原作小説と映画の違い

新宿のケイズシネマで「ブラインド・マッサージ」を見てきました。そして上映後の、訳者・飯塚容さんと、書評家・豊崎由美さんのトークイベントも。

トークイベントの模様を、手元のメモを元に少々紹介しますと……

まず飯塚さんはもともと畢飛宇の作品が好きだったそうで、いろいろ読んでいたものの、『ブラインド・マッサージ』を読んだとき、「これは、これまでの作品とは違う」と感じたそうです。特別な作品だという感想を持ちながら、大学院の演習で教材として学生と読み進めていたそうです。

また、ロウ・イエ監督のファンでもあり、「ふたりの人魚」が一番好きだったのが、本作を見てからはどちらも甲乙つけがたい作品だと思うようになったそうです。

ロウ・イエ監督の作品はバッドエンドのものが多いが、「ブラインド・マッサージ」はちょっと違っていて、ある種の清々しさを感じる作品だという感想だそうです。そんな映画と原作小説との違いですが、豊崎さんに言わせると、映画は盲人が生きていくことの大変さを主題にしている、どちらかというとそういう側面に比重が置かれている感じがするけれど、小説では恋とか性とか、もっと人間の普遍性を描いているとのこと。豊崎さんは小説を、科学者が書いたのではないかと思ったそうです。

また映画は登場人物の一人、小馬がほぼ主人公といってよいストーリー展開ですが、小説は群像劇で、個々の登場人物の過去や悩みとか、もっと奥深く描き出されているという違いがあります。

ならば、やはり小説の方がよいのかと言われると、映画は映画で小説のエッセンスをうまく取りだしていると思いますし、なにより小説では描かれていない結末が、あたし的にはグッと来ました。