骨の袋

本日は映画ではなくドラマです。たぶん、アメリカでテレビドラマとして放映されたものでしょう。スターチャンネルで放送されたスティーブン・キングの『骨の袋』です。

 

キングの作品は小説では読んだことはなく、いくつかをテレビドラマとか映画で見ただけです。その感想からすると、どうしてこんなに世界中で人気があるのか、ちょっと理解できない、えっ、こんなんでいいの、という作品ばかりだったという気がしないでもないです。確かに「シャイニング」は面白かったですし、狂気を感じてドキドキ、ワクワクしましたが、それ以外の作品は、時々スカパー!などでも放映されますが、やや期待外れな出来でした。

で、この「骨の袋」です。前後編で放送されました。最初は妻を交通事故とで突然失った人気小説家が、妻の浮気を疑い、妻がしばしば出かけて過ごしていた別荘を訪ねるという内容です。その別荘がある村の、忌まわしい秘密が主人公に絡みついてくるのですが、ここに怨霊というか幽霊というか、そういった超自然的なものを登場させる必要はあったのか、そんなものを出さなくても村全体で秘密を共有し、共犯関係になっているという流れでストーリーを組み立てても、十分にサスペンス・ドラマとしては成り立つような気がします。

ざっとあらすじを書いてしまいますと、その村のボスのような車椅子の老人をはじめとした5人は、かつて若い頃、村のフェスティバルに来た人気女性歌手をレイプし、その娘とともに殺してしまいます。娘を殺されるところを見てしまった歌手は、いまわのきわに少年ら5人に、自分の娘を殺すことになるという呪いをかけて絶命します。その5人が成長し鈍いが実際に起こります。娘が生まれなかった場合は、彼らの息子がその娘(レイプ事件を起こした少年たちからすると孫娘)を殺すようになります。

さて主人公はひょんなことから車椅子のボスの嫁と村で知り合います。この嫁は娘を殺そうとした夫(つまり車椅子のボスの息子)を射殺して裁判になっているのです。車椅子のボスからすれば孫娘はかわいいだろうに、その孫娘が死ねば呪いはすべて終わる、少年5人の血を引く女の子は一切いなくなることから、孫娘をなんとか殺そうとします。

そして主人公は、実は自分もレイプ事件を起こした5人の孫であることを知り、この村にしばしば出かけてきた亡き妻もそのことを知って、なんとか呪いを解こうとしていた事実を知るのです。つまり妻がこの村に出かけてきていたのは浮気のためではなかったわけです。

さて、やや荒唐無稽な話なのですが、幽霊云々の科学性はおくとして、いくつか気になる点を挙げますと、まずは主人公の態度です。妻の浮気を疑いつつ、村へ来て若い女性(ボスの息子の嫁)といい仲になりかかり鼻の下を伸ばしています。彼女はボスの命によって村人に殺されてしまうわけですが、そうでなければきっと主人公と結ばれていたでしょう。これでは主人公のために一生懸命だった亡き妻が浮かばれません。

次に、村全体を覆う呪いですが、これは言うまでもなくレイプされ殺された女性歌手によるものです。悪霊、怨霊と呼んでも構いませんが、でも考えてみるとこの女性歌手は自分もレイプされ、それを目撃してしまったがために口封じのために巻き添えになって殺された幼い娘を思えばこそ怨霊となり、少年とその一族に呪いをかけたのです。悪いのはどっち、と聞かれれば少年たちの方でしょう。呪われて仕方ないと思うのはあたしだけではないと思います。

そして、最後に村全体を覆う陰湿な空気です。実はキングの作品の一番の醍醐味は、こういう閉鎖空間、閉塞状況における人間の狂気ではないかと思います。その点に関してはまずまずの出来だったのではないかなという気もしますが、先にも書いたように怨霊とかが出てくるので、人間自身の持つ狂気を描き切れていない憾みが残ります。