タイトルの読み方。
と言いますか、そこにこめた意味を斟酌すると、「入荷2冊、売れ1冊、現在庫1冊」と読んでいただきたいのであります。
それが何か?
これが実にビミョーなのです。
大型店を除きますと、一般的な本屋さんに、あたしの勤務先の新刊が配本される数は1冊か2冊というところです。いや、その前に、たぶん書店の数で言ったら、全国の8割以上の本屋さんにはそもそも配本がないわけで、配本があるお店でも1冊というところが半分くらい、2冊というところが3割から4割くらい、残りのお店は5冊とかやや多めに配本される本屋になります。
で、1冊のお店は、入荷して売れたら、「へえー、こんな本でも売れるんだ」と思って追加注文をしてくれる場合もあれば、「もう、いいや」ということで売りっぱなしになってしまう場合もあります。こういう本屋には「追加いかがですか?」と言う場合もあれば、「あのお店なら一冊売れれば御の字」と判断する場合もあります。
そしてタイトルのような本屋です。
2冊入荷して1冊売れた、まだ書棚には1冊残っているわけです。2冊入荷するわけですから、1冊しか入荷しない本屋よりはよく売る店、本が売れる店なはずです。ですから比較的早い段階で1冊売れたのであれば、もうちょっと追加してさらなる拡販を狙って欲しいと思うのが出版社の気持ちです。
が、出版不況の折柄、できるだけ売れない在庫を抱えたくないという本屋の本音ちもわかります。さすがに2冊入荷してすぐに2冊売れるようであれば追加発注するでしょうけど、1冊だけ売れた場合、残りの1冊が売れるのにどのくらいの時間がかかるか見てしまうことが多いようです。その結果、こちらが「追加どうですか?」と持ちかけても、「まだ1冊あるからいいや」という返事になるわけです。
もちろん、出版社の営業としては「いや、1冊だけ棚に刺さったままでは目立たないから売れる機会が減ってしまいますよ」と、少し強気に推すのもアリだと思います。
が、上にも書いた出版不況は、そんな営業トークをやんわりと拒否してしまいます。
2冊入ってすぐに1冊売れたのだから、「これは売れる」と判断し、3冊くらい追加して面陳や平積みにすればさらに売り伸ばせる可能性があると思います。が、そういう冒険をなかなかしなくなっているのが業界全体の空気です。確かに、こっちだって、「じゃあ、追加して平積みしたらもっと売れますか?」と聞かれたら、「絶対」とは言えません。
ただ、経験的に売れる勢いとか、本の内容や値段から、「まだ売れるはず」ということは言えます。
2冊入荷して1冊売れ、残りの1冊を売るのに、そのままでは売れる可能性は低いと思いますが、あと2冊くらい追加すれば、その1冊が売れる可能性は高まると思います。
「2冊入荷して1冊売れ、残りが1冊」ですと、売上率は5割です。「2冊入荷して1冊売れ、さらに2冊追加してまた1冊売れた」とすると、こちらも売上率は5割です。
このとき出版社は「同じ5割でも前者は売れた実数が1冊だけど、後者は2冊」なので後者の方がよいと考えます。しかし、多くの書店員さんは「同じ5割でも、前者だと返品は1冊で済むけど、後者だと2冊になる」と考えがちなようです。また売れた本だから棚に1冊は残しておこうと思ったとしても、後者の場合はやはり1冊の返品が出てしまいます。
同じ現象を違う角度から見ることになるので、なかなか難しいところです。