真実の愛?

『ギリシア人男性、ギリシア人女性を求む』より

「あなたは恩寵を受けているのですよ」と老紳士は言った。「この恩寵には理由がふたつ考えられますが、どちらになるかは実はあなた次第なんですよ。ひとつは愛、もしもそれをあなたが信じるとするならば。あるいは悪、もしもあなたが愛を信じないとするならば。愛はいつでも出現可能な奇跡です。悪はいつもそこにある事実です。正義は悪をこらしめ、希望は悪をよいものにしようとし、愛は悪に目をつぶる。愛だけが恩寵をそのまま受け取ることを可能にするのです。それは最も困難なことです。それは私も知っています。世界は悲惨で無意味だ。このすべての無意味なものの背後に、このすべての悲惨なものの背後に意味があるのだ、という希望は、それでもなお愛する人だけを守ることができるのです」(P.199)

もう一つ。

あなたは真実を知ることなしに私を愛することはできなかったし、私たちを危うく破滅させかけた真実よりも強いのは愛だけなのですもの。あなたの盲目の愛は、ちゃんと目の見える愛のために壊されなければならなかったのよ。そういう愛だけが価値のあるものなのですもの。(P212)