昨日は午後から大学生協のセミナーでした。書籍部門担当者が集まって、生協で如何に書籍を売り伸ばすか、という勉強会です。書店でもチェーン店ではこういったジャンルごとの勉強をやっているという話も聞いたことがありますが、ここまで大規模なものはほとんど聞いたことがありません。
さて、最初は吉見俊哉さんの講演。同誌の著書『大学とは何か』『「文系学部廃止」の衝撃』を踏まえたお話でした。時間の関係で最後の方が駆け足になってしまったのは残念でしたが、興味深い内容でした。講演の柱だけまとめておきますと
1)「文系学部廃止」報道の虚実 2)大学の現在 3)大学の死 大学の再生 4)出版の爆発 出版の危機 5)「文系」は役に立つ 6)大学のゆくえ 本のゆくえ
という内容でした。
この講演の引き続き、各生協の事例報告。今回は教科書販売の取り組みがテーマで、山形大学生協と近畿大学生協の方がそれぞれの取り組みについて報告されました。それを受けてと言いますか、生協連の若手の方々のパネルディスカッションが続き、今日は分科会的に分かれて議論をされているのだと思います。
いくつかの報告を、聞きかじりのメモを元にまとめますと、大学のクォーター制に合わせ教科書も薄いもの、簡単なものが求められているとのこと。またそれに伴い、安い教科書の需要が高まっているようです。厳密にクォーター制になったら、生徒は年に4回も教科書を買わなければならなくなるわけですから、金銭的な負担もバカにならないですよね。先生もそのことは意識していて、たぶん出版社も考えないとならない点だと思います。ただし、このクォーター制は全国的に見るとまだまだ過渡期で流動的な要素も大きいので、もう少し様子を見ないとならない、というのも事実だと思います。
他には、教科書展示会なる催しを実施している生協がいくつかあることを知りました。不勉強で昨日初めて知ったのですが、つまりは生協店舗内なのか別に会場を借りるのかはわかりませんが、ともかく出版社から出ている教科書を集めて並べ、教員の教科書決定(=採用決定)の参考にしてもらおうということらしいです。
出版社から見ると、「個々の先生には献本として教科書の実物を送っているわけだから…」という意見もあると思います。実際にその展示会で採用を決める先生がどれくらいいるのか、まだまだ少数のようですし、ある大学生協では8月か9月に展示会を開催予定とのことですが、来週からの採用を予定している新刊教科書が夏の時点で出来上がっている出版社がどれほどあるでしょう?
ちょっと否定的な書き方になってしまいましたが、生協での教科書展示会が一般化し、そこで採用品を選ぶのが教員の側でも普通のルーチンとなってくるようであれば、出版社側もそれに間に合うように教科書を作るようになると思います。もちろん売れ行き良好なら既刊でも展示会に並べればよいと思いますし、これによって個々の先生への献本が減らせるのであれば、出版社にとってもありがたいとは思います。
また実際の教科書販売では、とにかく短期間に学生の購入が集中するわけなので、待たせない、迷わせない、すぐ買える、という3点が重要なようです。生協によっては教科書販売所を別途も受けているところもありますが、層で内政教も多数あります。教科書の種類は講義の種類だけありますし、学生の数だって千をもって数えるほどいます。それがわずか一週間か二週間で動くのですから、まさに生き馬の目を抜く状況でしょうね。
レジを増やしたり、生協用のプリペイドカードを導入したり、やれる限りの努力を傾けている様子がうかがえました。教科書販売が生協の売り上げのかなりの割合を占めるからとはいえ、こんな風に本を売ること、読者(学生)に届けることに必死になっている方々が大勢いることに出版社としては大きな勇気と希望をもらったような気がした半日でした。