国際社会においての話であって、中国国内ではほとんど知られていないと思います。もちろん中国国内でも人権活動に従事している人や共産党に批判的な人なら当然知っている名前ですが、ノーベル平和賞を受賞した劉暁波の名前ですら、北京の街中で若者に聞いても知らない人がいると言われるくらいですから、陳光誠さんの中国国内における知名度も推して知るべきでしょう。

 

その陳光誠さんの脱出劇を中心に、中国政府の人権弾圧については、今日の講演会で陳光誠さんの対談相手を務めた城山英巳さんの『中国 消し去られた記録』に詳しいですし、今日、陳光誠さんが話されたご自身の半生については『不屈 盲目の人権活動家 陳光誠の闘い』により詳しく書かれています。

どちらも、あたしの勤務先の刊行物で、どちらも読んでいますが、あの脱出劇の主人公である陳光誠さんが目の前にいるというのが信じられません。その当時、北京にいて脱出劇を間近で取材していた城山さんも、ここ日本でこうして陳光誠さんの隣に座る日が来るなんて夢のようだと話されていました。『不屈』を読んだ人であれば、あの本の中の人がここにいるというだけで感動ものだと思います。

陳光誠さんのお話は、大まかな原稿は作ってあったようで、話しぶりは穏やかで非常にハキハキとしたものでしたが、共産党批判のくだりになると俄然声量が大きくなり、早口でまくし立てるようになるのが印象的でした。あたしなど、若干は共産党自身が自己改革、自浄作用を見せるのではないかという期待を抱いているところがあるのですが、その点、陳光誠さんの立場ははっきりしていて、共産党がなくならない限り中国に未来はない、というものでした。

多くの人が指摘するように、5年前アメリカへ亡命したのは正しかったのか、中国に残って影響力を保つべきだったのではないか、という意見もありましたが、陳光誠さんは、あの判断は正しかったと述べていました。確かにアメリカにいても監視の目、中国共産党の魔の手は近くに見え隠れしているようですが、それでも家族揃って平和に暮らしていられるのは、『不屈』を読めばどれだけかけがえのないことか理解できます。

また陳光誠さんは、当時よりもインターネットが発達しているので、国外にいても中国国内に影響を与えることはできると自信を持っているようでした。ただ、城山さんなどは習近平政権以降、つまり陳光誠さんが中国を離れて以降、ますます弾圧や圧迫が強まっている中国政府に対して、非常に悲観的な意見を持っているようです。

とにかく、いろいろ考えることはありますし、まだちょっと自分自身が興奮冷めやらぬところがあるので、このあたりで留めておきますが、今日のは講演会、恐らく200名以上集まっていたのではないでしょうか。日本人以外の方もいたようですし、陳光誠さんが盲目ということもあって、視覚障害をお持ちの方も数名会場にいたようでした。メディア席は20席くらいありましたが、ほぼ埋まっていましたので、明日以降、新聞などにも記事が載るのではないでしょうか?

講演会後、あたしの勤務先のスタッフが会場販売をしていたのですが、本は飛ぶように売れていました。そして陳光誠さんはご自身の著書に快くサインをしてくださいました。上の写真は、あたしがしていただいたサインです。目が不自由ですから片手を添えて、一画一画丁寧にペンを運んでいました。非常に朗らかに「謝謝」と声をかけてくれました。

2017年10月29日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー

簡体字と繁体字を入れ替えただけではダメなのです

下の写真は、研修旅行の帰路、新幹線の車内で撮ったものです。車内誌『トランヴェール』の表紙です。

母の故郷が新潟で、新潟特集の号だから撮ってみた、というのではありません(笑)。

あたしが気になったのは、一番下のところです。英語版簡体中国語版繁体中国語版、そして韓国語版のサイトがあるということが書かれています。このお知らせの文面が非常に気になりました。

英語併記の看板は以前から多かったですが、このところは中国語や韓国語も併記している看板があちこちで目にするようになりました。もちろんウェブサイトなども日英中韓各国語のページを用意しているところが増えました。

そんな多国語の案内ですが、中国語はご存じのように大陸で使っている簡略化した漢字の簡体字と、台湾や香港で使われている昔ながらの漢字・繁体字があり、その両方で表記している案内看板も多いです。しかし、そのほとんどは同じ文面を簡単字と繁体字とで表記しているものです。

たいていのものはそれで通じますから間違いではありませんが、すべてがそれで済むわけではありません。通じるけど、ネイティブから見たらなんかヘン、という表記が日本国内には溢れているのではないかと思われます。そんな中、この『トランヴェール』です。

簡体字版の案内としては

提供《Train Vert》中文(简体)的简易版

とあります。それに対して、繁体字版の案内は

《Train Vert》的簡易版可以中文(繁體)瀏覽

です。これは『トランヴェール』の編集部がそれなりに気を遣っている、各国版に真摯に向き合っている証拠なのだと思います。あたしの中国語力では、それぞれの表記の妥当性までは判断できませんが(汗)。

2017年10月21日 | カテゴリー : 罔殆庵博客 | 投稿者 : 染井吉野 ナンシー