左は寝しなに寝床で読んでいた『3億人の中国農民工 食いつめものブルース』、右は通勤電車の中や営業回りの移動中に読んでいた『世界に広がる日本の職人 アジアでうけるサービス』です。
前者は中国・上海の出稼ぎ労働者のルポで、上海人をはじめとした昨今の富裕層には見向きもされない、中国社会の最底辺に近いところで生きる人々の生き様を追ったルポです。
後者は、バンコクやシンガポール、台北などで働く日本人の職人(寿司職人、美容師、バーテンダー、日本語教師など)をレポートしたものです。
後者を読んでいると、そういった日本の職人技が商売として成り立つほど、現地には富裕層が増えてきているということがわかります。そういう人たちが多くなったからこそ、平均からすればかなり高い金額になる日本人職人のサービスがビジネスとして成り立っているわけです。
前者の舞台は中国大陸で、後者のそれはアジア各国と、やや異なります。しかし、中国大陸でも富裕層が増えていることはアジア各国と変わりなく、こういった日本人職人の活躍の余地は大いにあると思いますし、本書で取り上げていないだけで既に多くの職人が活躍していることでしょう。
その一方で、前者に見られるような庶民たち。いや、上海人や富裕層から見れば庶民にもカウントされていない人々。この懸隔、絶望すら起こさせないほどの差ではないでしょうか? もはや格差という言葉では表現しきれないほどです。前者の中で、出稼ぎ労働者たちは富裕層を羨んでいないと書かれています。そもそも彼ら自身が比較しようとか、その格差を乗り越えようと思ってなくて、乗り越えられるとも思っていないようです。
両書をたまたま一緒の時期に読んでいて、そんなことをあれこれ思いました。